![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/146364549/rectangle_large_type_2_c4c4ac8cba2958216fe462e03cc321d9.png?width=1200)
「管理職は愉快です」復刻版 第3回
第1章 冬~初心忘るべからず
1節 やるべきことをやる②
校長の引継書
校長の引継書については、教頭のものとは引継ぎ事項が異なりますので、県立T高校長のときに作成した引継書の項目だけをお示しします。
教頭の引継書と同じく「4月当初のために」「4月当初の提出物」を大項目としました。
「当初はこれだけやっておけば大丈夫ですよ」と記してくれたN前教頭の思いやりが忘れられませんでしたから、引き継ぎました。
他に「連絡」「これまでの取組」「課題」を大項目としました。
【4月当初のために】
4月2日(月)にすべきこと
4月当初の行事
準備しておくべきことのまとめ
その他
【4月当初の提出物】
管理職緊急連絡先…県立学校課学事担当へ、ファックスで
諸会費集計表及び「T県高等学校一覧」「全国高等学校一覧」の原稿
【連絡】
パスワード等
校長室の金庫に保存されているもの
印鑑
データファイル
2007年度Bブロック県立学校におけるT高校の役割分担
T高校長としての充て職
【これまでの取組】
国旗国歌関係
入学式の日程変更
T市内4中学校との連携強化
生徒指導(頭髪服装、マナー、遅刻)の推進
ほめ励ますハガキの発行
T校だよりの発行
分掌組織の見直し
制服販売の見直し
修学旅行の下見
チャイム着席の徹底
新たな教職員評価システムについて
教職員との面談
2004~06年度の校長の学校経営方針
部活動の応援
教員と生徒による授業評価の試行
ミニマム・リクワイアメントの導入
授業観察
教育課程の見直し
学校評価懇話会の委員
学校評価懇話会
【課題】
学校評議員について
学習力向上策について
学校自己評価システムについて
新たな教職員評価システムについて
校内規定の整理について
総合的学習の時間の確立について
制服販売について
ほめ励ますハガキについて
A君の学籍について
駅伝大会の廃止について
高校生一人一役活動について
校内人事について
管理職候補者選考について
《心得4》私家版「教頭の職務」を整理する
さて、教頭の職務に話を戻します。
教頭の職務は多岐にわたります。
しかし、定型的な業務が多いので、慣れてしまえば効率的に処理することが可能です。
どの学校でも教頭は同じような業務をしていますので、私家版「教頭の職務」を作成しておくと便利です。
頭が整理されますので、業務をこなすスピードが格段と速くなります。
私家版「教頭の職務」は、引継書の「教頭の職務」がL市立L高校版であったのに対して、T県立高校版となっています。
それは、1999年度に県立J高校教頭であったO先生から譲り受けた「教頭の職務」を、2000年度に改訂したものだからです。
私家版「教頭の職務」の大項目(▼)と小項目(▽)は次のようになっています。
▼勤務時間などの管理
▽勤務時間の管理
▽臨時休業の承認
▼服務の整理
▽出張の承認
▽休暇の承認(病休について、産前産後休暇、介護休暇、週休日の指定、職務専念義務免除)
▼生徒の在籍管理など
▽転入学など
▽休学、留学、退学、懲戒処分
▽入学、進級、卒業
▼教育活動の管理
▽教育課程の管理
▽教育課程の実施
▽教育課程の評価
▼学校運営について
▽職員会議
▽校務分掌
▽入試関係
▼その他
▽教職員との関係
▽文書管理
この「教頭の職務」を作成したときと現在とでは、法令や規則、制度がいろいろと変更になっています。
ですから、このままでは使えませんが、私家版「教頭の職務」を作成するという姿勢は参考になると思います。
諸行無常…「教頭の職務」は変化する
ところで、2000年頃は、管理職が授業観察をすることに対して教員の抵抗感が残っていました。
教科書選定委員会で使用教科書の検討をするという仕組みもありませんでした。
十数年でいろいろなことが大きく変化したことがわかります。
今回、私家版「教頭の職務」(2000年度版)を読み返してとても懐かしくなりました。
諸行無常という懐かしさです。
実は、この諸行無常が愉快の元であると思っているのですが、そのこともいずれお話しすることにしましょう。
私家版「校長の職務」については、作成できずにきてしまいました。
どなたか、基本形をつくっていただけませんでしょうか。
《心得5》日常業務をしっかりとやる
日常業務は、教頭の基礎・基本です。
基礎・基本の力を身につけるために、今回、いくつかの心得を編み出してみましたが、こういう頭の整理も真剣にやれば愉快なものです。
当時、表計算ソフトを駆使して、さまざまなファイルをつくりました。
凝ってしまって、教頭1年目は日常業務の効率化に時間を浪費してしまいました。
2年目には楽になりましたが、優先順位が正しかったかと後で反省したものです。
