「定義」と「措定」と「規定」の違い
哲学のオンラインサロン ソトのガクエン を受講しているのですが、ディスカッションの中で、「定義」と「措定」と「規定」はどのように違うのか?が話題になりました。
たしかに、どれも哲学書を読んでいると見かける単語ですが、これまで深い意味を考えることもなく、読み飛ばしていました。
改めて問われると、違いがよく分かりません。
そこで、『岩波 哲学小辞典』で各単語を調べてみました。
結論
上記小辞典の記載の詳細は後述しますが、私なりに各語彙の特徴をまとめてみると、次の通りです。
定義する
概念のもっとも本質的な特徴を決定すること
措定する
ある命題を仮に固定すること
規定する
思考の対象の性質・限界をはっきり定めること
上記から、「定義」と「規定」は、いずれも概念を限定して置く場合に使われることが分かります。ただ、「定義」の場合は、本質的な特徴をその限定概念の中に盛り込むのに対して、「規定」は、必ずしも、本質的な特徴を盛り込む訳ではありません。
これに対して、「措定」は、概念というよりも命題を対象にしていて、その命題を仮に置く場合に使うようです。
一応は上記のように整理したので、今後、読書の際に、またこれらの語に遭遇した確認してみようと思います。
各語彙の詳細記載
定義 [英 definition]
概念の内包を決定すること。定義はその概念の示す対象のもっとも本質的な属性をとらえなければならない。定義のために守るべき規則としてはつぎのものがある。
a)定義に用いる概念と定義される概念との外延は一致しなければならない。さもないと定義は広すぎるか、狭すぎることになる。
b)定義される概念を定義の中に含ませてはならない。この規則を犯すと循環的定義になる。
定義はわれわれの用いる概念の内容を固定するものとして、研究の出発点であるが、また研究成果の総括でもある。しかし定義はつねに近似的、相対的で対象を完全に汲みつくすものではない。研究の進歩により、対象自体の発展によって定義は深く豊かになってゆく。
措定 [英 posit, 独 setzen]
1) 一般的には(Aがある)、(SはPである)というように、あるものの存在を肯定したり、ある内容をしかじかものとして明白にとりだし固定する思考の働き。
2) ある命題を自明なもの、または任意の仮定として直接的に推理によらず肯定し主張すること。
3) フィヒテでは自我が自己を算出し、存在を算出する形而上学的な自我の働き。
規定 → 限定 [英 determination, 独 Bestimmung, Determination]
1) 一般に思考の対象の性質・限界をはっきり定めること。とくに論理学では、ある概念を同じ類概念に従属する他の概念から区別する徴表を確定すること、または概念の内包に新しい徴表を加えてその外延を狭めること(例えば動物から哺乳動物をうること)をいう。
2) 形而上学で、無限な実在が分化してたような有限な事物となって現れる過程を論理的な限定になぞらえて考える場合がある。スピノザ哲学の実体と様態との関係がその代表的な例であるが、限定とはある物が他の物ではないことをいうのであるから、彼は(あらゆる限定は否定である)と考えた。
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