【実録】30代、はじめての引っ越しをしよう!!②

~前回のあらすじ~

完全なる引っ越し童貞の筆者が、30代にして初の転居を目指す。さっそく不動産屋を探しに街へ繰り出すも、どこへ入ったらいいかわからず逃げ帰ってくる始末。

仕方なくネットで検索してみたら、100件以上の物件が出てきてきて情報の洪水に心が折れた。果たしてこの調子で本当に引っ越せるのか? 大丈夫なのか!?


ネットで物件を探してみよう

はい、というわけでね。気を取り直して物件を見ていこう。嘆いても始まらない。見ていくしかない。足を前に出さなくては進むことはできない。最初に検索した条件はこんな感じだ。

・A駅かB駅から15分以内
・家賃(管理費・共益費込み)X万円以下
・バストイレ別、エアコン付き、温水洗浄便座
・2階以上

すると、めちゃくちゃ出てくる。それを一つずつ見ていく。当たり前だけど、物件情報って死ぬほど文字が書いてある。自分が、文字を読み書きするタイプの仕事をしていて良かった……。文字がズラッとしていると眩暈がするタイプの人は苦しいだろうなと思う。

で、見ていると、自分が思いもしなかった条件が多々あったことに気づく。えっ、洗濯機が家の外にしか置けないとかあるの!? 洗濯機がトイレと同じ部屋? キッチンが室内にあるのもちょっとなあ。あ、それをワンルームっていうの? 俺が探してたのは1Kっていうの。そうなの。そうなんですか……。 

そんな感じで苦心しつつ、息も絶え絶えに候補を絞っていく。正直、比較する要素が多すぎて頭がぐちゃぐちゃになる。でもそんな中、悪くない物件を2つほどピックアップすることができた。

物件1は築6年で結構きれいだ。西向きだけど角部屋だし、設備も充実している。コンビニも近い。そして光ファイバーが無料!

物件2は新しくはないが、コンビニもあるし、間取りもいい感じだ。ネット環境は……書いてないな。でも南向きだ。これは良い。日当たり悪いと、洗濯とか以前にセロトニン不足で病みそうだしな。鬱は勘弁だ……。

よし。この2つを軸に考えよう。考えるという事は……問い合わせってのをしないといけないのか?

気が進まねえ……。

知らない人と関わるだけでも怖いのに、不動産業界ったら、鬼が出るか蛇が出るかわからない万魔殿でしょ!? そんなところに足を踏み込むの?

そもそも、この物件サイトってやつの仕組みもおかしい。載ってる物件の情報が「次回更新は更新日から15日以内」って、このインターネット社会で、電波の速度ですべてが動くこの時代に、そんなこと許されるか!? 絶対何か怪しい!!

そんなんだから「お問い合わせの物件、もう埋まっちゃってました~~」なんてコトが起きるんだろ? そうやって俺を騙そうとしてるんだろ? 俺は詳しいんだ。だから問い合わせとか、したくないんだけど……。

でも問い合わせないと、その間に他人に部屋を取られて、まさに「埋まっちゃってました~~」になってしまう。ウウーッ。それはいやだ。

仕方なく俺は腹を決めた。恐怖のあまり心の中で失禁しながら、目を見開き、震える指で「最新の空室状況を問い合わせる」のボタンを……押した……。


不動産屋を選ぼう

さて、こうして2つの物件について問い合わせた。取り扱いの業者は別々なので、2つの不動産屋に連絡がいったわけだ。すると、それぞれの業者で明確にリアクションが違ったので驚いた。

物件2の業者からは、即座にレスポンスがきた。マジで即座だ。秒だ。「電話で説明したいので希望の時間をください!」とある。一方で、物件1の業者からは「確認してまた連絡します」と、自動返信っぽい内容が、やや遅れて届いた。

これは、どちらが印象が良いか……どちらを信頼したくなるか……。自分はすぐにピンときた。

他の何が苦手でも、インターネットだけは得意な人間なのだ。そして我々インターネットの民は、基本的に何一つ誇れるものは持っていないが、長年かけて研ぎ澄ましてきた、とある力を持っている。そう、疑力(ぎりょく)だ。

嘘だらけのネットという地雷原で生き残るには、臆病になるしかない。そんな中で、人を信じる心を失う代わりに身に着けた……まあ、単に人間性のないクソという事なんですが。

その疑力が、脳内でささやくわけです。「即レスの業者、怖い……」と。

時刻はもう22時近く。まともな会社ならとっくに退勤してなきゃおかしい時間だ。営業時間も18時までと書いてある。なのに秒でレスがくる? ちょっとブラックなのではないか?

従業員がプライベートの時間を削ってガッついてくる業者、素直に怖い。この調子でグイグイ来られて、強引に契約させられてしまうのでは?

そうやって考え始めると、心の中で疑力がどんどん育ってくる。そもそもこの即レス業者の物件2、南向きで角部屋の好条件なのに敷金礼金ゼロ。同じ建物で3部屋も募集しており、空室が目立つ。マンション名も書いてない。地図もない。何か怪しい……?

まあ軽く調べた感じ、敷金礼金なしは必ずしも怪しいワケじゃないよって書いてあったけど、でもこわい。部屋探しなんてなあ、「全員が俺を騙そうとしている」って心構えでするもんだろうが……!

というわけで、ここでビクついたため、物件1のほうに絞って話を進めることにした。こちらの業者は、翌朝の営業時間に改めてメールがきた。ホワイトだ。「こちらの物件まだ空いてます。興味あれば連絡ください」と、全然ガッついてこない。そのほうが信頼できる……。

束縛してこない彼氏のほうが安心できるってことなのかな。束縛が強いと圧があるっていうか、DVとかしてきそうじゃない? なるほど、これが乙女心か。少しわかった気がするぞ……。

というわけで、次回はいよいよ不動産屋に電話して直接交渉していくぞ! 恐ろしい。今度こそ物理的に失禁するかもしれない。

ちなみに即レス業者のほうですが、一度問い合わせてしまったのをきっかけに、今でも毎日メールが届いています。ちょっと気のあるそぶりを見せたばっかりに、ストーカーと化してしまうなんて……。男って怖いですね。いや、まあ、怪しいと思ったのも全部主観なので、杞憂かもしれないんですが……。

でもやっぱりガッつかれるのは怖い!! わかってよ! 乙女心を!! 私男だけど!!!

(続く)

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