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救急要請の実態

私は救急隊経験者です。
これから書くことは、何かの統計に基づいたものではなく、出動に基づく体感です。
なので、根拠はありません。
ただ、救急隊経験者なら、共感してもらえるかな、と思って書きます。


あなたは、救急車を呼んだことはありますか?
どんな時に救急車を呼びましたか?
または、どんな時に救急車を呼ぼうと思いますか?

私の体感では、救急車を呼ぶ人のうち、5割弱は軽症患者です。
たしか、統計では3割~4割程度だったと思いますが、救急車で病院に行った際は基本的に中等症以上見込みに判定されることが多いので、実際は軽症患者の割合はもっと増えるのではないかと思っています。

ここで、軽症とは入院を要しない者のことで、他には、中等症(入院して3週間以内に退院見込み)、重症(3週間以上入院見込み)、重篤以上(生死をさまよう状態)があります。

基本的には、救急車は中等症以上の患者が対象で、そのため救急病院と言われる、入院施設のある病院に搬送します。

だから、「救急車の適正利用を!!」なんてポスター等を見たことがあるかもしれませんが、要は不適正利用が多いのです。
つまり、軽症患者が救急車をよく呼んでいるのです。


「お腹が痛い」「めまいがする(目を閉じたら介添え歩行可能)」「発熱で倦怠感がひどく動くのがしんどい」「腕が折れたかも」「交通事故で、首が少し痛む」「鼻血が止まらない」など。

このワードは、本当にしょっちゅうです。


救急用語でウォークインと呼ばれる、自力歩行可能で容態も安定している人が119番します。
しかも、たいがい、付き添いがいます。

いつも、なぜ自分で病院に行かないのだろうか?と思います。

こんなことを言うと、「不安だから119番したんでしょうが!もし、何かあったら責任取れるの!?」と言ってきます。
だから、救急隊は、どんな患者にも優しく丁寧に対応し、基本的には病院搬送の方向で話を進めます。

これは、救急隊が優しいからではありません。
病院搬送した方が、結果、楽だからです。

ただ、はっきり言わせてください。
軽症患者を搬送する代わりに、救える命を奪っている可能性があることを。

例えば、本当に救急車が必要な、心臓が止まった患者がいたとします。
救急車の到着時間は、平均5~8分です。
しかし、もし心臓が止まった患者に対して、適切な心臓マッサージをせず5分以上放置したら、蘇生は非常に困難です。
だから、バイスタンダーと呼ばれる、救急隊が来るまでに、通報した人含めて近くの人が心臓マッサージをすることが大切なのです。

なのに、軽症患者対応中なので、救急隊の到着が遅れて、10分以上到着が遅れたら、心臓が止まった患者は、残念ながら蘇生はほぼ無理です。

これは別に大げさな話ではなく、リアルなのです。


救急隊は公務員なので、別に金銭的な利益を求めて活動しているわけではありません。
救急隊のやりがいは、ただ一つで、本当に救急車が必要な患者に対して、適切な処置、搬送を実施して、早い社会復帰を促すことです。

軽症患者を何人搬送しようが、ありがとうと言われようが、正直、目的とはずれています。

お願いですがら、ご家族含めて、適切な救急車利用を促してください。
これは我々、救急隊のためではなく、本当に救急車を必要としている人のためです。


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