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メンタリング実践例③ 〜オンラインCase-based Discussion〜

1、Case-based Discussionとは?

こんにちは、医局にっぽんです。すっかり寒くなってきましたが、私たちは冬眠せずに活動を続けています。

さて、皆様はメンタリングといえばどんな形を思い浮かべますか?
複数のメンバーで語り合うクリニカルジャズや日頃の活動を振り返るログチェックなど、様々なスタイルがありますよね。今日はその中でも、経験した事例を対話の中で深めていくCase-based Discussion(以下CbD)について報告したいと思います。

CbDは総合診療医・家庭医療専門医の後期研修の中で指導医と取り組むように明記されている方法です。専攻医の経験した事例を共有しながら何を学んだのか・何がポイントだったのか、指導医と対話することで省察を行います。
詳しい方法などについては、日本プライマリ・ケア連合学会のHPをご参照ください。

<日本プライマリ・ケア連合学会HP >
http://www.primary-care.or.jp/nintei_sk/evaluation.html

2、実践例の紹介

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今回、医局にっぽんが外部メンターとして関わっている施設の専攻医とオンラインCbDを行いました。

まずは専攻医の先生から最近モヤモヤを感じた事例を報告してもらいました。入院しても治療が奏功しない患者さんに今後も医療的ケアが必要になること(Bad News)を伝えるかどうか迷い、結局入院中には伝えられなかったことにモヤモヤされているようでした。本当は告げなければいけないのに言えずじまいだった、という感触が引っかかっていたようです。
なぜ言葉が出なかったのか話を深めていくと、過去にBad Newsを伝えたせいで逆に患者に辛い思いをさせてしまった……と感じた経験があったり、患者と揉め事になるのを避けたいという自分の「防衛本能」が働いていたことが明らかになってきました。
一方で、そのタイミングでBad Newsを告げなかったことが結果として患者の気持ちが整うまで待つことに繋がり、患者が自分の疾患に向き合いながら治療継続できるようになったという良い側面もあったようです。
Advance Care Planning(ACP)を考えた際、今はあえてBad Newsを言わずに適切なタイミングを待つこともあります。ここでの「待ちの一手」は患者の気持ちが整うために重要な一手だったのかもしれない、それが結果として良い方向につながったのかもというフィードバックに、専攻医の先生の表情がほぐれたのが印象的でした。
また、自分の思考のクセに気づいたことも大きいと専攻医の先生は話されていました。患者さんと揉めたくないという思いで行動に影響が出る自分のクセに気づいておけば、今後の行動に活かせるようになるかもしれません。自分の考えをメタ認知することで次の実践に活かす、これこそ正に省察的実践そのものですね。
今回の気づきを元にポートフォリオを作成してみて、更に内省を深めていこう!という所でCbDは終了となりました。

3、実践のコツ

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オンラインでCbDを行う際にポイントとなるのが、ケースの情報をどう共有するかです。専攻医に毎回資料を作ってもらうのは大変ですし、スライドやプリントではリアルタイムの共有がなかなか難しくなります。
そんな時には、ホワイトボードサービス(JamBoardなど)を使ったりパワーポイントや手書きメモを画面共有しながら板書を作成することでリアルタイムに情報共有しやすくなります。リアルタイムの情報共有がそこまで手間なくできるようになれば、オンラインCbDのハードルもぐっと下がるのではないでしょうか。ぜひ試してみてくださいね。

4、終わりに

オンラインでもCbDはできる・学びは得られるという事例を共有しました。
専攻医のセッティング次第では疾患の管理や外来マネジメントなどを話す場はあっても、なかなか自分の感情面や臓器別の問題点以外のモヤモヤを語る場面がないときもあります。
今回のケースでは専攻医の感情や患者の感情に焦点を当てることで、新たな気づきを得ることができました。
こういった感情・思いの絡む振り返りを行うためには、診療と切り離した場を敢えて用意することで心理的安全性が確保され話しやすくなるのかもしれません。
私たち医局にっぽんが外部メンターとして関わるメリットは、この「診療と切り離してメンタリングを行える」というところにあるんだな、と感じた経験でした。


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