10/14 鉄道の日(+1)
小学生の私は、長期休みになるたびに祖母の家に行き、祖父の遺品だった昔の鉄道雑誌を漁っていた。その中で、1972年の鉄道開業100周年の際には、全国各地で様々な祝賀イベントが催されていたことを知った。とりわけ目を惹いたのが、まさに100周年を迎える10月14日に、鉄道が初めて開業した区間と同じ汐留〜横浜(東横浜)間でSL「鉄道100周年記念列車」が走ったという記事だった。当時既に東海道線から黒煙は消えていたが、まだSLが現役だった紀伊田辺機関区から借りてきたという。雑誌には、SLの勇姿を一目見ようという人々で溢れる中を走る機関車の姿が載っており、こんな祝いの場に立ち会うことができたらどれほど感動するだろうかと思ったものだ。そして、次のメモリアルイベントは2022年の150周年で、100周年ほどはキリがよくないものの、きっとビッグなイベントが開催されるに違いないと確信した。自分の好きな鉄道が盛大に祝われる日が未来にあることを、とても楽しみなことだと思っていた。
そして現実の2022年10月14日。150周年の記念イベントとして、新橋〜横浜間でハイグレード車両(といっても、車両自体はたまに見かける列車だからそれほど特別感はない)を使った特別列車が運転されたほか、各地でイベントが催されたようだ。もしかしたら、このご時世でなければもっと規模の大きな催しがあったのかもしれないが、当日に仕事を休んでどこかに行こうというほどのことは何もなかった。鉄道とはなんの関係もない企業のサラリーマンになってしまった私は、暗い顔の人で満員になった通勤電車でいつもどおりに出勤し、いつもどおりに仕事を終え、居酒屋帰りの客で混沌としていた通勤電車で帰宅した。今でも鉄道のことは好きだけれど、昔の私が期待していたほどの祝典がなかったからなのか、それとも単に私が大人になってしまって、幼い頃のような感動を日常の中に見出せなくなったからなのかはわからないが、子供のときに夢見た日はあっけなく終わってしまった。でもきっとこれでいい。私は私の生活を続けるし、通勤のときも、出かけるときも、旅に出るときも、その傍らにはいつも鉄路がある。いつもありがとう。おしまい。
昨日のうちに上の段落まで下書きをしていたが、公開する前に寝てしまった。翌朝、つまり今朝、私は平日よりも早く起き、山へ向かう電車に乗った。山へ行ったのはハイキングのためではない。いつもは別の路線で走っている電車が、特別に山の中の路線を走ることになったからだ。それなら山と絡めて写真を撮りたいと考え、駅から坂道をひたすら登って写真を撮った。撮影を終え、その後も折り返しの列車を別の場所で撮影し、隣の駅で行われていた保存車両の公開イベントに参加した。私が生まれるよりも前に現役を終えた車両が今でも大切に保存されていて、入場料を取るわけでもないのに一般に公開してくれるのはありがたい限りだ。昨日書いたことと全く別のことを言うが、やっぱり私はいろいろな趣味を持っていながらもとりわけ鉄道が好きであって、時折鉄分を補給することで生き続けられているということは疑いようもないことだ。鉄道大好き、ばんざい、150歳おめでとう。私の方が先に死ぬけれど、いつまでも愛される存在でありますように。
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