ナノ "粒子" からナノ "クラスター" へ


はじめに

ナノレベルの大きさの微粒子のことを”ナノ粒子”と呼ぶ。
ナノ=0.000000001ミリのことなので、1つの粒子を観察しようとしても、とうてい肉眼で見えるものではない。電子顕微鏡などのツールを使わないと1つ1つの粒子を観察するのは難しい。残念ながら、夏休みの自由研究として、自宅で観察するような気軽に扱えるものではない
かといって、日常生活と無縁かというとそうではない。目に見えていないだけで"ナノ粒子"は身近に存在している。

例えば、ウイルスもある種のナノ粒子である。ウイルスの場合、(後述するような金属ナノ粒子のように)単一の成分で構成されているわけではないが、タンパク質や脂質成分が"殻"のような形を成して1つのナノ粒子として存在している。最近流行りのコロナウイルス(COVID)もこの例外ではなくナノ粒子である。
ウイルスを先に例に出してしまったので、ナノ粒子に対してネガティブなイメージを持たれるかもしれないが、そんなことはない。

近年、ナノ粒子はよく研究されており、その応用方法についても様々期待されており実用化されているものもある。
特に、金属のナノ粒子が最もホットなトピックだろう。
この"金属"として、金や銀、銅などの単一成分、もしくは合金などに対しても研究がされている。この中でも、金のナノ粒子”金ナノ粒子”は特に化学的安定性が高く、合成方法も確立されているためためよく利用される。
※この合成方法については、非常に面白いので別記事で取上げ予定

昔からありナノ粒子が利用されるものとしては、ステンドグラスが最も有名だろう。ガラスの中に金ナノ粒子を入れることで綺麗な赤色を表現している。ちなみに、金ナノ粒子とガラスが反応して赤くなっているわけではなく、単純に金ナノ粒子が赤色なのである。ステンドグラスではナノ粒子を均一にガラスに混ぜることで、まるで色素のように扱っている。

「金なのに、金色じゃなくて赤色じゃないか!」という、つっこみがあるのはもちろん想定済み。金ナノ粒子の光学特性は、金箔や小判などのようにナノサイズに比べて大きなものと異なる。もっと言えば、ナノレベルのサイズでも、50nmなのか500nmなのかによっても色が異なり、形状が球状なのか楕円状なのかによっても色が異なる。


ほかの応用先としては、イムノクロマトによる検査への応用が最も親しみがあるだろう。”イムノクロマト”は抗原抗体反応を利用した検査の方法であり、俗にいう”抗原検査”で「赤いラインが2本現れたら陽性、1本の場合は陰性」でお馴染みの方法である。

この赤いラインが実は金ナノ粒子であることを知っている人は少ない。
ナノ粒子とはいえ金の粒子なので、かき集めて溶かして固めれば金の小判が作れちゃう。やってみたい方はぜひ。(おすすめはしません)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?