心に刻む



祖母が亡くなった。

自身の祖父母の中で最も長生きし、
最も長く過ごし、
最もお世話になり、
最も大好きだった、
そんな祖母だった。

諸事情で、わたしは彼女の葬儀への参列を
控えることとなったのだけれど、
このままでは自分の中で
上手く消化できそうにないと思い、
今感じていることや思い出したことを
言葉にしてみることにした。

そもそもうちの家族は海外転勤などがあり、
親戚と深い付き合いはあまりなかった。
そんな中でも長期休みなどで
1番お世話になったのは彼女だ。

いつも周りの人のことばかり考えている彼女。
本当に優しくて、大好きだった。

家に泊まったとき、いつも寝る前に
布団の横に来てくれた。
昔の話をして欲しいと、
いつもせがんでいたことを覚えている。

孫たちが来る時には
いつもアイスやお菓子を
たくさん用意してくれていて。

ご飯を食べたあとは必ず
デザートに果物も出してくれて。

近所の自販機で売っている
乳酸飲料が好きな私たちに
お小遣いをくれて
喜んで買いに行ったりもした。

本が好きな私のために
図書館によく連れていってくれた。

朝起きたら仏壇に向かって
念仏を唱えるのをみて
私も真似して早起きして
念仏を覚えたりもした。

おばあちゃんの家から帰る時は
姿が見えなくなるまで
両手を大きく振って見送ってくれた。

遠くに住む私たちは
あまり彼女に会うことが出来なかった。

敬老の日に電話すると
早く会いたいねえって、いつも言ってくれた。

おばあちゃんはいつも本当に優しくて
とても温かかった。

幼い頃の記憶ばかりなのに、
それでもこんなに思い出せるのは
なんだか不思議だな。

私は、彼女のような人になりたいと、
きっとそう思っている。

もっと会いに行けばよかったと、
そう思ってももう遅い。
遅くなってしまうと、知っていた。

事情があって仕方なかったとはいえ
やはり、少し、悔やまれる。

おばあちゃん、幸せだったかな。
いい人生だったなって
そう思えていたらいいなあ。


人は生きて、いつかは死ぬ。
それは致し方ないことで、自然の摂理だ。
分かっているけれど、悲しいね。

いなくなってから分かる大切さ。
そんなに虚しいことは無いと、
そう思っていたけれど、
それでも良かったことがあるとすれば。

私にとって、おばあちゃんの存在は
本当に大切だったのだと
しっかりと噛み締められたこと。
私の中に刻み込めたこと。

これからの人生で、きっとまた思い出す。
私の中で、彼女は生き続けるんだって、
そんなふうに思える。

それが良いことなのかとか、
そんなことはどうでもよくて。

わたしの中ではそうなんだって、
ただそれだけ。

いろんなものを抱きしめながら、
生きていこうね。