2022年ベストアルバム / 邦楽

僭越ながら今年も10枚選びました。
例外が1枚ありますが、基本的には聴いた回数を軸に選んでいます。


10. 坂本慎太郎『物語のように』

情けなさと色気のはざまで揺れる歌声も、虫の鳴くようなあるいは枝と落ち葉を踏むような演奏も、日本語を音として捉えて発声するセンスも、心身の不調やディスコミュニケーションの不安を俯瞰する滑稽みも、すべてこれまでのソロ作品で継続されてきた表現のスタイルで、正直言ってどれ聴いても同じような感じなのですが、そうやって研ぎ澄まされてきた手癖でそのまますごいところに到達したような作品でした。
夜ごはん作りながら聴くのが一番しっくりきます。





9. tofubeats『REFLECTION』

いくつものピークと、それらをつなぐキープが多層的に連なる、リスニング志向のハウス/J-POP作品。1時間超の尺が必然と感じられて、ドラマチックでした。著書『トーフビーツの難聴日記』で理解を深めることもでき(自営業は大変だ……)、歯応えがあります。
まったく個人的な話ですが、今年は春から職場の改修工事の関係で勤務先が一時的に変更になっていて、1時間半ほどかけて通勤しておりますので、これくらい長いのがむしろちょうどよかったです。
故ECDへ捧げるオマージュに涙😢




8. 柴田聡子『ぼちぼち銀河』

奔放な奇想とエッセイストとしての着眼点とフックだらけのメロディーが分かちがたくひとつになっていて、めちゃポップ。柴田聡子さんと同じような表現活動を行っている人は、他にいない気がします。人懐こくて気高い。
このアルバムに収められている中でもとびきりすばらしい『雑感』と『サイレント・ホーリー・マッドネス・オールナイト』の2曲は2021年に先行配信されているので、本作を今年のアルバムとして選ぶのは少し迷いましたが、聴き返してみると他の曲もすばらしかったので選びました。



7. ゆるふわギャング『GAMA』

バウンスしていてサイケデリックで、ときにはあけすけで、ときには法に抵触してそうで、自分を信じていて、一瞬にして風景を塗り替えてくれる作品でした。掃除していても、出勤していても、これを聴けばそこがゆるふわギャングの世界になるような。それでも部屋は綺麗にしなきゃいけないし、会社には行かなきゃいけないのですが……だとしても、自分が良いと思うやり方で極力楽しくやっていこう、と鼓舞されます。



6. Watson『FR FR』

2000年生まれの徳島のラッパー。今年もう1枚出したアルバム『SPILL THE BEANS』と合わせて、日本語ラップシーンをかっこいい志向からおもしろい志向へ、クリシェ的な語彙から各自の生活に根差した語彙へ、私好みの方に変革させるゲームチェンジャーだと思います。大変助かります。





5. 宇多田ヒカル『BADモード』

J-POPが好きな人も、ラップが好きな人も、ロックが好きな人も、K-POPが好きな人も、クラブミュージックが好きな人もみんな聴いてて、でも特に好きな曲はそれぞれ違ったりして、稀に見る共通言語でした。
このあいだ1stを聴いたら、『Automatic』こそ掛け値なしに名曲だけど、他はわりとJ-POPのフォーマットに則った曲が並んでいて、意外と手堅いなと感じました。15歳とは到底信じられない歌唱力も当然すごいけど……『BADモード』を愛聴した2022年の耳では、そう感じてしまってもしょうがない。



4. 原由子『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』

66歳のシンガーソングライターならではの年輪が刻まれた深い作品で、フレッシュで、天才おしどり夫婦の共同作業の成果で、きらりと輝く粒揃いの名曲集で……
サザンや桑田ソロにはどうしても付随してくるビッグビジネス感がここには希薄で(宣伝の展開こそ派手でしたが🤭)、あるのは創作意欲とファンサービスだけで、そのことにとても感動しました。「もしも桑田佳祐のファン層が今の100分の1だったら」という失礼な妄想に対するひとつの見立てとしてこれを愛聴した私は、悪いファン。





3. C.O.S.A.『Cool Kids』

愛知県知立市のラッパーによる、非常にシリアスかつリリカルな作品。C.O.S.A.の吐くリリックには、私自身の実体験やパーソナリティとぴったり重なるところがあって、鏡を見てる気分になります。それなのに繰り返し聴きこめたのは、随所に差し込まれる「ウー、アー、ウー」「アウ!」といった味わい深い擬音が演出するバランス感覚のおかげかもしれません。本場感。
そういう意味では、日本語がダイレクトに入ってくるアルバムなのに、すごく洋楽的に聴こえるアルバムでした。





2. 七尾旅人『Long Voyage』

私にはどうしても“ながら聴き”できない作品。聴くたびに感情が掻き乱されてしまって、最後まで聴けないことも多く、通しではおそらく5回も聴けていません……




1. OMSB『ALONE』

生活の酸いも甘いも詰まった、紆余曲折の過程のアルバムだと思いました。自分の限界、心無い差別、コンプレックス、そういった諸々につまづき立ち止まり途方に暮れ、そのたびに原点に立ち返ってはこんなふうに地に足つけてポジティブにラップする姿に、とてつもなく奮い立たされていました。もちろん大前提として、リリックちゃんと聴かなくてもカッケー!とアガれる極太な音楽。
今年はこの作品に出会えたから良い一年でした。

ワンマンライブ行ってよかった!

かわいい〜!


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