閑さや岩にしみ入る蝉の声
れんこんnote 052
昭和30年代のことです
夏休みに入ると
子どもたちは昼寝をさせられました
エアコンはありませんから
障子を全部開け放って寝ました
軒下で蝉が一匹でも鳴くと
うるさくて眠れません
蝉を追い払って寝ました
母親に見つからないように寝床を抜け出し
外へ出てみたことがありました
子どもは一人もいません
大人も一人も歩いていません
車も走っていません
カーンと太陽が照り付けているだけでした
真夏の昼下がりがとても静かなことに驚きました
大人になって
真夏に神社を訪ねたことがあります
蝉は相変わらず一所懸命に鳴いていました
蝉の声しか聞こえません
大きな樹の下にあった岩に座り
蝉の声を聞いていました
蝉時雨が体にしみ込んできて
私はまったくの静寂のなかにいました
ゆったりと落ち着いて
岩と同化しているみたいです
蝉時雨のなかで静寂を得られることにとても驚きました
街に戻ると
真夏の昼下がり
人々が忙しく動き回っています
車もたくさん走っています
街は様々な音にあふれています
芭蕉は
江戸の喧騒を離れ
出羽国の立石寺で蝉時雨に包まれて
心の閑さを取り戻したのではないでしょうか
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