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透明なシート

何かを叫んでいるようですが
わたくしには聞こえませんし
ぱくぱくと口を魚のように
開いたり閉じたりしているさまは
どこか滑稽でさえあります

そこには透明なシートが一枚
破れそうで破れない
透明なシートが一枚
正直に言えば今はもう
目をやることさえないのだけれど
時折夜の雨が伝い
ひとつふたつと零れ行くさまを
気まぐれに眺めるぐらいです
ほらまた雨の足音がする

なぞればなぞるほど
悲しみは深く
見つめれば見つめるほど
世界は遠く
もうわたくしには関係のない
ことなのだけれど

何かを叫んでいるようですが
わたくしには聞こえませんし
それはまるで遠い昔の
映画でも観ているかのよう

そこには透明なシートが一枚
触れることなどできないけれど
優しい誰かが掛けてくれた
透明なシートが一枚






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