カープダイアリー第8485話「森下暢仁の初夢はユニコーンに挑む?」(2024年1月6日)

マツダスタジアム隣接の屋内練習場に小気味の良いキャッチ音が響いた。室内温度は高くない。そんな中でも回転のいいボールを投げないと、そうはならない。年明け初めてのカープ公開練習。キャッチボールを披露したのは九里と森下だった。

「開幕投手になったことがないので、しっかりアピールして、そこで投げれるようにやってきればいいかな、と思います」(九里)

「そこをやる!っていう意識を持って、キャンプに入っていきたいなと思います」(森下)

質問者が「開幕投手」についてたずねるから、ふたりの答えも当然そうなる。黒田球団アドバイザーに並ぶ5年連続開幕投手を務めた大瀬良の“影”はもうない。大瀬良と同期で11年目を迎える九里と、5年目を迎える森下のガチンコ勝負という構図だ。

DeNAとのクライマックスシリーズ、ファーストステージ第1戦。延長十回、6番手でマウンドに上がった九里には“オレは便利屋じゃないよ”の意地がある。球団が将来を見据えて森下に特別の配慮を働かせそうなことも十分に予想できる。だからこそ負けるわけにはいかないのである。
 
森下は森下で“覚醒”間近となっている。日本時間の2023年12月15日朝、が大谷翔平ドジャース入団会見だったが、同日午後にあった契約更改後の会見では「大谷選手より多くいただきました。1016億円です」と切り出した。
 
この言動をジョーク!と簡単に片付けない方がいい。一度しかないプロ野球人生でどこまで上り詰めることができるか。右肘と相談しながら投げた不完全燃焼シーズンをバネにして、“本気”でメジャーの舞台を狙うフェーズへ…ステップアップする時がやってきた。
 
その手始めとして、あすから「マエケンさん」の下での自主トレに入る。学ぶべきことは山のようにある。メンタル面、右肘のケガからのリカバリーのノウハウ、変化球と真っすぐの精度の上げ方、打者に対しての心構え、オプションとしてバッティング…
 
NHKでは2023年12月30日(初回放送)に「ワースポ×MLBスペシャル ぜんぶ見せます!激闘2023」をオンアエした。ゲストは武井壮さんと、デトロイト・タイガーズ移籍が決まった前田健太だった。
 
大谷翔平についてコメントを求められた前田健太は最後に「対戦する相手ですから…」と話してスタジオを現実の世界に引き戻した。「ユニコーン」の話題はややもすれば夢物語になりがちだが、そうじゃない。
 
広島に9年、ロサンゼルスに4年、ミネソタ州ミネアポリスに3年。計16年のプロ生活を送ってきたマエケンの人となりは、10代のころとそんなには変わっていないように見える。稼ぐ力は大きく変わっても、野球と向き合う姿勢は一緒、ということなのだろう。
 
新天地デトロイトでも18番を背負う「マエケンさん」は森下にとっては憧れの存在…。否、憧れていてばかりいてはその背中には追いつくことができない。「エースの条件」を学ぶための最高の教材とともに過ごす時間が、区切りの5年目のシーズンを加速させることになりそうだ。


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