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「プロ」に対する未払いが多過ぎる

編集・ライティングの自営業を始めてから27年。実は、実際に業務をこなしたのに払ってもらえなかった経験は多々ある。

・実際に足を運んで取材する
・ゴーストライターの業務のために筆者にヒアリングする
・構成を練り直す
・素人の執筆した文章(誤字・脱字・文法間違い・わかりにくい・伝わりにくい)をリライトする
・読みやすい構成に編集しなおし、足りない文章の作成指示をする
・全部をまとめてデザイナーに発注して入稿する
・印刷物ができあがる


こういったことをしっかり終えて納品しているのに、支払われていないお金、累計100万円ほど。そこには今も「有名人」として活躍している人もいる。

編集・取材業務の依頼。今も続いている「農家さんと街の人をつなげる某マルシェ」の立ち上げ時、小冊子を作ってと依頼されたが、編集・執筆に対して金額が払えるようなことを言いながら、蓋をあけたら印刷代しかもらえなかった。つまり無料奉仕、かつ、経費は持ち出しというひどさ。口頭では「後日もう少し払えます」と言われたものの、一切の振込み無し。

当時はシングルマザーで、まだ子どもが小さくて三姉妹にご飯を作ってから夜にミーティングに参加したり取材したりなど、かなりの労力を使ったが、彼女は独身で子どももいないので、きっと、その苦労も一切わからないのだろう。彼女が進行通りに動いてくれなかったので、どんどん時間がなくなり、印刷代が上がってしまったことを反省会で伝えたら泣かれてしまい、よく理解していない他のスタッフからは悪者扱い。後日、本人にも「あんなのを作りたかったわけじゃない」とまで言われた。ひどい思い出。

また別の業務「オンライン講座」でのこと。とあるマンツーマンでの「単発小冊子編集講座」で生徒募集した。ある東京の女性は、モニター価格ということで「感想」をもらうことが条件だった受講生。何度伝えても「感想」を提出してくれず、仕方なく正規の料金(追加)を請求したけど、それでも払ってくれなかった。

ほかにも書き出すと山ほどある。
でも、そういう方、意外に有名人だったり、人気があったりする。
下手すると、一部の人に崇拝されている人だったりもする。

私だけではなく、周囲であまりにもこういった話を聞くので、本当に悲しく思う。実名を出したいところだが、もう別に「攻撃したい!」というほど腹が立っているわけではなく、「理不尽だな」と思っているだけで、私の場合、呆れているだけで許せないわけではない。大切にしてもらえなかったことが、ただただ悲しい。

ここで伝えたいのは
「人の経験と技術を無料奉仕させるのは悪行である」
ということ。

私たちのような「技術」と「経験」が重要な仕事は、駆け出しの「名前さえ売れたらいい」という頃と違って、奉仕は辛い。自分のこれまでの苦労を安易に踏みにじられたような気持ちになる。

安くても納得がいけばサポートしたい。だけど、やっぱり「無料奉仕」はあり得ないのです。

「掛け替えのない自分の歴史」を安易に軽く扱われること。失礼過ぎると思います。自分で納得してやる分にはいいのです。でも、この価値をわからない人に対して仕事をすると、エネルギーが枯渇してしまいます。

「経験」を尊重してくれる人と仕事する

技術や経験があるからこそできる仕事をしているみなさん。しっかりと交渉しましょう。無料奉仕だけは避けましょう。

せめて物々交換です。相手にもその方のプロの分野の仕事をしてもらって、対価としてなにかを受け取りましょう。

そして、サラリーマンの方(副業をしている方含む)。

自営業している方に、本業の業務内容を安易に「無料奉仕」や「低額発注」するのは辞めてあげてください。自営業にとって重要な「時間」を奪うのをやめてあげてください。

それって「盗み」「詐欺」と同じです。目には見えない相手の方の「歴史や知力」を無料で奪い取るわけですから。

人気のあるカフェのシェフを連れてきて「ここで無料で料理を作ってください」と言えますか? その間、カフェは開店できません。その損害について考えていますか? 料理の材料を買ってもらっておいて、その経費を払わない人をどう思いますか? それって犯罪ですよね。

そもそも「奉仕」とは自らおこなうもの
人に依頼されてすることではない

そもそも……のことになりますが、「やってくれるだろう」という気持ちは甘えです。甘えすぎるというのは、相手を大切にしていないのと同義です。

そもそも「奉仕」というのは自ら進んでやることではないでしょうか?

相手から「無料でお願いします」はあり得ません。それでもいいよと言えるのは本当に懐の深い人なのでしょうか? 

私のように子どもを3人育てている生活がかかっているのに「いいよいいよ」と言えることでしょうか。生活責任を負っている相手に対して、実家で生活費の心配がない独身女性が私の本業である「編集者」としての業務を無料で依頼したのは、いや、最初は払うつもりだったとしても、どう考えても想像力が無さすぎます。愛情が無さすぎます。

もう子どもたちが独立している。生活を背負っていない。
という人だとしても、「奉仕」というのは、その人が「奉仕しよう」と決めることであり、周囲が依頼してしてもらうことではないですよね。

その道のプロである、編集者、翻訳者、技術者などに、無料で頼るのは大抵、「勤め人」です。会社を一から起こした人ではないので苦労もわからなければ、経費に関しても考えが甘い。

「甘え」という行為は、相手を大切にしていないということ。

このことを肝に銘じて、プロに発注してもらいたいものです。そして、受注する側は「契約書」をしっかり交わしましょうね。

たくさんの自戒と、似た業種のプロの方たちに愛を込めて。

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