千円の牛乳
生活をうまく回そうとすればするほど現実的な思考は強くなっていく。いや強くならなければ生きてはいけないのだ。ハーゲンダッツをぽんぽんカゴに入れていてはあっという間に諭吉は旅立っていく。なくなっちゃったねーではぐんぐん背が伸びる子どもの制服さえ買えなくなってしまうのだ。明日からは12月。2023年を締めくくるそれなりに忙しく厳しい月である。
ねーママー、サンタさんに最新のiPhoneお願いしてよー。まじかよむりだぜむちゃいうなよ。
よつばとを読んでいてとーちゃんが一本千円くらいの牛乳を三本買ってくる場面があって思わずふふふと笑ってしまった。三本で二ーキュッパ。
たっけー!そんなん飲んだことないわ。
でもなんか嫌じゃない。男のひとってそういうとこあるよね。みんなじゃないけど。
こういうひとがいいよなぁ。
へんなとこでほどよくムチャクチャなひと。
ほどよくってのがなかなか難しいのだけれど。
なんでもない日に突然ドラゴンフルーツとか抱えて帰ってこられたら笑っちゃうだろうなぁ。
そんなひといないけど。
ドラゴンフルーツそんな好きじゃないけど。
1個500円のたこ焼きなんかどうだろう。
10個パック5000円。たか。
それよりでかすぎじゃない?お饅頭か?
かいじゅうのたこ焼きかっ!バシッ。
いかんついつい笑いを求めてしまう。
どんなひとが好きですかって言われた時に
だいたいみんな優しいひととか真面目なひととか
答えるんだけど、優しすぎても真面目すぎてもなんかアレだし結局のところ自分にとっての黄金比みたいなものを当てはめようとしてしまう。
全てが完璧だと疲れちゃうからどこかちょっとぬけてたり。言葉をどう扱うかという点では案外こだわっていたのかもしれないと今さらながら気づかされる。少年みたいだけど少年じゃないひと。
多くは求めないけれど独特な色気があればなお良し。バランスが必要ですね何事も。
先日ふらりと実家に寄って母と話をしていたら
出かけていた父がハーゲンダッツを抱えて帰ってきた。
うわー!ハーゲンダッツ!
ママが買ってくれないやつ!(しーっ)
またお父さんええやつ買ってきて。
いくらやったん?
知らん。うまそうやったから買ってきた。
値段なんか見とらん。
父はいつだってぶっきらぼうで気の利いた言葉もないけれど嫌になるような言葉を吐き出すこともない。頑固だけれど筋が通っていて損得で他人に対して態度を変えることもない。生き物や植物に優しい。約束は必ず守る。
結局すきなひとって自分の父親というフィルターを通して判断してしまうんだなぁ。
ねぇママ、そろそろけっこんしないの?
え、誰と?
すきなひととだよ。
けっこんってすきなひととするんでしょ?
不意打ちの質問に眩暈がした夜。
何から話せばいいのかわからないまま
冷蔵庫から牛乳を取り出してレンジで温める。
今夜はなんだか冷えるなぁ。
ココア飲もう。チリペッパーを少し入れて。
もう少ししたらほかほか布団の完成だ。
電気カーペットさまさまだ。
ねこちゃん抱っこして早めに寝よう。
千円の牛乳かぁ。
誰か買ってきてくれないかなぁ。
自分で買うか。