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アリの生き方とキリギリスの生き方/童話「アリとキリギリス」

れんこんnote 057


童話「アリとキリギリス」の始まり

 童話「アリとキリギリス」をご存じだと思います。
 皆さんの知っているお話の結末はどうなっていますか。
 前半部分はどれも同じですが、結末はいろいろあるようです。

 童話「アリとキリギリス」は次のように始まります。

1.キリギリスは夏の間歌って遊んでいる。
2.アリはせっせと働いている。
3.冬になり、キリギリスは食料がなくなる。
4.キリギリスはアリに「食べるものをください」と言いに行く……

 ここまでは同じですが、ここからが異なってきて、結末は3種類あるようです。


【結末1】キリギリスは餓死する

 冬になって、穀物が雨に濡れたのでアリが乾かしていますと、おなかの空いたキリギリスが来て、食べ物をもらいたいと言いました。
「あなたは、なぜ夏の間食べ物を集めておかなかったんです?」
「暇がなかったんです。歌ばかり歌っていましたから」と、キリギリスは言いました。
 すると、アリは笑って言いました。
「夏の間歌ったなら、冬の間踊りなさい」

    河野与一訳『イソップのお話』岩波少年文庫


 【結末1】は、古くからある昔版の「アリとキリギリス」です。
 キリギリスが餓死する結末となっています。


【結末2】キリギリスは餓死する前に言い残す

 冬になって、穀物が雨に濡れたのでアリが乾かしていますと、おなかの空いたキリギリスが来て、食べ物をもらいたいと言いました。
「あなたは、なぜ夏の間食べ物を集めておかなかったんです?」
「暇がなかったんです。歌ばかり歌っていましたから」と、キリギリスは言いました。
 すると、アリは笑って言いました。
「夏の間歌ったなら、冬の間踊りなさい」

 すると、キリギリスはこう答えました。
「歌うべき歌は、歌いつくした。私の亡骸を食べて、生きのびればいい。」

 こちらもキリギリスが餓死する結末ですが、【結末1】の後に、キリギリスの一言が加えられています。
 この話の出典はわかりません。


【結末3】キリギリスは餓死しない

 冬になって、穀物が雨に濡れたのでアリが乾かしていますと、おなかの空いたキリギリスが来て、食べ物をもらいたいと言いました。
 さあ、遠慮なく食べてください。元気になって、ことしの夏も楽しい歌を聞かせてもらいたいね・・・・キリギリスは、うれし涙をポロポロこぼしました。
     波多野勤子監修・『イソップ物語』 小学館

 1934年にウォルト・ディズニーが制作したアニメでは、「アリが食べ物を分けてあげる代わりにキリギリスがバイオリンを演奏する」という結末になっています。


 【結末1】のお話では、アリの生き方が推奨されているようです。
 【結末2】のお話では、アリの生き方を蔑んでいるように思えます。
 【結末3】のお話では、アリの生き方を推奨しつつ、キリギリスの生き方も認めているように思えます。


現代流「アリとキリギリス」

 現代流「アリとキリギリス」では、アリは過労死したり、あるいはリストラされて貧しい生活を強いられ、キリギリスは歌やバイオリンの才能を認められて大金持ちになった、というお話があるそうです。

 でも、そのお話をそのまま信じるわけにはいきません。
 歌やバイオリンの才能を認められるキリギリスはほんの一握りで、大部分のキリギリスはアリよりも貧しい生活をしています。

 確かに、キリギリスのようにアルバイトをしながら夢を追いかけても、夢が叶う可能性はかなり低いのが現実です。
 才能があっても上手くいくとは限りません。


 アリでも駄目、キリギリスでも駄目というのでは、どうしたらいいのでしょうか。
 私たちは行く道をまちがえたのでしょうか。

 都会へ都会へと走ってきて、気がついたらひとりぼっちになっていました。
 大家族の暮らしを捨て、都会で核家族をつくって幸せを得たつもりでいたら、家族はそれぞれ別の道を行き、一緒に歩くことはありません。
 私たちはどんな幸せを望んでいたのでしょうか。

もう一度アリからやり直してみようか

 昔版「アリとキリギリス」を読んで、もう一度アリからやり直してみようかと思いました。
 たとえ低賃金でも、家族が肩寄せ合い、協力しあって一緒に暮らせたらどんなにいいかと思いました。

 昔の大家族の頃は貧しくて、家族みんなして働いていました。
 核家族化が進むなかで、家族は別々に働くようになり、気がついたら家族はみな孤立していたというのが現状です。
 この辺りから何とかできないものでしょうか。

 まず、自分のことを好きになることから始めてみようと考えました。
 自分のことを好きになり、家族のことを好きになって、そこから歩き始めてみようと思ったのです。

 でも、それで大丈夫でしょうか。 

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