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アレンの映画を授業で観てよいか分からない

大学に英語を講読する授業がある。今年度の前期に使っているのはウォルター・アイザックソンの『アメリカン・スケッチズ』。

アイザックソンといえば、人気なのはジョブズかマスクの伝記だろう。それらは日本語訳の入手が非常に容易。つまり講読の授業では使いにくい。

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ゴールデンウィーク明けから履修者に訳の担当を割り振ってある。割り振っていない4月23日は『アメリカン・スケッチズ』関連の映画を観ようと思う。学校教育が目的だから、著作権法上の支障はない。

そこで観ようと思うのが、たまたま私が所有しているDVD『ウディ・アレンのバナナ』。『アメリカン・スケッチズ』にアレンの伝がある。1971年の作品だけあって、エロ本の表紙など不適切な表現が写りこんでいる。そこはとばす。

本当の問題は、アレン自身が養女などに不適切な行為をした、という疑惑だ。Me-Too運動が高まったあと、アレンの疑惑が再燃し、不適切な存在として扱われるようになったというのだ。そして、どうも『アメリカン・スケッチズ』の記事もその類の論点らしい。

ただし、本人は否定していて、アレンが監督した映画はしっかりamazon.comやamazon.co.jpで販売されている。状況は、彼は疑惑に対して相応の不名誉を科されている、といったところだろう。一般的ではないが、各自判断での「社会的制裁」が科されている。

日本ではより組織的で大規模な性加害をした、あるいはしたかもしれない芸能関係者たちが完膚なきまでにボイコットされている。それを考慮すれば、アレンの作品を観るのも自粛するのが無難かもしれない。

私は映画評論家でないので『バナナ』のような「くだらない」コメディにそれほどの芸術的価値があるか分からない。不適切かどうかは論争的であるが、むしろそうした状況を学ぶということを意味あるものとしてとらえ、1970年代の社会・文化とユダヤ人エンターテイナーを観察するこの機会を活用したいと思うのだ。


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