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リスト:無限ループ音楽

音楽の一曲というと、Aメロ▶︎Bメロ▶︎サビ▶︎…というように、いくつかのメロディフレーズを数回ずつ繰り返して繋ぐのが一般的な構成だ。
しかし世の中には、ひとつのフレーズを何十回も連続で繰り返すだけの “曲” がある。
予測可能性をコントロールしなければならない時間芸術において、ワンフレーズの強度とその味付けだけで飽きさせずに成立させる反骨と強肩は、音楽の極北と呼ぶにふさわしい。

この記事は、編者がこれまで僅かながら収集したそれらのカテゴライズを提言するとともに、読者の皆さんから広く情報提供を募り、あらたな無限ループ音楽の発見を目論むものである。

凡例;
作者名 - 曲名(繰り返しの回数 ※アバウト)

インストゥルメンタル

my bloody valentine - nothing is(268回)

シューゲイズの始祖MBVによる円熟した3rdアルバムから、繰り返しの単位が短い "これぞ無限ループ" な一曲。ラジオのチャネルを宇宙に合わせると聴こえる、銀河鉄道の騒音。

Coalter Of The Deepers -(無題)(155回)

和製シューゲイズバンドCOTDによるEP『Cat』の隠しトラック。各種サブスクでは最終曲『夏の行人坂』の背後に収録されている。鉛色の餅をつくような工業的なノイズに中毒性がある。

Yes - Würm(36回)

ジョジョのED(⬅︎To Be Contenued)でもお馴染みイギリスのプログレバンドYesから、初期の組曲『Starship Trooper』のエピローグ部分。たった3コードのギターソロがベースやドラムを巻き込み、やがて壮大な神話を出棺する。

Edvard Greig - In the Hall of the Mountain King(38回)

聞いたことがある人も多いであろう、クラシックの有名曲。ピアニッシモからフォルテッシシモへと劇的に増長する主題が、言いようのない畏怖と狂躁を駆り立てる。

The Dead Pirates - Heri(32回)

Spotifyで見つけたイギリスの新興ロック。ゆったりとしたカウントアップのようなフレーズが堅牢に繰り返されている。

Autechre - Acroyear2(120回?)

フレーズの定義が難しいが、恒常性の高さから入れたい一曲。コチョコチョしたノイズが確かに計画的に散らばる、頭頂葉の鍼治療。

GAS - Pop 4(568回)

ドイツのWolfgang Voigtによるアンビエントテクノ。鳴動のループが繊細に折り重なった、流れていながらそこに在り続ける川のような音楽。古橋和磨さんより提供。

坂本龍一 - 1919(207回)

三菱電機の携帯電話ディーガのCM曲にもなったという坂本龍一のピアノ三重奏。手前と奥と、ピアノとシンセサイザーとに受け継がれながら、8音のフレーズが通貫している。動画は岡城千歳によるアレンジ。しんごさんより提供。

Steve Reich - Piano Phase(350回?)

1フレーズを2台のピアノに分解し、少しずつ周期をずらしながら合わせることで聴こえ方が変容していく「フェイズ・シフティング」という実験音楽。しんごさんより提供。

ilili - マンションファクトリー(88回)

日本のデュオによるキーボードのヘヴィユース。切れ目がわかりにくいが、7拍子の一律なフレーズがループしている。p🧩さんより提供。

 中田ヤスタカ - Electrode Spark 0101(338回)

知略ドラマ『ライアーゲーム』のOSTから、ベタ打ちシンセのBGM。正直テクノとアンビエントは入れるとキリがない気がし始めている。Fulactaさんより提供。

◆ ◆ ◆

歌あり

歌の背後に同一のフレーズが繰り返されている曲も多い。が、前面の要素で展開を持たせられるぶん芸術点が低いので、ここでは列挙に留める。

Dr. Dre - Still D.R.E.(52回)

The White Stripes - Seven Nation Army(52回)

Orangestar - DAYBREAK FRONTLINE(60回;知人より提供)

James Brown - Gonna Have A Funky Good Time(73回;Jさんより提供)

COCK ROACH - 虫の夢死 / 無死の虫(各52回;つくつくてーさんより提供)

Perfume - コミュニケーション(27回;😵‍💫さんより提供)

◆ ◆ ◆

以上、普遍に解脱した音楽からしか摂取できない酔いを、感じていただけただろうか。

あるいは貴方しか知らない、このリストに載せるべき曲を思い出しただろうか?
もしそうなら、ぜひともこの記事のコメントか編者へのDMで教えてほしい。

採用する音楽は
・短いメロディフレーズが何十回も連続して曲の全部または一部を支配している
・音楽作品としてじっさいに鑑賞されている

ものが想定されるが、最終的には編者の独断で掲載する。

◆ ◆ ◆

関係ないが、編者の音楽的嗜好について考えたメモがあったので提げておく。

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