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「公務員」は守られているのか、否か?

2020年12月年末、壱岐島に衝撃が走った。

8月25日に新型コロナウイルスが発生して以来、4か月ぶりに新型コロナウイルスが確認されたのだ。


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12月30日付けの長崎新聞によると、「九州郵船の乗組員で福岡県在住の30代男性。県と同社によると、27日に悪寒やのどの痛みがあり、28日朝の対馬・厳原港発のフェリーに乗船中、乗組員食堂で意識を失い転倒。壱岐・芦辺港で下船して検査したところ、陽性が判明し入院した。」としている。(12月29日、長崎県発表)



九州郵船の乗組員は、福岡市在住で搬送先が壱岐市内の病院ということではあるが、4か月ぶりの新型コロナウイルス発生に壱岐市民は驚きの声を上げつつも、年末年始の帰省等によるコロナ発生をある程度は予測していたと思われ、冷静な意見が多かったように思う。


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翌12月30日に、壱岐市は2021年1月10に予定していた成人式を延期とした。



なお、12月29日時点では、長崎県下の各自治体の成人式の開催状況は、19自治体が延期、または、中止となっており、壱岐市と東彼杵町のみが開催予定としていた。(東彼杵町は、明日1月3日に実施予定)



12月に入り、日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になると、壱岐市では市内の各家庭等に設置されている告知放送放送で、「3密の回避、手洗い・マスクの着用。感染リスクが高まる5つの場面等への注意、5人以上の飲食を伴う会食を控える」といった注意喚起が、壱岐市感染症危機管理対策本部長である壱岐市長直々に行われていた。


そして、2020年最後の日、「来年はコロナが終息するように。」と願いを込めながら、壱岐市民は穏やかに大晦日を過ごそうとしていた矢先の夕方。


壱岐島にさらなる衝撃が走る。



市長直々の戒厳令を市民に要請している中で、飲み会で市役所職員がコロナ集団感染したことになる。なお、クラスターの定義は定められていないが、一般的に「一か所で5人以上の感染」をクラスターとしている。


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行動履歴によると、フェリーで発生した事案(12/28発熱)と、市役所職員の症状発症時期(12/28発熱)はほぼ一緒であるため、フェリー事案も含めて、市は成人式を延期したのではないだろうか。


元壱岐市役所職員の私が言うのもなんだが、壱岐市役所では、部と課レベルで2回忘年会が行われることが多かった。

とはいえ、12月の新型コロナウイルス感染拡大の状況下で、市民に自粛要請しているのであれば、市役所内でも、庁内ネットワーク掲示板で「忘年会自粛のお触れ」が総務から全職員にあっているハズである。


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にも関わらず、忘年会が行われてしまった原因はどこにあるのだろうか。

今回、2つの課の名称が公表されているが、コロナ発生していない他の部署でも忘年会が例年どおり行われている模様で、職員数が多い部署では20人を超える飲み会も行われていたと聞く。

コロナが発生しなかったからOKということではない。

コロナ感染は確率論で、壱岐市民であれば誰でも感染する可能性がある。今回、感染者や公表された2つの課だけが責められる問題ではないと考える。


本来であれば、飲み会の開催を中止するはずの部、課長や「職員の誰か」が止めなかった理由はひとえに「油断」だと思う。


そして、「全体主義」にあるのではないか。


職員の中には、この状況下で「飲み会」ということに異を唱えたかった職員もいるかもしれないし、参加しなかった職員もいるとは思う。飲み会自体を自粛した部署もあるかもしれない。

しかし、「言えなかった。」という声もあると考える。「異を唱える」と言う風習や感覚が公務員にはあまりない。


組織の秩序を保とうするあまり、本当に大事なコトが見えなくなっていたのではないか。


また、自分には関係ないという「対岸の火事」的な思考であったり、新型コロナウイルスにより、大きな経済損失を受けている市民との意識の乖離もあると考える。


※ちなみに、私も去年の年末に5名以上の忘年会に1度参加しているので大きなことは言えない。


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1月4日から、壱岐市役所では仕事始めとなるが、市長による厳しい訓示が出されると共に、年末に行われた飲み会について調査が行われるべきだと思う。


職員のコロナ感染者が「悪」ではなく、壱岐市役所職員の「全体の奉仕者の心構え」や「倫理感」、そして、組織の「危機管理能力」が今問われている。間違い認め、信頼を回復するには行動で示すしかない。


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今回のコロナ発生事案については、これだけ市民に不安を与えてしまった以上、なんらかの処罰が検討されると思う。


