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「日系四世の更なる受け入れ」がはじまろうとしています。

法務省が日系四世の更なる受入れについてのパブリックコメントを今日、2月21日まで受け付け中です。

もともと現行制度では、「定住者」の在留資格で在留する三世等の実子が未成年かつ未婚である場合にのみ日本への入国や滞在が許可されていたのですが、今回の入管法改正でそれをさらに拡大し、一定の要件をクリアした場合に限って成人の日系4世にも在留を認めようとするものです。

この改正が行われれば「素行や日本語能力などの要件を満たした18歳以上30歳以下の日系四世」の受け入れ枠(年間約4,000人分)が新たに設けられることになります。

今回の案件について特筆すべき事項は、この日系四世の受け入れに際して「日系四世受け入れサポーター」という制度が設けられたことです。

「日系四世受け入れサポーター」(以下、サポーター)は、「日系四世が本制度の目的を達成できるように,日本文化・日本語教育情報をはじめ,生活情報,医療情報,雇用情報等の提供や入管手続の援助を行う。」という、あくまでも日系四世の生活を「支援する存在」として記載されています。

これらサポーターとなる人は、自分たちがサポートする日系四世が来日する前に入国管理局で在留資格認定証明書の取得手続きを行い、ビザ申請に関与します。また、来日後は

・1か月に1回、サポートする日系四世と連絡を取って就労状況等を確認する
・在留期間更新時の許可申請を日系四世が行う場合に、入管へその四世の方の就労状況等を報告する
・入管からの問い合わせに対応する

など、生活面のサポートだけでなく、いわば「管理・監視」とも言えるような役割を入国管理局に成り代わって担うことになるようです。

このサポーターになることができるのは、一定の要件を満たした親族、ホストファミリーや雇用主や日系四世が暮らすことになる地域で国際交流などを目的として活動する非営利団体等となっています。(1団体、1人の個人あたり2名までの日系四世をサポート可能ですが、金銭の授受ができない無償のボランティアが担う、ということになっています)


サポーターが全員「善人」だとは限らないと考えると恐ろしい

おそらく(日本語に堪能な)親族が担うケースが多くなるのではないかと思いますが、たとえば雇用主がサポーターとなる場合、自らの在留資格継続や更新に不利な「報告」をされるのではないかと恐れた日系四世の方の立場が不当に弱まる可能性を否定できません。

また、万が一それが悪意のある雇用主であれば「お前の在留資格更新ができないようにしてやるぞ」というような脅しでもって、パスポートを取り上げたり、サービス残業を強要するなど、技能実習生をめぐって問題となっているようなケースの発生が懸念されます。

あるいは逆に、善意でサポーターを引き受けた個人がサポートする方が、万が一失踪や不正を働いていたような場合に、その責任を負わされるようなことにはならないでしょうか。


社会貢献という建前と本音の間に乖離はないだろうか?

今回のこの受け入れ拡大。資料に書かれたその目的には

「一定の要件を満たす日系四世の方を受け入れ,日本文化を習得する活動等を通じて日本に対する理解や関心を深めてもらい,もって,日本と現地日系社会との結付きを強める架け橋になる人材を育成する。」

という社会貢献性が全面に押し出されています。

人手不足が深刻化し、「国際貢献」が主たる目的であるはずの技能実習生を労働力として公然と当てにしているような時代に、日系四世受け入れ拡大に関しては社会貢献である、という建前が本音だとはにわかに信じることができません。

かつて、1990年の入管法改正で、日系3世に日本での就労の道が開かれました。派遣会社等を経由し多数の日系人が日本へやってきて工場などで働いていましたが、2008年のリーマンショックでは大量の雇止めが発生することとなりました。その際、日本政府は日系人に対して帰国支援事業を実施し、帰国を希望する日系人に渡航費の補助を出しました。彼らを「雇用の調整弁」として使うだけ使い、いざ仕事がなくなれば(飛行機代を出してでも)帰ってもらった、というこの過去の経験は明らかに失敗でした。

今回の日系4世の受け入れ拡大についても、同様の懸念が残ります。また、彼らの日本での生活支援等は民間のボランティア(サポーター)が無償で担う、という一方的な案に、実行性はどこまであるかも疑問です。

ただ、今回の日系四世の受け入れの拡大については、複数の日系人団体からの要望であったという側面も。確かに母国で働き口を見つけることができない方々も多いと聞くこともあり、お互いに利害関係は一致している部分もあるかと思いますが、そうであるのならなおさら、お互いが安心・安全に働き生活することができる体制の整備が先に行われるべきではないでしょうか。

(それにしても、こんなややこしいことまでして労働力確保したいなら、最初っから労働ビザ(高度人材の一段階下の中程度技能人材を対象としたもの)出せばいいじゃん、と思うのですが・・・)

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