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フロンティアに挑む Vol.1


今回取材させていただいたのは、経済学部4年の片岡慶一郎さんです。
片岡さんは経済学部の山下ゼミに所属されており、3年次にゼミ生の3人で一般社団法人Coを設立されました。
この記事では、現在行われているカーボンクレジットなどの脱炭素事業や、片岡さんが法人を設立するまでの経緯についてお伝えしていきます!

Vol.1では一般社団法人Coの活動と、その中で感じるおもしろさを紹介します。


先行事例のない活動たち

槇尾:
一般社団法人Coは現在どのような活動をされていますか。

片岡さん:
活動には、事業部門と研究部門の2つの軸があります。事業部門についてですが、農業分野、水産分野、自治体連携と3分野での活動実績があります。

活動の中心である農業分野では、主にお米農家さんと組んで、カーボンクレジットを創出し、それを企業に販売するということをしています。カーボンクレジットとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出権を取引する仕組みのことです。現在は、お米農家さんにメタンガスを削減する取り組みを行ってもらい、その削減分を我々がクレジット化するといったことを行っています。これにより、農業の環境面の価値を可視化し、マネタイズにつなげることができます。

次に水産分野では、日本初の取り組みとして、漁師さんと海洋プラスチックのリサイクルを行うREMAREという会社と組み、クレジットの創出を行っています。従来は、漁師さんたちが漁で取れたプラスチックごみをわざわざ産廃処理費用を払って埋め立てたり、あまり大声では言えませんが野原で焼いたりしていました。また、海岸にプラスチックが流れつくのですが、それを回収するにはかなりの労力が必要で、回収のインセンティブもありませんでした。そこで三重のREMAREさんと協力して、プラスチックごみを集めれば集めるほどお金になるという仕組みを作ろうとしています。具体的には、今まで環境に悪い方法で処理されていたプラスチックごみを収集・リサイクルする取り組みに対して、クレジットを創出しています。これにより、漁師の方々へのごみ収集の対価を払うことが可能になるだけでなく、海洋環境の改善やプラスチックのリサイクルの推進につながります。

3つ目ですが、国立市と一橋大学で連携して、いろいろな実証実験を行うということを考えています。実は国立市と一橋大学には連携協定があるのですが、今まで1回も使われたことがありません。そこで私たちが、国立で実証実験をやりたいという学生と共に新たな活動をできたらなと考えています。そのキックオフという訳ではないですが、2月8日には連携協定を初めて活用した事例として環境分野に興味がある学生と、市役所の職員が国立市の環境政策について考えるワークショップを行いました。ワークショップでも取り上げられたのですが、今あるアイデアでは、昼間利用者が少ない「くにっこ」というコミュニティバスを貨物輸送にも使えないかと考えており、その実験をやってみたいなと。

槇尾:
今まで先行事例がないような取り組みをたくさんやられているんですね。

事前準備不可、だからおもしろい

槇尾:
活動の中で課題はありますでしょうか。

片岡さん:
やはりネットで調べても正しい情報がなく、事前準備不可能なことをやっているので、手あたり次第取り組んでいるものもあります。壁は厚いですが、可能性も感じています。国立市との活動での課題は、実験を行いたい学生がまだいないことですかね。
またカーボンクレジットでは、クレジットの質、法整備の課題が大きいです。現状日本の大企業では、日本産のクレジットを買うより海外のクレジットを買う方が多いです。これは日本のクレジットを含めた脱炭素施策が不十分で、プレゼンスが低いことが原因です。そこでもう一つの活動軸である研究部門で、クレジットの質向上など様々な研究を進めています。具体的にはArcheda(アルケダ))という会社と連携して、人工衛星を使って農地のモニタリングを行うこと等があります。さらにカーボンクレジット研究の延長で、生物多様性をクレジットにすることも研究しています。まだまだ未確立の新手法ですが、今後発展する分野であると考えています。

槇尾:
ありがとうございます。そんな中で活動のモチベーションは何でしょうか。

片岡さん:
やっぱ1番はおもしろい。まずカーボンクレジットとは、今まで経済合理性で出来なかったものに経済合理性をつけたものです。外部不経済の内部化とも言い換えられますね。クレジットを用いることで農家と企業の間に新しいお金の流れをつくることができます。またクレジットを取り巻く他の仕組みの整備も進んでおり、日本も2023年からGXリーグという民間企業向けの排出量取引制度を打ち出し、2028年あたりで炭素税の導入も検討されています。日本の脱炭素政策は始まったばかりです。そこで私たちの活動が政府の取り組みないしは制度に影響を与え、ルールメイキングに携わる可能性があるのが面白いですね。あと取り組みを行う中で毎回新しい学びがあるのもおもしろいです。

加えて社会的意義も大きいところもモチベーションです。おもしろい活動に加えて、これから世界で必要な脱炭素について第一線で活躍できます。

槇尾:
日本を変えることも夢じゃない取り組みですね。また、環境保全という経済発展とは相容れない概念を両立し得る手段として、カーボンクレジットは魅力的だと思いました。

片岡さん:
そうですね。さらにカーボンクレジットは新しい分野なので、難しい反面、学生でも参入しやすいとも言えます。大学1年生の事前知識のない状態でも、すぐにキャッチアップしていけるような分野です。
更に、脱炭素という取り組み自体が絶賛研究中の分野で正解はありません。むしろ失敗にも価値があると言えます。だからやってみることが大事です。

一次産業の農業と超大手企業の両方と関わる経験をしたい。
農業の実状を知り、発展に関わりたい。
脱炭素の第一線で活躍したい。
国立を舞台に活動したい。
何かに熱中したい。
とりあえず何かやってみたい。

そんな人が私たちの活動に興味を持ち、共に活動したいと思ってくれたらありがたいです。

一般社団法人Co (co-carbon.jp)


Vol.2 では、一般社団法人Coを設立されるまでの経緯についてお聞きしています!


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