カープダイアリー第8253話「2発を浴びて0対4完敗…子どもの日にマツダスタジアムで先発することの意味」(2023年5月5日)

今季最多、3万1193人が詰めかけたスタンドには風になびくこいのぼり。大勢の子どもたちが楽しそうにコンコースを巡ったり、買ってもらったグルメにぱくついている。

大型連休終盤、笑顔溢れるコイの季節。だが、肝心のグラウンドには浮かない表情のふたりがいた。

新井監督は顔に出る。無論、出すまいとはしているが根が正直過ぎる。もうひとりは4月6日、大雨のマツダスタジアムで5回完封勝利をやってのけた遠藤。そのあと3試合続けて6イニングすら投げることができず、いずれも3失点、3連敗。

その“弱気”が午後2時1分のプレーボールと同時にマウンドでの立ち姿に滲んでいた。

首脳陣は何とか6年目の右腕に独り立ちしてもらおうと、その背中を押してきた。この日はこれまでの曾澤から磯村にスタメンマスクをかぶらせた。

だがその立ち上がりから怪しげな空気がPC間に漂った。ベンチの指揮官の顔は雨予報だった広島の空以上にみるみる曇った。

不安的中。立ち上がりで二死からノイジーに左前打され大山に左中間スタンドに叩き込まれた。いずれも真っ直ぐ。自慢のスピン球が棒球になった。

三回もいっしょ。快音が4度続いた。中野とノイジーは中飛で済んだが大山に左前打され、続く佐藤輝明にはレフトスタンドに運ばれた。


2発目は防げたはずだ。インハイに弱点があるのにアウトハイに真っすぐを投げた。曾澤のミットとは違うコース…


三里側パフォーマンスの溢れんばかりのタイガースファンは広島まで来た甲斐が十分にあった。しかも大量援護を受けるのは開幕から3戦全勝中の大竹…

ゆえに4失点はもはや致命傷であり、遠藤には三回の打席で代打を送られた。

試合開始から1時間余りで放心状態となり肩を落とす、その横顔から見て取れるのは負のオーラだけ…一軍ベンチに最もいらないものだった。

先週金曜日の東京ドームで、坂本に3ランを許してから中6日。どんな調整をして、どんな気持ちでこの日の阪神打線に挑もうとしたのか?

その前の登板では甲子園で大竹と投げ合い四回まで無安打に抑えたのに五、六回に二塁打2本に三塁打1本と簡単に崩れた。ただしこの時は真っすぐで大山を抑えていた。

だから、立ち上がり18球目に投じた真っすぐを、開幕から四番に座る主砲に狙われた。

先発投手はただ相手を抑えるだけ、がその役目ではない。みんなが後ろから見守っている。みんなで勝ってやろう、いい試合をしようというエナジーを唯一、相手を攻めることのできるポジションで発散する必要がある。

そんな姿はもちろんスタンドのファンにも伝わる。それがまったくないのであればローテ―ション投手の資格はない。

小さく見える66番のせいで打線も大竹に抑えられっぱなし。八回、二番手の石井の前にマット、磯村、代打羽月が連続三振に倒れたのも遠藤のせい、だ。

降板後の遠藤は「真っすぐが走らなかった」と言い新井監督は「いい試合を見せられなくて悔しい」と話した。

遠藤には指揮官のような記憶がない。小学生の時、父親とマラソンで広島市民球場へ行き、スタンドから見る選手たちの姿を自分に重ね、少年ソフトボールで豪快にかっ飛ばしたような実体験がない。

おそらく遠藤はローテを外されるだろう。

それは2月のキャンプから“みんな”で築き上げてきた今季の目玉のひとつが却下されることを意味する。シーズンを通して投げ切ってこそ、未来のエース。せっかくのチャンスを自ら放棄していては、仲間たちとファンの信頼を得ることはできないのである。

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