カープダイアリー第8309話「初の球宴出場決定、それぞれのドラマ…敗因は18度の初球見逃しストライク」(2023年7月5日)

「オールスターの試合がマツダスタジアムで行われることはすごく嬉しいですし、思い切ってストライクゾーンに投げていければいいかなと思います」

試合前、マイナビオールスターゲーム2023監督推薦選手に名を連ねた九里が笑顔でインタビューに応えた。プロ10年目で初選出された。嬉しいことがもうひとつ。出場選手登録日数が9年に達し、海外FA権の資格取得条件を満たしたのだ。

右腕はメジャーへの思いを“直球”で番記者らにぶつけた。米国在住の父親に直接その雄姿を見てもらいたいという思いもある。9月で32歳になるが、ここまでリーグ最多の92回を投げて2完投6勝3敗、防御率1・76だから夢を語る“資格取得条件”もまた満たしている。

午前中、強い雨の落ちたマツダスタジアムのマウンドには森下が上がった。その立ち上がり、3球目のストレートを先頭の島田に振り切られた。打球はライトポールを直撃。投手戦が予想される中でインパクトのある入りになった。

続いて雨上がりのマウンドには阪神先発の大竹。九里と同じく監督推薦で「小さいころからテレビで見ていた」夢舞台への”招待状“が届いた。

2017年育成4位でソフトバンクに入団した左腕は今年で6年目。現役ドラフトで請われてやってきた虎の穴で技を磨き、ここまで11試合6勝1敗で、しかも対カープは2勝無敗、防御率0・44。3度目の対戦となった5月20日の甲子園では森下と投げ合い7回無失点と互いに譲らず、スコアボードにゼロが並ぶ中、九回に森下翔太が好敵手からサヨナラ打を放つシーンをベンチで見届けた。

過去の数字から森下はもう1点もやれないと考えただろう。だが三回に先頭の島田を歩かせるとそのあとの連打にレフト龍馬のゴロ捕球ミスが重なり2点目を許した。さらにそこから無死満塁。顔から噴き出す汗を拭おうともせず後続を断った。

対する大竹は同じリズムで投げ続けた。そうさせたのはカープ打線で結果的には5安打しか打てず0-2負けとなった。

打者31人で初球ボール球は7度しかなかった。逆に18度は見逃しストライク。ほとんど阪神バッテリーが主導権を握っていたことになる。

過去の対戦も踏まえて打線には右左を分散させた。

セカンド菊池
ライト野間
センター秋山
レフト龍馬
サード田中
ファーストマット
セカンド曾澤
ショート小園
ピッチャー森下

3安打を放った龍馬はすべて初回のストライクを見逃したあとの3球目をヒットゾーンに弾き返した。

逆に秋山は4タコに封じられた。真っすぐとカットボールに苦戦させられていずれも4球以内で片付けられた。

5年ぶりに五番に入った田中広輔は初回の二死一、二塁でアウトローいっぱいのカットボールを見逃して三振。四回の一死一塁ではやはりアウトローの真っ直ぐを引っ掛けて4・6・3の併殺網に引っ掛けられた。

その田中広輔が意地を見せたのが七回だった。一死一塁で初球をセーフティバント。一、二塁として反撃のお膳立てをした。

しかし続くマットはフルカウントから低目の真っ直ぐに手を出してファウルのあと、アウトハイのチェンジアップを打ち上げてインフィールドフライに終わった。

第1打席ではインロー→アウトハイ→インハイ→アウトローと攻められ空振り三振。第2打席は2ストライクまで見て3球目、高目のボール球に空振り三振。きっと頭の中が混乱したままで、フルカウントから四球を選ぶという選択肢はなかったのだろう。

続く曾澤は過去2度の対戦で5の3だったがこの日は三ゴロ、遊ゴロで第3打席を迎え、インローのストレートを空振り三振。ストレートとは言っても球速は140キロ

前夜13安打の猛攻で“ベストゲーム”を後押しした打線が一夜にして完封された。31人目は4の4を狙った龍馬。インローの真っ直ぐを逆方向に打ち返し、角度がつかずサードライナー。プロ初完封で最後に派手なガッツポーズを決めた大竹の首筋には、うっすらと汗が滲む程度…だった。

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