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深淵を覗く。「Daisy's Destruction」

※非常に残酷でグロテスクな内容を含むため、閲覧には注意してください。
 
 人間が妄想することのおおよそのことはすでに誰かが実行している。この男は実行側で踏み越えた人間だ。

 最も嫌悪すべきこの犯罪者はピーター・ゲラルド・スカリー(Peter Gerard Scully:1963年1月13日生まれ:59歳)という。

ピーター・スカリー

 彼はオーストラリアで出生し、メルボルン郊外で結婚し、2人の子供を設けていた。その後、メルボルンを離れる前に20人の投資家から268万ドルを騙し取り、フィリピン人の女性を郊外のセックスパーティにエスコートするサービスを始める。しかし、2009年にはオーストラリア証券投資委員会による調査の対象となり2011年にはフィリピンのミンダナオ島へ逃亡する。
 彼は他にも詐欺や財産に関する罪状で117件にも及ぶ犯罪があった。彼は現在フィリピンの刑務所に収監されている。
 なぜフィリピンの刑務所に収監されているかというと彼はミンダナオ島スリガオ市で貧困の家を標的として、両親に女児に対する教育を施すと約束して島から誘拐し、性的虐待を加え、それを商品としていたのだ。

フィリピン ミンダナオ島 スリガオ市

 スカリーは現地でビジネスと性欲の協力者を探し、フィリピン人ガールフレンドのカーメ・アン・アルバレス(Carme Ann Alvarez)とリージル・マルガーリョ(Liezyl Margallo castana:19歳)、知人のアレクサンダー・レオとマリア・ドロテーア・チア(Maria Drothea Chi y Chia)など複数の人間を協力させている。
 カーメ・アンは14歳の時に売春婦としてスカリーのガールフレンドとなった。彼女はスカリーがレイプして拷問し、犬の首輪と鎖をつけさせた少女たちに食べ物と住居を提供していた。
 アレクサンダーとマリアも共謀罪で9年の懲役刑を言い渡されている。

カーメ・アン・アルバレス
リージル・マルガーリョ
マリア・ドロテーア・チア

 カーメ・アンは「エンジェル」、リージルは「ラブリー」とそれぞれ新しい名前をつけられビデオに出演し、実際に性的虐待を行っていた。

 2011年から2014年にかけてカガヤン・デ・オロ(フィリピンの都市)の1歳から13歳までの少なくとも8人の子供がその犠牲になったことが判明している。
 スカリーが何をしていたかというと、騙して連れ出した子供達に性的虐待を加えた映像をダークウェブ上でサブスクリプションしてペドフィリアに販売していた。

 ダークウェブ上のサイト名は「NLF(No Limits Fun)」、有料で顧客を募り、チャイルドポルノを4年間に渡ってライブストリーミングしていた。第1作目は5歳の少女だと言われている。

 いくつかの作品の中でも最も高い値がついたのは「Daisy's Destruction(デイジーの破壊)」で、最大で1万ドル(120万円)で販売されていた。
 少なくともこのビデオはドイツ、米国、ブラジルの誰かに販売されたことがわかっている。
 これまでに他8人の少女も拷問、虐待されて商品となっていた事が分かったほか、「デイジーの破壊」には11歳の少女、生後18ヶ月 (1歳半)の幼児が出演していた。

デイジーとされる少女

 これら性対象に虐待を加えるポルノにはジャンル名がついており「ハートコア(hurtcore)」と呼ばれている。「シュミレートされてない痛みや拷問を特徴とするポルノ」の一種だという。

「デイジーの破壊」の動画の紹介文にはこうある。
「come see a child's mental ruin,
her innocence lost,used as a tool,
she'll learn how to please her mistress,
her body will be ravaged,her dignity stolen
helpless…
she will hang for your amusement…」
「子供の精神的破滅を見にきてください。
彼女の純真さは失われ、道具として使用されます。
彼女は愛人を喜ばせる方法を学ぶでしょう。
彼女の体は荒廃するでしょう。
彼女の尊厳は無力にも盗まれます。
彼女はあなたの娯楽のために吊るされます」

「デイジーの破壊」はリージルが出演していた

 これらはまずは4chanで最初に公開されたようだが、視聴したほとんどの人がコピーを作成していなかったため、映像は直ぐに都市伝説化した。
「デイジーの破壊」は4つのフィルムで構成されており、1本は5〜9分間で合計20分ほどと言われている。
 1本目は、小さな女の子の陰部を女性がベッドの上で無理やり触ったり舐めたりしている。
 2本目は少女が天井のフックにロープで逆さまに吊るされ後手で手錠をかけられ、鞭を打たれている。悲鳴を上げないように口をテープで留められている(電気ショックでの拷問、性器をマッチで焼くなども収録されているという話もある)
 3本目はそれらがオムニバスのように構成されている。
 4本目はトイレの上に少女が吊るされ、女の子に排尿したり、水をかけたりしている。
 この他にも以下のような行為が収録されているという話である。逆さまに吊るしてベルトなどで殴打される、逆さまに吊るして火で炙る、陰部をクリップで挟み、切り取る、陰部に蝋燭のワックスを垂らして流し込む、大声で叫ぶと水につけられたり、テープで口を塞がれたり、首を絞められる、という内容だ。
 少女の1人は逃げられないように両足を切り落とされ、ナタで肋骨を切り裂いた。頭を真空パックに入れ、窒息させられた映像も含まれるというものもあるが真偽は定かではない。

