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インタビュー 中央ドライ代表:池上透氏


一般の消費者からブランドや洋服店。県内外の多くの方からの信頼を勝ち得ている富山のメンテナンスの名店「中央ドライ」さん。そのオーナーである池上透さんに話を伺いました。

KENSUKE:「中央ドライ」のオーナー池上透さんです。よろしくお願いします。早速ですが、お店をはじめられて現在までで、どれくらい経っているのでしょうか?

池上氏:お店を出してから20年以上たっているし、その前に修行にも行っているから27.8年ですかね。

KENSUKE:修行の期間ですか?

池上氏:もちろんです。もともとクリーニング店を経営していた父親に教えてもらうか、それとも他の誰かに教えてもらうかという話なのですが、基本はやはりクリーニング店ですから。クリーニングをやりながらメンテナンス業に変えていこうと思ったのが、今から17,8年前ですかね。

KENSUKE:現在のようなメンテナンス業に変えていこうと思ったきっかけを教えていただけますか?

池上氏:良い技術をお客さんに提供したいという思いがもともとありました。それは大手のクリーニング屋ではなかなかできないことですから。技術を身に着けて確実にお客さんから喜んでもらうという状況を作りたい。それで技術を習いに行こうと思うようになりました。染み抜きやテーラーメンテナンス、洗いとか…いろんなものを習いましたね。

KENSUKE:一般のクリーニング店とメンテナンスの違いを教えていただけますか?

池上氏:どうしてメンテナンス業になったかと考えたとき、お客さんが求めている品質に答えるために、どうしても時間や技術が必要になってきました。やっぱり通常のクリーニング店は、アメリカの安い早いという生産性を求めるところが多いです。ですが、偶然私が付き合っていた洋服店のお客さんや経営者さんは、「安い早いではなく、お客さんが大切に扱っている洋服のことをもっと考えてほしい」と言ってくださいました。そういう経緯があり、メンテナンスを勉強して技術をお客さんに提供しようと思うようになりました。

KENSUKE:お客様からの提案ですか。

池上氏:そうです。お客様が一般のクリーニング店に出すと、洋服のシルエットが崩れてしまうことや、折角気に入って思い出のある洋服がダメになるということがありまして「なんとかしてくれないか」と頼まれることがよくありました。ですから、当初はクリーニングの駆け込み寺的な感覚でした。ですがそれをやっていくうちに、洋服屋さんがもっとお店の商品をやってくれとか頼まれるようになりまして。

KENSUKE:そうでしたか。現在中央ドライさんが提供しているメンテナンスにはどういったものがあるのでしょうか?

池上氏:「テキスタイルケア」というメニューがあります。今は、メーカーがいろいろな素材を使って新しいものを作ってきますが、新しいものを作れば作るほどクリーニングには不向きな衣料もたくさんできています。今の若い方は、雑誌だとかいろいろなメディアが刺激になって新しいものを求めている現状がありますが、一方でそういったものが増えるとクリーニングはしにくくなるといった現状もあります。そういう中で「テキスタイルケア」 というものを通して、特殊染み抜きや染め、高級品テーラープレスなどいろいろな他ではできないメニューを作ってお客様に提供しています。

KENSUKE:そうですか。先ほどブランドの中でバブアーを挙げてくださいましたけど、いつもお店にお世話になっている側としてバブアーをたくさんメンテナンスされているイメージがあります。バブアーのメンテナンスはどういったことをされているのでしょうか?

池上氏:バブアーは私自身が20歳ぐらいのときからとても好きで着用しているのですけど、本当のバブアーのメンテナンスはリプルーフ(意味:バブアーのジャケットに再びオイルを塗り入れること)なり洗浄なりしていかないと、日本では着用しにくいですからね。それで私はマイクロバブルとか勉強してバブアーを水で洗うという前提を作り、新しく繊維保護のためにもオイルを入れることや特殊技術を使ってメンテナンスをしています。私はメーカーが間違ったメンテナンスを提案していることがバブアーの愛好者として許せなくて。それが原因でメーカーに「あなたたちのしているメンテナンスは偽物だ」って直談判しに行ったこともありました(笑) 今では年間バブアーが400着ぐらい集まってきています

KENSUKE:すごいですね!

池上氏:去年は大体それぐらいかな。いまではお客さんからお客さんにつながって紹介していただいて送ってくださることも多いね。

KENSUKE:そうなのですね。では多くの方の衣料を預かってメンテナンスをされている中で、池上さんのお客様に対する気持ちを教えていただけますか。

池上氏:お客様は仕事をして給料をもらってショップに行って…と時間をかけて一つの洋服を購入されているので、その思い出を長い期間着ていただきたいという思いだけでメンテナンスをしています。それをするときには病院と一緒で、酷くなる前にお客さんに持ってきていただいていただけたらと思っています。手術が必要になった段階で持ってこられると綺麗にはなっても繊維へのダメージは避けられませんから。
お客さんの思いにどのように答えられるかが私のすべてなので、高級品だろうが安価なものだろうが関係ないです。私のメンテナンスは金額的には少し高い設定ですが、それでもユニクロの商品をもって来られる方もいますしね。職人根性で持ってきてくれるお客様の気持ちを第一に考えたいです。
メーカーの作ったシルエットや縫製など、正しいメンテナンスができる方が現在求められていますからね。

KENSUKE:そうしましたら、池上さんとしては正しいメンテナンスを提供できる場はもっと広がればいいとお考えでしょうか?

池上氏:そうですね、次の世代までメンテナンス出来る人が育ってほしいと思います。メンテナンスという産業を作って求めていかないと、洋服屋さんも購入される方も気持ちよく服を着用できる時代がなくなってしまうのではないかと心配しています。

KENSUKE:僕もこの産業が続いてくれることを心から望んでいます。では、今まで多くの衣料を扱ってこられた中で難しかったなどのエピソードはありますか?

池上氏:背広の基本を習って現在この仕事をしていますが、埃や皮脂、また汗の付着を取り除いて、生地本来の風合いを再現するのに苦労することがあります。
あとは婦人物。最近カラーバリエーションが豊富ですよね。イタリアものなどはとくに発色が綺麗です。イタリアと日本では風土や気候が違うので、色が弱くて作業に入る前にテストをすると洗う前のテストで色が落ちてしまうという商品が大変多いので苦労しています。

KENSUKE:そうなのですね。では中央ドライさんとして現在取り組んでおられる他店と違うメニューなどあれば。

池上氏:現在家での保管は管理が難しい…という要望に対してシーズンオフに洋服にとって最適な空間で保管するサービスを行っています。

KENSUKE:大変うれしいサービスですよね。

池上氏:洋服を買うという思いではとても大切なものなので、ずっと着用できるような状況を作ることができたらと考えています。靴などはソールを張り替えたりとかいろいろ手入れをして次の世代まで履いたり…ということがあるじゃないですか。そいうことを洋服でもやりたいですね。
勿論、そのためにはどうしても時間がかかります。ものによってはスーツ上下で6時間とかかかるものもあったりしますので。ですが、お客様が喜んでくださるので続けています。お客様がメンテナンスしたものを見て感動していただけるのなら、その商品が高価なものとか安価なものとかはあまり関係がないです。

KENSUKE:ありがとうございました!

中央ドライ代表:池上 透
URL:http://www.chuodry.com
Email:chuodry.ikegami@gmail.com

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