過去を振り返ることについてのメモ

すべて断片的なメモ✍️

・昨年を振り返るための指針
 過去を振り返るということは現在の価値観で過去を解釈し直すということだ。だから過去の自分と振り返る自分は同じ地点に立っていてはいけない。新しい年になってから10日経ったが、去年のことを振り返るにはまだ早い。今年まだ何も新しいことを考えられていないからだ。去年のことをいま振り返っても、それは去年の枠組みで去年をまとめようとしているに過ぎない。よかった映画や音楽を選ぶのだって、少なくとも来月になってからのほうがいいはずだ。でもアカデミー賞の授賞式やCDショップ大賞の発表よりは前のほうがいい。余計な情報は遮るという注意も必要だ。

・Filmarksとの向き合い方がうまくいかない
 似たような話だが、Filmarksになかなかレビューを書けずにいる。去年は観た映画の半分もレビューを書けなかった。これは私が観たものを咀嚼するのに時間を要するからなのではないかと思う。映画館を出た直後の感想は決して嘘ではないが、のちのちその映画に対して自分が抱く印象とは異なる場合が多い。けれどもよい映画であればあるほどに、その印象は人生をかけて変化していくような気もしているので、そうだとすると死ぬことがわかってから全てのレビューを書きはじめる必要があるということになる。

・オールタイムベストについて
 雑誌の企画などで選ばれた映画のオールタイムベストは邦画も洋画もずいぶん昔の作品ばかりだ。業界に携わる人々が選ぶのであればその後の映画の礎を築いた過去の名作を選ぶのはさもありなんと思うが、読者が選んだとしてもだいたい同じような結果になるのは不思議なことだ。読者とはいえオールタイムベストを選んで雑誌に投稿するような輩はふだんから映画批評を目にしているからそうなっているだけなのかもしれないが、ではそういうしがらみから離れたとしても同じような結果になるのだろうか?
 そもそもベストな映画とはなんなのか?時代的な文脈と関係なく優れた作品もあれば、時代の空気を上手く取り込んでいることによって評価されている作品もあるし、社会的に評価されているかどうかとは全く関係ないところで自分の人生にとって何かの指針になったことを評価したい作品もある。もし最後の項目に該当する作品だけを各々が選んだとしたら今あるようなランキングとはきっと別のものになるはずだ。
 ところで私がそういったやり方で映画を選ぶとしたら何が入るだろうか?これは慎重に吟味する必要があるけれども、たとえば「ミュウツーの逆襲」のような映画は入れてもいいだろう。でもルギアやエンテイは入らない。この線引きは大事だ。ミュウツーとそれ以降は全くちがう。子供の頃の映画ならほかにも「帰ってきたドラえもん」や「ハリー・ポッターと賢者の石」などを観たときの心の動きは他の映画たちとは異なるものであったはずだ。大人になって素晴らしい映画をたくさん観たけれども、若き日の感動と同じような気持ちを感じることはもうない。

・過去は未来であるということ
 古本屋で『味覚の旅』という本を購入した。昭和42年の本で、全国の名物料理が紹介されており楽しい。紹介されている料理の中には今でも名物として広く知られているものもあれば、鯉や鮒などの川魚料理のように現代ではそれほど人気があるとは思えず、初めて目にするものも多く登場する。知らないことを知ることは未来に向かう行為であり、昔の本を読んで知識を得たとしてもやはり未来志向ということでまちがいない。このような本を携えながら、現代のガイドブックには載っていないような知らない味を求めて行ったことのない土地を訪れることもまた大きな喜びだ。

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