そのときにつくったファイルは、報告・回答・通知文書一覧、年休取得一覧、部活動に関する実績簿、対外運動競技等に関する実績簿、教育業務連絡指導手当に係る実績簿、週休日の指定簿、週休日の年間指定一覧、公務に使用する自家用自動車登録簿、生徒異動一覧、入学試験志願状況変遷表などです。
8月までは事務処理に追われました。
この学校で自分にできること、自分の役目は何だろうと考えるようになったときには、夏休みも終わりに近づいていました。
私は日常業務を普通にこなせるようになるまでに5カ月もかかってしまいました。
しかし、日常業務という基礎・基本の力をじっくりと身につけたことで、さまざまなことに挑戦できる余裕ができたように思います。
気長に待ってくださった校長先生や教職員の皆さんに感謝しています。
学校によっては課題山積で、じっくりと基礎・基本の力を養う暇がないかもしれません。
苦情や事件に追われ、日常業務を自転車操業で処理するだけで、なかなか効率よくこなせるようになれないかもしれません。
しかし、長い期間がかかっても、じっくりと基礎・基本の力を養ったほうがいいでしょう。
あせってあれこれ動いても、実力がない時期には迷惑をかけるだけですから。
人は帰る場所を必要とするときがある
ところで、人は帰る場所を必要とするときがあります。
失意のときや落ち込んだときなどです。
そんなときは、目の前の小さなことに集中すると救われます。
教頭にとっての帰る場所や目の前の小さなことは日常業務でしょう。
日常業務をしっかりとやっていると、元気や勇気が湧いてきて、冒険の旅に出たり、無理難題に果敢に挑戦したりすることができるようになります。
T高校の卒業生たちに贈った最終講義ハガキの中に、こんな言葉があります。
【何をすべきかわからなくなったとき】
目の前の人を喜ばせることを考えよう
目の前の小さなことを一所懸命にやり遂げよう
そうすればやがて自分の夢や使命に辿り着く
教頭として何をすべきかわからなくなったときにも使えそうです。
教頭にとっての目の前の人とは誰か。
教頭にとっての目の前の小さなこととは何か、と考えればよいのです。
そこが、道に迷ったときの教頭としての帰る場所なのです。
道に迷う前の元気なときに、帰る場所を確認しておくとよいでしょう。
その帰る場所に住んでいる人は、日常業務をともにしている人に違いありません。
極意1は「やるべきことをやる」でした。
この当たり前のことができなかった私は、教頭としてのスタートが5カ月も遅れてしまいました。
しかし、それが現実ですから、受け止めるしかありません。
尾崎一雄さんのいう「疲れたら憩むがよい、彼等もまた、遠くはゆくまい」を噛みしめながら、ゆっくり行こうと思っていました。
実は、「やるべきことは何か」という問いに答えることは簡単ではありません。
教頭あるいは校長としてやるべきこと、家庭人としてやるべきこと、社会人としてやるべきことなど、さまざまなやるべきことがあり、やるべきことを見失うときもあります。
そんなときは、基礎・基本の日常業務のなかを探してみるとよいかもしれません。
当たり前の日常のなかに幸せもあるようですから。
(初出 2015年2月3日「内外教育」)
解説
《心得4》私家版「教頭の職務」を整理する
これについては、教頭になる前に整理しておくべきです。
私は勉強不足、準備不足でしたので、教頭になってから整理しました。
教頭になる前に整理し、教頭になってから修正するといいでしょう。
最近、管理職試験に合格することが容易になりましたので、試験のために「教頭の職務」を整理する必要性が薄れてきました。
でも、教頭になったとき、慌てなくて済みますので、整理しておいた方が良いでしょう。
「整理せよ」と言いましたが、「覚えよ」とは言っていません。
整理して、いつでも確認できれば良いのです。
法令上の根拠などは、必要なときには、覚えていても再確認する必要があります。
すぐに確認できるようにしておくことが重要なのです。
《心得5》日常業務をしっかりとやる
この心得は、【極意1】そのものです。
【極意1】やるべきことをやる
出発点は、【極意1】や《心得5》にあります。
疲れてしまったときや道に迷ったとき、失敗して落ち込んだときには、出発点や初心に戻ることです。
今更、出発点や初心に戻れないと思う人がいるかもしれません。
確かに、これまで築いてきた地位や名声を失うことは、断腸の思いでしょう。
でも、肩書など、いずれなくなるのです。
過去の栄光など、誰も見向きもしなくなるのです。
失ったものに固執するより、今、やるべきことをやることにしましょう。
日常の役目をしっかりと果たすことにしましょう。
その方が、愉快です。
生き生きとしてきます。
極意1や心得5は、仕事人生を終え、毎日がサンデーになった身として、心に迫る極意や心得です。
昔の自分に教えられています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?