カープダイアリー第8230話「バンテリンドームナゴヤ2発被弾で連勝が止まった日」(2023年4月12日)

プロ野球開催時の収容人数は、およそ3万6000人。公式発表は二日連続の2万1000人以下となり、空席が目立つスタンドから温かい、そして大きな拍手がお立ち台の3人に送られた。

木下、アルモンテ、アキーノ。敵地のお立ち台コメントもまた傾聴に値する。

開幕からスタメンマスクをかぶり続けているチーム生え抜き、8年目の31歳は「福谷さんが先発して、前回ふたりでやられているんで、絶対やり返してやろうと試合に入りました」と威勢が良かった。

やり返す、といっても福谷が初回6失点炎上したのは3日前の横浜スタジアム、DeNA戦。自分たちの悔しさをぶつける、という意味か?中日バッテリーは学年ではひとつ違いだが、生まれは同じ1991年だから以心伝心なのだろう。

中2日でも初回から飛ばす右腕に対してカープ打線は序盤3回、パーフェクトに抑え込まれた。相手の気迫に押された感もあり、5連勝の勢いが萎みかけた。

と思った直後の四回、先頭の菊池が内野安打で出て野間も左前打で続くと秋山はストレートのフォアボール。中日バッテリーにとっては誤算続きとなり、一死から龍馬の適時打で2者が生還した。2勝目を目指す遠藤にとって貴重な援護点だ。

福谷vs龍馬。150キロの真っ直ぐがボールになったあとの3球目、低目へ落ちるボール気味のフォークも特殊な軌道が使えるバットにかかればヒットになる。

打たれた右腕は続くマットを抑えたタイミングで61球交代となった。

その裏、遠藤にすれば絶対にゼロに抑えたいイニング。一死一塁で木下を打席に迎えると、真っすぐボール、送りバントファウル、ファウル、ファウル、スライダーボールのあとの6球目に真っすぐを投じて右前打された。エンドランがかかって一、三塁。続く龍空の犠飛で1点差になった。

そして5回で93球の遠藤は六回、先頭のアルモンテに同点ソロを浴びて勝ち投手の権利を失った。

1勝目を挙げた前回に続いてバッテリーを組む曾澤が要求したのはインスラだったが甘く入ってアッパースイング軌道と重なった。高々と上がった打球に中日ベンチとドラゴンズファンが歓喜した。この日、ビシエドが登録を抹消され、四番アルモンテは今季2度目だった。

外野フェンス高4・8メートル、両翼100メートル。ホームランの出にくいドーム空間での一発は文字通り一発で流れを変える。

遠藤は気持ちを落ち着ける暇もなく五番細川にレフト線二塁打を許し、送りバントで一死三塁とされたところで交代を告げられた。

新井監督は前の打席で右前打した木下を警戒して、この厳しい場面に心境著しいアドゥワをぶつけるという選択をした。

その結果、木下の詰まった打球がライト前に落ちて勝ち越され、二死後には代打アキーノに来日1号2ランを左中間スタンドに叩き込まれた。

立浪采配、的中…

お立ち台のアルモンテは“出戻り”だから慣れたもので「いいホームランが打ててとても嬉しい」と話すと「ドラゴンズはファミリーみたいなもの、戻って来れて嬉しいです」と多弁だった。

アキーノはこの日のために用意していた「サイコーデース」を2度繰り返したが少し照れくさそうだった。

打ってもリードしても最下位に沈むチームに勝利を呼び込んだ木下は「終盤、なんとか我慢して、後ろのピッチャーも安定しているんで…」とも言っていた。

中日の勝ちパターンは先攻逃げ切り。福谷のあと6投手によるリレーに対してカープ打線はわずか1安打で四球もゼロだった。

前夜、秋山が九回に2点適時打を放った田島には八回、小園、坂倉の代打陣が4球で抑えられ、菊池はストレート見逃し三振。九回のR・マルティネスとの対戦は野間、秋山、ライアンともスプリットで料理された。

五回まで2対1と主導権を握りかけていたのに継投失敗で連勝ストップ。6連勝でマツダスタジアムに戻っていれば…はまさにたら、ればで、また本拠地でのヤクルト戦から出直しになる。

開幕戦3連勝のあと、中日、阪神、そして昨夜のDeNAに1敗ずつを喫した高津監督が、「絶対にやり返して…」とマツダスタジアムに乗り込んでくることはないとは思うが…(ひろスポ!取材班&田辺一球)


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