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女ひとりで楽しむホテルステイ①

30代も半ばになってから、ラグジュアリーホテルに泊まることを一種の自分のリセット方法としている。巷でもニューノーマル時代の新しい楽しみ方として話題になった。SNSでもよく見るし、モデルやインフルエンサー、業界人などがVlogにしていることも多く、流行っていると感じる。ただ、マシュマロなどでたまに「一人でも楽しめるのか不安」といった声をたまにいただく。全然余裕で楽しめるし、むしろ私と似た感覚を持ち合わせているだろうフォロワーの皆さんには同じ楽しみを味わっていただきたい。と思い、noteに書くことにした。長くなるけどよろしくね。

私はいつも、せっかく泊まるならとクラブラウンジがあるエグゼクティブフロアを好む。エグゼクティブフロアは、主にホテルの高層階に数フロアを設けており、ラウンジでのチェックインアウトや一日数回のフードプレゼンテーション、夜のカクテルタイムにはお酒が無料で楽しめる。また施設内のプールやスパ利用が付いてくることが多い。

まあ、宿泊費は高い。通常階の宿泊に比べれば、総合的にコスパはいいのかもしれないが、私クラスの人間の大人の遊びにしちゃ、やや背伸びしている感じは否めない。だが、思いっきり背伸びをしなきゃ、30代も後半に差し掛かった限界OLの、この凝り固まった謂れ無い将来への不安感、焦燥感を拭うことはできない。必死に働き、せっせと節約し、エグゼクティブフロアで金持ちごっこをする。少しでも宿泊費を安くしようと平日に有給休暇を取って、ぼっちアフタヌーンティーを楽しむ女一人。割と空いたラウンジで聞こえてくるのは、きっと会社勤めなどほとんどされたことがないだろう、平日にも自由な時間がある富裕層マダムのマウント合戦だ。孫が都内有名私立幼稚園に合格したらしい。こういう次元の違う話が聞こえてくるのも、また金持ちごっこの一興である。東京タワーとスカイツリーどちらも望めるラウンジで、アフタヌーンティーの三段をすべて食べつくし、昼間からシャンパンをいただく。うーん、正直、無双感がすごい。傍から見れば、虚しさ大爆発かもしれないが、全然気にならない。男性や女友達と来ているわけではないので写真うつりも、自分がこの場所で映えているのかも、気にする必要は無い。ウエルカムシャンパンのおかわりを持ったホテリエから、「この後スパのトリートメントをご予約いただいておりますので、お荷物をお部屋へお入れしておきますね」と申し出がある。行き届いた心遣いに、お姫様になった気分だ。

ひとしきりラウンジでアフタヌーンティーを楽しんだ後、スパへ向かう。ホテルスパも、都内の一般的なサロンの平均価格からしてみれば少し値が張る。ただ、ほとんどの別の宿泊者と顔を合わせることもなく、施術も20平米ほどの個室だったりする。場所によるが、前後にかなり空き時間を設けているらしく、ウエルカムドリンクもアフタードリンクも着替えもゆっくりで構わず、結局予約した施術時間より1時間ほどオーバーする。セラピストの方もラグジュアリー接客はお手の物で、気づいたことをわざとらしくなく褒めてくれる。使い古した低反発枕のようなぺっこりへこんだ自己肯定感が、だんだん通常の形に戻っていくのが分かる。ありがたい。この気持ちは気恥ずかしさでも、驕った感情でもなく、感謝だ…。癒しの時間はもちろん、自己肯定感をお金で買っているし、それに対する対価がきちんと得られている、ありがとう、きちんと仕事をしてくれて…。ありがとう、今仕事を放りだしている私を受け入れてくれて…。

スパでのトリートメントを終え、部屋に入る。整えられたリネン類、少し涼しくしてある空調。高層階は日が入りやすいため、強めに冷房を入れないと暑くなることが多い。どういう仕組みか分からないが、バスルームに入ると自動でガラスが全部スモークになる。普通に家もこれにしてほしい。また、一部屋1泊4~5万を超えてくるホテルになると、ドライヤーがレプロナイザー 7D Plusになったり、アメニティは伊勢丹ビューティアポセカリーなどに店舗を構える有名スパブランドになったりする。なんちゃって美容垢としてはテンションが上がる。

昼間からシャンパンを嗜み、スパで自己肯定感を上げてもらい、ぐにゃぐにゃふにゃふにゃになった心身を携えた、堕落した中年のお姫様のお昼寝タイム。今、何時なのかも良く分かってない。何も予定がないので気にする必要もない。あ、でもカクテルタイムが終わるまでに軽食してもうちょっとシャンパン飲もうかな。少なく見積もっても天最高である。たまに会社携帯が鳴っているが、聞こえない。むしろ、気持ち的にはそもそも鳴っていない。着信音を鳥のさえずりにしておいてよかった。今、こちとらお姫様なので。限界OLの私はこの世に存在しないので。

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