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サビアンシンボルにおけるポカホンタス

ポカホンタスのたどった運命

サビアンシンボル 蟹座28度
「現代のポカホンタス」A modern Pocahontas.

ポカホンタスは16世紀末、1595年頃に生まれた実在の女性です。
数々の書物や、その名前を冠した地名も残っていて、いわば伝説的な存在になっています。

しかし近年になり、伝聞とは違い、彼女のたどった運命は過酷そのものである、という説が有力となってきました。

「ポカホンタスの洗礼」(1840年、ジョン・ギャズビー・チャップマン画)

ディズニー映画では、ポカホンタスはジョン・スミスと恋に落ちます。
しかし、実際の彼女にはそんなロマンスはありません。
1612年、植民地と部族の平和を保つための人質としてヴァージニア植民地ジェームズタウンに囚われ、英語を学ばされ、キリスト教に改宗して洗礼を受けさせられ、名前まで変えられたうえ、1614年、ジョン・ロルフという男と結婚を余儀なくされたのです。

1616年から1617年、彼女は植民地事業の「広告塔」として、はるか大英帝国に連れられ、君主ジェームズ1世とその家臣たちに謁見しました。
彼女はそこで「ネイティブアメリカンの姫」と紹介されました。
ポカホンタスは、「新世界アメリカ」の最初の国際的有名人となったのです。

直後の1617年、ロルフ一行がジェームズタウンへ帰る船旅の途中、23歳前後の若さで病気で夭折したポカホンタス。
しかし、彼女の死後、ジョン・スミスの武勇伝に美談として登場し、後世に伝えられるようになったことから、さらに伝説として語り継がれるようになります。野蛮な酋長から白人を救った、友好的なネイティブ・アメリカンの少女として。

彼女はアメリカ合衆国において重要な象徴的存在となり、彼女を巡る多くのロマンス小説が生まれました。
彼女の子孫は、名だたる著名人に連なる全米屈指の名家となりました。

しかし、美談のほとんどは、彼女が生まれたポウハタン族から「作り話」として全否定されています。


エリス・フィラーの思うポカホンタス

ポカホンタスの伝説が生まれてから約200年後。1925年、マーク・エドモンド・ジョーンズが、霊媒師のエリス・フィラーと共に行った「実験」から生まれたサビアンシンボルにも、ポカホンタスの名前が刻まれました。それだけでなく、サビアンシンボルには、インディアン(ネイティブ・アメリカン)がよく登場します。

1887年生まれのエリスは、インディアンをどう考えていたのでしょうか。
霊媒師として、マーク・エドワード・ジョーンズと共に「神秘主義」にどっぷり傾倒していたエリス。これはもりむらの私見ですが、シンボルを読み解く限り、彼女はインディアンを「神秘的で、生命の原初的・原始的なパワーを持ち、自然と共に生き、万物から多くの宣託を受けるシャーマニズムに支えられた偉大な先人たち」として捉えていたのでは、と思います。
エリス自身も霊媒師です。優れたシャーマンであるインディアン達に、憧れと尊敬を抱いていてもおかしくありません。

西欧的白人文化から自然回帰したいという彼女の強い思いが、シンボルのそこここに登場するインディアン、そしてポカホンタスに込められているかもしれません。エリスにとってポカホンタスとは、白人文化に一石を投じ、違う価値観を繋げる勇気を持った、敬愛するネイティブ・アメリカンの少女なのだと思います。

20世紀初頭に生まれたサビアンシンボルは、その当時の「白人系アメリカ人」であるエリスのフィルターを通して生まれています。
当然ながら、現代とは違う価値観や偏見がそこには反映されています。
そのまま翻訳すると現代の価値観から乖離するものも多くありますが、なるべく彼女の「真意」を汲み取り、解釈することを私は心がけています。

森の回廊を読まれる時も、時代背景を加味して読んでくださると幸いです。


参考サイト


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