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今日はもうおやすみ、プンプン


プロローグ


このタイトルの通り、私は浅野いにお先生の漫画が大好きである。(すべて作品を読んだわけではないです)

圧倒的な描写力、どこまでもリアルな現実主義ストーリー、親しみのある魅力的なキャラクター。どことなくゆるく続いていきそうな、でもすぐ崩れてしまいそうな日常の空気感。

私が初めて読んだのがおやすみプンプンでしたが、何週間か引きずるほど感動したのを覚えています。

ここから先は作品の好きな所をだらだら書いています。



作品紹介と好きなところ


1.おやすみプンプン

〈作品のあらすじ〉
小学生の小野寺プンプンは、ある日転校してきた少女、田中愛子に一目惚れする。愛子ちゃんを幸せにすると約束したプンプンは、愛子ちゃんとの約束を果たすために奮闘するが、願いを叶えることができずに疎遠になってしまう。そのまま中学、高校、フリーターとプンプンは不器用ながらも大人になっていく。青春ラブストーリー。


〈好きなところ、感想〉
何回も読んで、涙して勝手に癒しや勇気を貰っている作品。
よく鬱漫画なんて言われているが、超純粋なラブストーリーだと思っている。


・まず、主人公のプンプンがかわいい。プンプンや親や親戚だけが "鳥のデフォルメイラスト" で描かれている。これだけで相当なインパクトである。


さらに、プンプンの成長や心情の変化によってプンプンの姿は様々な形に変化する。
周りの登場人物は浅野先生特有の緻密なタッチの絵柄で描かれているのに、かわいい鳥のプンプンが違和感なく溶け込んでいるのがシュールで、ビジュアルだけでも見る人の心を掴んでいると思う。


・キャラクターデザインはもちろんのこと、キャラの性格や関係性も絶妙で、人間味があって憎めない。
プンプンの母や叔父、友達、仕事仲間などの視点で物語が進むこともあり飽きない。
プンプンの家庭環境、リアルすぎて読めないという読者もいるのではないだろうか。私の家もこんなにひどくはないが、少々似ている部分がありプンプンに私の幼少期の面影を見てしまった。

・プンプン自体はとても純粋な等身大な男の子として描かれているのが心にくる。
神様、神様 チンクルホイ。
と唱えると神様が来てくれると信じるくらい純粋。
恋や部活、友人関係、思春期の葛藤など本当に事細かに出来事を描いているので、見ている側はすごく応援したくなる。少なくとも私はそうだ。


・最終章に至るまでのゆっくりと坂を転がり続けるような展開はきついものがある。最後まで優しさを捨てきれなかったプンプンが壊れていく様子は圧巻。浅野先生の画力恐るべし。
最後の方に我々読者も知らなかったプンプンのトラウマが明かされるシーンがあり、今まで何も分かっていなかった自分を愚かに思った。結構な鬱展開が繰り広げられるので、
途中で休まないと読めない調子の時もあった。
そのくらい食らってしまうほど素敵な漫画です。

この物語は、プンプンが愛子ちゃんを幸せにするという約束を裏切って後悔するところから始まる。
信じるとは何かという問いをかけられたように感じた。
私が今までの短い人生で今のところたどり着いた結論は、その人のことを何も知らなくても、信じたいと思った時にその人と関わりたい何かしたい、と思うこと自体が「信じる」ということではないか。と考えている。(よく分からなくなってしまった)





2.うみべの女の子

〈作品のあらすじ〉
とある港町の中学に通う、主人公の小梅。小梅は好きだった先輩に告白するが◯茎を舐めることを強要されてしまう。そのショックから、中学一年の時に小梅に告白した磯部と初体験をする。曖昧なままの関係を持ち続ける小梅と磯辺の行く末は。



〈好きなところ、読んだ感想〉
この作品はプンプンとはまた違った、ほろ苦い青春という感じだ。エッチなシーン多めです。
ヒリヒリした感情を感じさせてくれる作品。


・最初は磯辺の方が小梅を好きだったのに、段々小梅が磯辺に恋していく所がリアル。
小梅は磯辺が死にたいと言っている時にあまり本気にしていなかったのに、
関係が進むと磯辺に「やっぱ死にたいとか言わないでよ」と言ったり、手紙を渡そうとしていたりしている。好きだと言われたから付き合った、という気持ちから本当の好きへと変わっていく気持ちが現れていると思う。

・◯ックスシーンが緻密。なのでエロ苦手な人にはおすすめしません。浅野先生のエロは痛さとか、
快感を強めに描いてる所が好き。相手を思い遣るというよりは、自分の快感のために行為してるという感じがとても好き(何を言ってるの私)


・磯辺と小梅が部屋で喧嘩した後にしまくって、二人が向かい合って寝てるシーンがあまりにも良すぎる。

・文化祭の日、かぜをあつめてが校内放送で流れる所の演出がすごいと思った。小梅が磯辺を探しに行って台風の中歩いている所、漫画を通り越して映像作品みたい。※浅野先生の作品は演出がかっこいいと思っていて、実写化されても全然違和感がない。


中学生、思春期真っ只中の恋愛を味わいたい方にはぜひおすすめしたい作品です。



3.デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション


デデデデのアニメ化が決まり、2024年劇場公開となったようです。おめでたい。

デデデデは社会派な作風でもありSFでもあり、読み応えがある作品。キャラクターはデフォルメっぽく描かれていてキャッチーでかわいいし、セリフが面白い言い回しでサクサク読めちゃうのではと思う。




