あの猫
一目散に逃げてった
たぶんもう戻ってこない
去り際に一度だけ振り返った
長い尻尾がゆらり揺れた
追いかけていたつもりもないが
一度駄目になってしまうと
何もかも全部駄目になる
今までだって何度でも
繰り返されてきたことだし
そういうもんだよなって今の自分を
納得させようと思えばできるのだけれど
色褪せたカラーコーン
カンナの赤が枯れてゆく
もうすぐ夏が終わるのだろう
あの猫もいつか
いなくなってしまうのか
嫌いになりたい
もう見たくない
なんて嘘
カンナの赤が蘇る
嫌になるほど
鮮明に
嫌いになれたら
何もかも
嫌いになれたら
楽なのに
閉じては開く
あの本も
捨ててしまえればきっと
楽なのに
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