吉野家外国人差別疑惑の問題点について
はじめに
2022年4月から5月にかけて牛丼チェーン吉野家の不祥事が相次いでいる。それも提供する牛丼に問題があったわけではなく、企業としてのモラルがあまりにも時代遅れということで批判を受けている。このうち今回は外国人に関わる問題として2番目に起こった、外国人差別疑惑の問題について考えることとしたい。
問題の発端となったのは、両親の一方が外国にルーツのある日本国籍保持者(Aとする。)によるツイートだった。ツイート内容は以下に示す。
Aは吉野家の就職説明会に参加しようとしたが、吉野家からその説明会への参加を拒まれた。その理由は、外国籍の方は就労ビザの取得が難しく、内定となっても入社を拒否してしまうことになる可能性があるからというものだった。吉野家はAの名前だけを見て、外国籍者と判断し、説明会への参加を拒否した。
この件で吉野家は外国人差別を行なっている、という印象がネットに拡散され、吉野家がそれに対応せざるを得ない事態に発展した。
この件について何が問題点なのか以下では識者の意見も引用しながら考えていきたいと思う。
有名人の意見
この問題に関して、リベラル的な価値観を大切にする方々からのコメントはあったが逆の立場からの、有名人からのコメントは見つけられなかった。そのため一方に偏った意見だけを引用してしまうことになった。
採用の自由と外国人差別の境界線とは
採用の自由に関して、争点になった問題として、真っ先に思い浮かぶのは三菱樹脂事件であろう。三菱樹脂事件とは、安保闘争などの学生運動に参加していた者の採用が拒絶された事件である。日本国憲法は、第14条で、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」ことを定めており、企業の対応は憲法14条に反するのではないかとして違憲が疑われた。この点に関し、最高裁は「賃金などの労働条件について、思想などを理由に差別することは違法だが、雇入れ時に思想などを理由に拒絶することは違法ではない」旨、判断した。したがって、国籍を理由に採用しないということがすぐに違法となることはない。
憲法はやってはいけないこと(B)と、やりなさいということ(C)を定めているのであって、その間、betweenB&Cのところはフリーハンドに委ねられている。憲法はこの問題に関して、民間の自由にしてくださいと述べているに過ぎない。したがって、この問題については、法律違反や憲法違反ではなく、吉野家のモラルの問題に落ち着くと思われる。つまり法律違反ではないが、道徳的に許されない問題である。
近年、国籍による差別に国際社会の目は厳しくなっている。このような普遍的価値観を遵守しない企業には、いくら大企業であっても、サプライチェーンから外されたり、消費者からボイコットされたり、投資家にも投資されない時代になっている。それゆえ企業は企業HPでそういう普遍的価値観を大切にしているということをアピールしている。吉野家も例外ではない。今回の問題で、何がいけないことなのか、吉野家は、外国人ではないAさんに、外国人であると事実誤認して、説明会の参加を拒否した。この点は事務の方法のミスであろう。外国人は説明会への参加拒否、ひいては採用拒否しているという事実は、外部に多様性を大切にすると掲げていながら実際は、採用しないでいるという、言っていることとやっていることが違うというモラルの問題で問題があると言える。ビザ取得は、雇用契約を成立させてからであるので、ビザが出るか分からないから、説明会への参加を拒否しているというのは、外国人は全て、採用しませんよと言っているようなものである。このモラルの問題が、吉野家が責められる理由になっているのだと思われる。
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