コーラに救われた?海苔

幸か不幸か…

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きっかけは

「コーラ」

でした。

私が昔から飲めない、

あのどす黒くて

シュワシュワなドリンク。

「コーラ」

も確か、当時、

薬剤師であったペンバートンさんが

水と炭酸を間違えて薬品に加えたことで

できた偶然の産物だったんですが、

その偶然の産物「コーラ」によって

これまた偶然に

開発されたものが

海苔の養殖に使われる

「酸処理剤」でした。


当店で扱っている

海苔の生産者さんと、

先日お話する機会がありまして、

いろいろと海苔の酸処理に関しての

お話を伺いました。


自然食にこだわっている方なら

誰もが知っているであろう、

海苔の酸処理。

その多くの人が、

「海の農薬」

と呼んでいるもので、

実際、私もそう思っていました。


そもそも海苔養殖に使われる

「酸処理剤」とは、

海苔が酸性に比較的強い事から

その薬の中に海苔網を約7分間漬け込み

海苔網に付着している

酸性に弱い雑菌を駆除する、というもの。


この酸処理剤を使われる

きっかけになったのが、

実は、

「コーラ」

なんです。

昭和30年代後半から、

海苔養殖業が新しい技術の普及に支えられて

安定的に大量生産が可能になりましたが、

海苔に付着し、病気を起こしたり、

品質を低下させる雑藻類や細菌類の除去が課題となっていました。

昭和52-53年、

千葉県の海苔養殖業者が

それらの付着防止や除去する種々の実験を行っていた中で、

偶然にコーラの添加が雑藻である

アオノリの混生防止効果があることに気付き、

コーラの成分を研究した結果、

クエン酸などの酸性のものが、

駆除に適していることがわかり、

今の酸理剤(PH2)が開発され、

用いられるようになったそうな。

(海はPH約8)


この、酸処理(活性処理とも言う)

という名前が

「農薬みたいで危険らしい」

となってしまったようです。

実際は、それをかぶったら

皮膚が溶けるとか、

吸ったら癌になるとか、

強烈な農薬とは違って、

コーラに手をしばらく突っ込んでも 

溶けることもなければ

癌になることもないのと同じで、

それくらいの程度のもの、だそうです。

酸=悪

や、農業でいうところの

慣行栽培=悪

が広まったのは、

多分、世の中の

「自然食品店」

からではないか、と推測。


酸処理をするのが当たり前になっている

ほとんどの海苔養殖者さんは、

酸処理しない海苔にニーズがあるという事は

知らないこと。


自然食品店での集まりなんかでは、

慣行栽培や薬品を使って生産するのは

よくない、悪いことだ、と言われる

場合もありますので、そこには、自然栽培や

有機栽培の生産者しかいないので、

反論する人がその場にいない訳です。


そんな欠席裁判的な光景を見ると、


「農薬を使ってないものを食べたいというニーズもあり

 そうじゃないニーズもある」

「圧倒的にそうじゃないニーズの方が多く、

 それでなければ生産者が食べていけないという現実がある」

「慣行農法があったから、多くの人たちが食べ物に

 困らずに戦後、生きてこられた背景もある」

「海外輸入に頼ると、それはそれで

 安全かどうかわからない」


と、色々なことを想う人もまれにいる訳です。

そんな中、私とお話した彼は、

「どっちのニーズにも応えたいと思う」

と、酸処理無しと、有りの海苔、両方を作られるという

今のスタイルになられたんですね。

海苔って、畑みたいに

「ここは、無農薬」

「ここは、慣行栽培」

と分けるのではなく

一番摘み、と言われるものは

(お茶でいうと初摘み)

酸処理回数が元々、少ないため、

(酸処理は農薬のように何回もするそうです)