 これらが明るみになったのは別のダークネットサイトの「Hurt2theCore」でマシュー・デヴィット・グラハムによりリークされたからだ。

Hurt2thecoreのページ

 グラハムもハートコアの愛好者だ。グラハムは「自由の名の下に」自分のサイトに映像を公開した。これを発見したオランダの全国児童搾取チームが捜査を開始、その後国際的な捜索が開始されスカリーが知られることになるが、Torネットワーク上の個人特定は難航した。

 結局、少女たちを連れてきたカーメ・アンが被害者に同情し、少女2人を逃がしたことで犯行が明るみに出る。
 彼が借りていた家から少女の遺体が発見され、ビデオの一つには幼児を強姦・拷問を繰り返している映像が確認された。
 なお、このビデオはFBIにより拡散を阻止され、現在ネット上ではその存在は確認できない。いくつかの画像は流出しているが、それをとてもここに掲載することはできない。
 「デイジーの破壊」出演者はリザ(12歳)、シンディ(11歳)、デイジー(18ヶ月)が判明したが、リザとデイジーは生存が確認されている。シンディは強姦と拷問の末、自らの墓を掘らされ、縄で首を絞められ殺害された。

シンディの遺体の捜索
床下から発見された

 2015年にスカリーの保管庫が火事に見舞われている。この時に火災にあった証拠はハードウェア、メモリーカード、カメラ、虐待時に使用したチェーンなどがあったと言われている。これによりいくつかの貴重な証拠が失われた。
 2015年にフィリピンのマライバライ市で国家捜査局によりスカリーは逮捕された。
 スカリーは2018年6月、5件の強姦罪で45年の禁固刑と1件の人身売買で終身刑が言い渡されたのち、11月3日に129年の懲役刑が言い渡された。少なくとも14人の子供を誘拐して拷問し、75人に性的虐待を加えたとされている。
 カーメ・アンも終身刑を言い渡された。
 北ミンダナオ地方州検察官は「私が生きているうちに、このようなものは二度と見られないと思います。これは私が今までに見た中で最悪のものでした」と述べている。


 この蛆虫による犯行によりいくつかの残酷な真実が浮かび上がった。匿名化されたペドフィリアやチャイルドモレスターたちはより深い地下に潜ったこと、命の価値が安い国では子供が商品になること、そして何よりチャイルドポルノは高い金になること、チャイルドポルノ愛好家達は相当数世界に存在するということだ。
 ドキュメンタリー映画「SNSー少女たちの10日間ー」でもわかる通り、インターネットというツールを使いネットの海に解き放たれることで子供に自由に接触し、振る舞い、収集し、売買し、コミュニティを作り情報交換することが可能になった。
 それらを可能にしたのはTorやVPNに代表される匿名化ツールだ。自由という名の下に作り出されたツールを隠れ蓑として使うことでより深層で泳ぎ回ることが可能となった。
 リベラリズムの果てにこのような行動が生まれたのだが、ネットの海からサルベージされるようにリークされたこともリベラリズムの果てとも言える。だが、リベラリズムの終末は「何でもカネで買える」ということでもある。
 これからは更にペドフィリアやサディスティックな性癖を持つものたちのコミュニティはより深く光の届かないところへ潜っていくだろう。そして彼らは決して見えるところには容易には浮上はしないだろう。
 一部の者たちはすでにサーバからの監視が届かないTelegramやDiscordなどにそのコミュニティの場を移しつつある。
 近年法治国家では死刑が廃止されつつあり、多分に漏れずこの怪物も死刑ではなく終身刑となっている。少々乱暴な言い方かもしれないがアフリカの途上国で同じことをやると確実にタイヤネックレスの刑か埋められて死ぬまで投石を受けるだろう。ここで人権がどうとか法治国家のあり方など語る気は毛頭ないが、一つだけ言えることは「どうにもならない闇は存在する」ということだ。ああいうものを自分の価値観で真正面から捉えてはいけない。彼らは柵から遥かに離れたところにいる。私たちの想像しうる最低最悪を最も簡単に飛び越える。
 彼らはより光の届かないところを探して深海魚のようにウロウロと彷徨うのだ。



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