おだやかな二人のクリスマス

(大学生の二人が同居している前提です:1111文字)

◇雨宮 翼

年末も近づいた街は、クリスマスの華やぎに満ちている。まだ昼間だから、ライトはついていないが、それでも十分な装飾が心を沸きたてる。買い物客が行き交い、ショーウィンドウにカメラを向けている。ライトアップしたらどんなにきれいだろう。

クリスマスのプレゼント、今年はお揃いのマグカップにした。
赤と緑のクリスマス・カラー。
たまに作ってくれる本格的なココアを一緒に飲みたい。

お揃いの色違いのカップは、もう一つ買った。青。これはアイツのだ。たまに来てかき回していく、渚。

俺と小泉が今こうしていられるのも、アイツが背中を突き飛ばしてくれたからだ。ありがたいと思っている。

気難しくて、意地悪なのに顔と頭は抜群に良い。アイツの唯一の友だちが小泉。アイツは俺と同じ大学だから、そばに住んでいてちょくちょく顔を出す。

モテモテなのに、色恋沙汰は聞いたことがない。まぁ、俺と小泉じゃ、恋愛経験値がなさすぎて、話にならないか。ははは。
たまには、頼ってほしいけどな。

早く家に帰ろう。

そろそろ二人のときには、小泉を「郁」って呼びたいって思ってる。びっくりするかな? 喜んでくれるかな?

あ~でも、年末のファミレスは大忙しだから、また帰りは遅いんだろうな。
終わる頃迎えに行って、一緒にイルミネーションを見ながら帰ろうかな。
言葉にはできないけど、心の中で思ってる。郁、好きだよ・・・。
こんなにクリスマスを嬉しく思うようになるなんて、お前のおかげだな。
また、もう少し、勇気出してみるよ。

fin

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◇小泉 郁

飲食業のバイトは、年末は忙しい。なかなか休みがとれないけど、クリスマスの夜くらい先輩と過ごしたいな。

昨年は受験でそれどころじゃなかった。先輩のそばにいけることだけを考えて勉強がんばったんだ。今年はね・・・思わず顔がにやける。
クリスマスなんて関係ないと思ってた。バカみたいだ。キリスト教徒でもないのにって。でも街のきれいなイルミネーションをみたら、二人で一緒に見たいなって思ったんだ。

プレゼントっていうか、二人で遊べるゲームをネットで注文した。運動にもなるやつ、そうそう、TVCMでやってる。
ゲームなら、渚が遊びにきたときにも、一緒にできるしな。
それと、新しいボディソープ。匂いのきついのは先輩はだめだから、やさしい香りの。いい匂いの先輩と一緒に眠りたい。にやにや・・・。

「おい、休憩終わりだぞ」

バイトリーダーの声にはっとする。
じゃ、もうひとがんばりしますか。
郁はにやにやを収めて、立ち上がった。

fin

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