自分を活かす/童話「アリとキリギリス」
れんこんnote 059
自分を活かす/童話「アリとキリギリス」
自分を好きになることから始めたら、次はどうすればいいでしょうか。
そんなことを考えながら、童話の続きを創作してみました。
「アリとキリギリス」の続きです。
死んだキリギリスには弟がいました。
弟キリギリスは、兄のように惨めな死に方はしたくないと考えました。
森の賢者であるフクロウに「まずは自分を好きになることじゃ」と言われ、努力しましたが、自分を好きになっても、それが食べていけるようになることとどう結びつくかがわかりません。
フクロウにどうしたらいいかと聞くと、フクロウは答えます。
「働くことじゃ。
働いて、どんどん働いて、とことん働いてみることじゃ。」
「働くって言ったって、ボクは得意なものがないんです。」
「他人と比べるんじゃない。
自分の中で得意なものやよいものを見つけて、それを活かすことを考えるんじゃ。」
「でも、お米作りも野菜作りもすべて、アリのほうが上手で、キリギリスのボクたちに出番はありません。」
「確かにアリのほうが、キリギリスより米作りも野菜作りもうまい。
じゃが、アリとキリギリスが上手に協力すると、米と野菜をたくさん作ることができるんじゃ。」
「アリ100匹で、米ならば10トン、野菜ならば3トン作ることができる。
キリギリス100匹で、米は1トン、野菜は2トン作ることができる。
米と野菜を同じ量だけ、できるだけ多く作ることにしよう。
アリ100匹だけで作ると、米と野菜を2.31トン作ることができる。
キリギリス100匹だけで作ると、0.67トンずつじゃな。
アリとキリギリスが別々に作ると、合わせて米と野菜が2.97トンずつできる。
ところがだな。
キリギリスはどちらかというと野菜作りが得意じゃな。
そこで、キリギリス100匹全員が野菜を作り、アリはその分を米作りに回ることにしよう。
そうすると、米と野菜を3.85トンずつ作ることができるんじゃ。」
「キリギリスのお前さんが、アリよりあらゆる面でできなくても、お前さんの中で得意なものを作ると、世の中のためになるということじゃ。
得意なものを活かせ、と言った意味ががわかったかな。」
「計算はよくわからないけど、自分の中では野菜作りのほうが上手にできるから、野菜作りに専念したほうがいいってわけか。
わかった気がするよ。」
弟キリギリスは、他人と比べることはやめて、自分の中で得意なものを見つけることにしました。
まずは、学校のさまざまな学習の中から、自分が得意なものや自分のよいところを活かせる分野を見つけてみようと決心して、取り組み始めました。
しかし、弟キリギリスは学校の勉強に励みましたが、なかなか得意なものが見つかりません。
仲間のキリギリスも「オレたちに得意なものなんかないよなあ」と言います。
弟キリギリスは落ち込んでしまいました。
しかし、このままではいけないと思い、仲間と一緒に再びフクロウを尋ねました。
「他人と比べないで、自分の中で得意なものを見つけようとしたんだけど、見つかりません。
どうしたらいいでしょうか」
フクロウはやさしくアドバイスをしてくれました。
「そうじゃな。
学校の勉強が苦手な者もいるじゃろうな。
しかし、大丈夫だ。
お前さんたち、好きなものや気になるものはないかな?」
「ボクは、食べるのが好きです。」
「オレは、勉強は嫌いだけど、ものを作るのは割と好きかな。」
「高校生くらいのときには、得意なものを持つのは簡単なことじゃ。
たいていの高校生は教科書に書いてあることくらいしか、ものを知らん。
だからな。
教科書に書いてないことを勉強すれば、すぐに先頭に立てるんじゃ。
食べるのが好きなら、好きな食べ物について調べてごらん。
もの作りが好きなら、この地域でもの作りをしている人たちを訪ねて、どんなもの作りをしているか、調べてごらん。」
「面倒くさいな。
それより遊びたいなあ。」
「若いうちは遊びたいものじゃ。
遊んでもいいが、自分を活かす道は見つけておくもんじゃ。
自分で動かなければ、人生は変わらんよ。」
弟キリギリスは、フクロウのアドバイスに従い、好きな食べ物について調べ始めました。
プリンが好きなので、アルバイトでお金を貯めて、せっせといろんなプリンを食べ歩きました。
自分でも作ってみましたが、上手く作れません。
そこで、一番好きなプリンを出す店にアルバイトで雇ってもらい、研究することにしました。
もう一匹のキリギリスは、しばらく遊んでいましたが、弟キリギリスがアルバイトをしながらプリンを研究している姿を見て、もの作りをしている人たちを訪ね歩き始めました。
私が知っている話は、ここまでです。
二匹のキリギリスがその後、どうしているかは知りません。
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