〈作品のあらすじ〉
高校生の小山門出(かどで)と中川王蘭(おんたん)は幼なじみ。二人が生きる地球は、地球外生命体の「侵略者」に侵略されている。
3年前の8月31日、突如東京の上空に上陸した謎の飛行物体「母艦」。母艦から度々攻撃があったり侵略者の目撃情報があることから自衛隊と母艦の戦闘が日々行われている。
門出と王蘭達はいたって平和な日常を過ごす。しかし地球はもうすぐ破滅の時を迎える―






〈好きなところ、読んだ感想〉
・世界観の設定が超リアル。例えば、作品の中で登場するネットスラング。
地球にやってきた侵略者を同じ生命体として迎え、一緒に生きる道を選びたいという急進派思想の人は
「ブサイカ」と呼ばれ、
侵略者や母艦を排除して人類の平和を取り戻そうとする保守的な思想の人は「ネトタコ」と呼ばれる。

コロナ禍やウクライナ戦争で
個人の思想や生き方みたいなものがより一層インターネットで散見されるようになった。今の世だからこそ、こういう設定がとても身近に感じられて面白いなと思った。




・共感する所しかない。
家族や友達で侵略に対する意見が食い違っていて喧嘩になったり、陰謀論にハマる人が作中で登場している。
特に門出の母親が私の母にそっくりで、私の家と同じやん…と思い少し笑えた。ちなみに私も渡良瀬先生みたいな先生が好きだったので、もうほぼ門出が自分だと思って読んだ。それくらいキャラクターや世界設定が作り込まれている。



・侵略を受けて混乱する世相とは裏腹に、一般市民は私達が生きる世界となんら変わりない日常を過ごしている。普通に友達と遊んだり、高校を卒業して大学に入ったりシェアハウスしたり。
普通に東京が壊滅するかもしれないのに、どうせ何も起こらんやろーと日常を送る人物たちが描かれていて、平和ボケしてる日本っぽいなーと思った。


・作中にドラ◯もんみたいな「イソベやん」という漫画やキャラクターが登場する。かわいい。
侵略者が持っている道具に秘密道具みたいな物もしっかり登場するので、これはオマージュなのか...?と思いつつ読んだ。


・情報操作、報道規制、パラレルワールド、宇宙人などSF要素盛り沢山で面白すぎる。

今の日本は情報操作がかなり行われているというかそれしかないんじゃないかと私は思っているが、作中もかなりひどい。
作中では首相が緊急会見を開き、情報隠蔽に遭う場面があるが
実際にこういうすり替えや情報操作が行われているんではというくらいリアル。
浅野先生は誰か国会議員のお知り合いがいらっしゃるのでは…。(笑)


その他にも、宇宙人が人間の体を乗っ取って生活していたり、パラレルワールドにタイムマシンで行けたりなど王道SF設定で超面白い。
小説が好きな人もハマっちゃう漫画だと思います。


門出とおんたんの不思議な関係性も好き。最強な女子高生二人が世界を変えてしまったら…という夢のあるお話だと思います。







4.零落

こちらも映画化されましたね。まだ見れてないです。

浅野先生の世界観爆発作品だと思う。先生自身の人生をモデルに描いた作品だということもあり、嫌でも直視しなければいけない現実感があって後味も悪いですが読みました。最高です。



〈作品のあらすじ〉
漫画家の深澤薫は、長期連載を終えた。漫画はヒットしたが、発行部数が次第に減らされ編集者との飲み会もほぼ形だけのものになった。
妻との関係がうまく行かず離婚、新作の構想も浮かばなくなりデリヘル嬢のちふゆに想いを寄せるようになる深澤。漫画家の苦悩と創作人生を描いた作品。



〈好きなところ、感想〉
うまく行かない、本当に1人の人の人生を見ているかのようで、読んだあと虚無になります。
深澤先生は最終的に、自分が描きたいものより売れるものを描くことを選びます。
読者の理想の自分にはなれなかった、読者が見ている自分は何だったのかという涙を流しているように感じました。
何も分かってないよ…ってね。

私は絵を描くことの意味を問われ続けると、何も描けなくなってしまいます。(だから学校とかでこれはどういう意味??とか、目的ばかりを掲げられるとだめになってしまうタイプ。そこで突き詰める人がクリエイター向いてるんだよね)
だから本当に自分が何を表現したいのか、考えすぎるとこうなってしまうんだろうなと思いました。
スランプなんていう言葉じゃ足りない、一歩落ちたらそこから止まらず落ちていく、まさしく一つの人生を表現した苦い漫画でした。



以上、4作品のご紹介でした。
短編集の、世界の終わりと夜明け前もめっちゃ好きです。作品に感情移入しすぎてしまう人は、
メンタルの調子で読める、読めないもあるかと思いますが調子がいい時にでも読んでほしいです。
デデデデはけっこう読みやすいかもです。

話は変わりますが、漫画家の芦原先生が亡くなったニュースが流れた時に、浅野先生もそれに関するだろう呟きをしていました。
キャラクターも物語も自分の一部。
同じ漫画家として、心を痛めた部分もあったのかなと勝手な妄想をしました。


プンプンを電子書籍で購入したのに、紙でも欲しい。とっても深夜テンションで書いているので、読みにくいところがあったら申し訳ないです。
人間失格のおすすめ漫画紹介でした。
ゆっくりお休み、プンプン。

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