比較的、酸無しでも作りやすいそうで、

一番摘みだけ酸処理をせず、

摘みとってから以降、何回も酸処理をして、収穫するそうなので

畑と違って、分けるのは難しくないそうです。


海苔は、お茶の葉っぱと同じで、

何回も、摘めるのですが、酸処理をしないと

病気が増えたり、摘める回数が減るのだそうです。


そう。


酸処理ができるようになって、

大量生産ができるようになったんですね。

それまでは青のりや病害対策は、

潮の満ち引きを使って

「乾燥」

を行ってました。

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これは天然の海苔がそうなんですが、

乾燥に海苔は強く、病原菌は弱いことから、

意図的に乾燥時間(海から海苔が出る時間)が

長くなるように考えて網の位置を設置。

乾燥時間が長いことで、海苔に甘みが出るんですね。

例えば、これからの季節だと、

トマトなんか、水をやらずに育てると、あま〜い味になるんですが、

それと同じですね。

わざと水分枯渇状態を作るんです。

そのことで、病気しにくくなるし、美味しくもなる。

一石二鳥なのです。

ただ、天然海苔と同じように量が採れないので、

酸処理が爆発的に広まったワケです。

また、

「酸処理していない海苔は美味しい!!」

と言われていますが、

酸処理していないから美味しい、のではなくて、

酸処理するのとしないのとでは

そもそも作り方が違うから、味も違うんですね。

基本、海につけっぱなしの酸処理での作り方でも、

乾燥させる回数を増やせば、それなりに美味しい海苔になるそうです。

が、海苔の等級って、黒光りしてて、味的にも

美味しくないものが高いらしいんです。

香りと味がおいしさを決めるものなのに、

取引基準はそこじゃないんですね。


ちなみに、あふれんばかりの患者が

詰め込まれた収容所みたいな病院では、

いろんな流行病が蔓延するように


海苔を密集したところで養殖すると、

病害が出やすい、というのは

なんとなくイメージできるかと思いますが、


北海道のサロマ湖というところは、

密集せずに作れるので、病気も出にくく、

養殖者さんは「酸処理」

という存在すら知らなかったそうですよ。


酸処理剤もケミカルなものには

変わりなく、

「酸処理=海を汚している」

と養殖者さんも感じておられている部分でもあり、

経費もかかる!体もきつい!時間もかかる!

作業だけれど、一度、使用を減らして

失敗した事があるので

そういうリスクを考えると、すぐには止められない。

でも、

「酸処理は減らしていきたい」

と。


彼の作る海苔は、とっても使いやすいし、

しかも磯香りがプーンとしてご飯に乗っけると

とってもお箸がすすむんです!!


オリーブオイルと絡めたパスタも

最高!!!

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スペルト小麦とパレスチナオリーブオイル、

古都さんのベーコンでつくってみたら、

最高!!


話は戻って…


私はそんな素敵な作品を作る生産者さんが、

「収量が減っても大丈夫!」

と、安心して、使いたくないモノを

使わずにモノ作りに没頭していただける

環境作りのお手伝いをしたい!

と改めて思うのでした。

だからいろんなところに、営業するよ!!


無酸処理の養殖が他の人にとっても、

当たり前になるように!

できる人ができることをすれば良い!

役割なんて、決められるモノではなくて、

自分で決めるモノですよね。


昨年、酸処理剤が有明海異変を

引き起こしている原因だと、その使用を認めている農水省を

有明海4県の漁業者900人が訴えています。

実際のところ、酸処理剤だけが原因かどうかはわかりませんが

たくさんいる養殖者さん一人一人が

最初の一回だけでも酸処理をやめたら、

それだけでも海は変わっていくかもしれない。

そもそも、海苔というのも、牛肉なんかと同じで、

昔はそう頻繁に食べられるものではなく

貴重なものだったけれど、

(摂るのが冬で、大変ですしね)

今は消費者がたくさんいるし、求められるから、

大量に生産する必要性が出てきたんですよね。


コーラのおかげで、養殖者さんの手間や

海苔の病気の心配は減ったけど、

もしかしたらその分別の手間が増えて、

他の海の仕事をする人たちに

言いがかりをつけられるような

「環境破壊」の一因として責められたり、

人によってはそのことをわかっていながらも

生活のために否応なしに薬を使っている人もいる。


何でもそうですけど、生産者の現実や

いろんな背景を知らずにやみくもに善悪をつけるのは、

本当にナンセンスなことやなと改めて実感した、

今回の対談でした。

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