ちなみに、私は在職中に「公用車の私的使用」で「厳重注意」を市長直々に受けたことがある。

簡潔に説明すると下記のとおり。

平成29年8月中旬、東京の某企業の社長が壱岐初来島。壱岐リサーチのために島内視察をワンボックスカーの公用車で運転手兼ガイドとして1日対応。

視察の会話の中で、「今日はちょうど花火が上がる日」との話から、「花火観覧ができないか。」との先方の要望に、私は「夜は子どもの面倒を見なければいけない。子どもも同伴で良ければ。」となり、花火の時刻に合わせて、子どもも乗せた全員で花火会場に公用車でおもむき、花火を観覧した。

お客様は間近で花火を見たことがないとのことで、大変感激していただいたのだが、市民から「公用車が私的使用されているのではないか。」との一報がその夜、役所の日直に入る。

翌日、私は事情聴取を受け、顛末書を書き、後日、市長をはじめとする幹部長がズラリと並ぶ中で、「厳重注意書」をいただく事となった。

注意書には、「公用車の使用については、日頃から公私混同しないように、強く指導しているところであり、全体の奉仕者である公務員にあるまじき行為で誠に遺憾である。」とあった。


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※社名等が入っているため黒塗しています。


一般の企業であれば、こんなことは大した問題にならない場合もあると思うが、それが公務員なのである。常に高い倫理観を求められる。


ちなみに、私は平成24年10月に海に転落した男性を近隣住民と共に引き上げ、心肺蘇生を行い、救助している。その時、壱岐警察署からは感謝状をいただいた。


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他の自治体では、人命救助に対して善行表彰している所もあるのだが、壱岐市役所からは何も言われなかった。ちなみに壱岐市職員表彰規定には「職務の内外を問わず、善行のあった者」という記載は一応ある。



私の中では「人の命を救っても褒められることがなく、公用車の私的使用だと怒られる。」となった。つまり、「いいことをしても評価はされず、問題行動があれば罰する。」ということになる。


実は、この一件が、私が市役所を辞めるという決定的なトリガーになっている。もちろん自分にしかできない仕事をやりたいという目的もあったので起業している。


自分としては、精一杯尽くしてきたと思っていた壱岐市役所という組織に対する「忠誠心(ロイヤリティ)」が完全崩壊した瞬間である。


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とはいえ、この出来事があったから、「辞める」という決断をすることができたので、私の中ではもはや「笑い話」になっているのであるが(笑)


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今回のように「公務員は給料が高く、身分保障もされている。」半面、ひどく打たれ弱い。市民や世論のバッシングが集中砲火される。


そういう意味では、窮屈な職業であると言えるだろう。私は、その窮屈さが苦手でもあった。


勤務中も勤務外であっても、全体の奉仕者でなければいけないし、問題があれば市民の糾弾を甘んじて受けなければならない。災害等の際は、家族より先に市民を守る行動に入らなければならない。



ちなみに災害時の公務員の家族をサポートしようとする自助組織もある。災害大国日本、壱岐もここ数年、大きな災害に見舞われている。日ごろから、官と民が連携することで、お互いがWin-Winになれる状況を作っておくことも大事だ。



残念ながら、今回の事案は多くの壱岐市民に対して、不安や失望を抱かせる結果となってしまったが、感染者や飲み会出席者を罰するのではなく、これからの壱岐市役所が組織としてどうあるべきなのか、を考える機会だと思ってほしい。


なんらかの処罰を求める市民の声も高まっているが、「魔女狩り」みたいなことはすべきではない。


人は失敗や間違いを超えて成長する。


問題を見つけて、適正に対処する。


そして、成果上げる人よりマイナスがない人を評価する組織でなく、チャレンジする人を評価する組織に変わって欲しい。頑張ったり、いい成果を出せば、褒める組織であって欲しいし、上下関係なく、自由に意見できる組織になって欲しい。


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長々と脈絡のない文章になってしまったが、大事なことは、「誰かを叩いても、誰も幸せにならない。」ということだ。


アメリカの「自らが事を成し、世に貢献する」という考え方と、日本の「シンプリシティと謙虚さ」の融合。これこそが、現代の日本人に求められるメンタリティなのではないだろうか。


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壱岐市役所若手職員のチャレンジ精神に期待する。


君たちが40、50代になった時、壱岐島はどうなっていますか?


私は私より前の世代の公務員の方々がもっと外に開いたマインドを持ち、世界とつながっていれば、今よりマシな壱岐島になっていたと思っています。

人口減少予測も早くからできていたし、それに対する対策も早くから打てていたはずです。


どうか「できない理由」より、「できる方法」を探してください。


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私も一緒に考えます。まだまだ、これからですよ!



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