悪徳大臣(略)8

体調を崩している。

もう一度言おう。

“私”ジョセフィーヌは体調を崩している。

何故か?

王の側妃候補に名前が上げられていることを知り、悲観した娘がこの世から消えて無くなろうとしたけれど、一命をとりとめた。

身も心もボロボロなのに、養親の公爵夫妻に心配をかけた、と作り笑顔でどうにか暮らしているのだ。


なぜにジョセフィーヌ嬢は王の側妃候補になりたくなかったのか。


それは簡単だ。


王と正妃の仲は非常に険悪で、同じ床に入るのさえお互いに拒否している。

そうなると絶対に子供はのぞめない。

王としては跡継ぎは必須。

なので、別の女に産ませればええじゃないか、とそういうのは多々あることなので、早々に貴族の娘が側妃に差し出された。

それで跡継ぎが産まれれば話は早かったが、一年もしないうちに、第一側妃の突然の事故死。

次に王宮にあがった娘は王のお手つきになる前に倒れ、そのままこの世を去った。


こう続くと、誰かが側妃が邪魔で消しているという噂が流れ、それからは側妃候補に名が上がった貴族の娘たちは外出を控えたり、他の縁談を進めたりしているらしい。


実際、この事件については誰かが影で動いてるのは確実だ、と元悪徳大臣だった“私”は思う。


一応、まだ投獄される前に調べたが、最初の側妃を葬り去ったのは第二側妃になるはずの娘の関係者だった。

そして、その娘を毒殺したのは第一側妃の身内だったようだ。


側妃であろうと跡継ぎを産めば、妃の実家はこの国で絶大な権力を手にできるのだ。


魑魅魍魎がうごめく王宮に入る、というのはそういうことなんだ。


有象無象のやつらでも、正妃さまには手出しはできない。

なぜなら正妃は龍族の娘。

龍の一族を敵に回せば、この国など、龍の咆哮一つで終わりを告げるからだ。

王もわざわざ龍族から后を迎えたのに、結婚式前に大喧嘩して、仲違いするなど大人気ない。

正妃と陛下が仲直りしてくれればよいのに、と思案を巡らせていたものだ。