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本当のサステナブルは「ケア」を知ることから始まる!洗濯の魅力を語り合う『センタクカイギ Vol.0』レポート

サステナブルへの関心が高まり、消費から愛着へと意識が変わりつつある昨今。モノを長く愛用するために大切なのは、「ケアの知識」とケア自体を「楽しむ心」ではないでしょうかーー?

日常で何気なく行なっている洗濯ですが、どう洗濯すると大切な服を長く愛用できるか、実はよくわかっていない人は少なくないはず…。そこで、洗濯にまつわる知恵を集め、洗濯の楽しさを発信し、洗濯を新しい文化にしていくプロジェクトがスタートしました。

その名もセンタクカイギ

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『センタクカイギ』では、洗濯に並々ならぬ熱量と愛情を持っている4社が主催企業となり、あらゆる角度から洗濯を熱く語ります。

その4社とは、全国50店舗のカフェ併設のコインランドリー『Baluko Laundry Place』を展開するOKULAB社。「洗濯から、セカイを変える」という信念をもとに活動する洗濯家 中村祐一さん。安全・安心な石鹸を作る木村石鹸工業社。そして、IKEUCHI ORGANICです。

2019年11月29日の「いい服の日」に開催されたキックオフイベントでは、そもそもの「洗濯の魅力」「センタクカイギで何を実現したいか?」について各社を代表する洗濯マニアたちが熱のこもったトークを繰り広げました。その様子をダイジェストでお届けします!

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洗濯の沼にハマる人をひとりでも増やしたい!

阿部:
そもそも、このセンタクカイギは「洗濯に関する悶々とした悩みを解決したい」という想いからはじまりました。

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阿部哲也。IKEUCHI ORGANIC 三代目社長 兼 タオルドクター。 2009年にIKEUCHI ORGANIC株式会社に入社し、2016年より現職。2019年には、パナソニック社の新型洗濯機に搭載する、タオルの理想的な洗い方を追求した「タオル専用」コースを監修。社内で唯一「タオルドクター」の称号を持ち、タオルの洗濯をこよなく愛する。

阿部:
IKEUCHI ORGANICのストアでは、タオルを紹介する際に、洗った後の状態のものを体験いただいています。なぜなら、タオルは洗濯を繰り返すものなので、洗濯後の状態のものを試用いただくほうが、お客様にとって誠実だと思うからです。

ですが、購入いただいたお客様から「家で洗濯をしているのだけど、ストアで触った時のような仕上がりにならない」と、お声をいただくことがあるんです。おそらく、洗濯のやり方に何かしら問題があると思うんですね。

そこで、何が正しい洗濯なのかと模索していたのですが、洗濯を理解する旅路の途中で、今日登壇いただいている皆さんと知り合うことができました。正直、こんなに洗濯について考えている人達が世の中にいるんだと驚きました(笑)。

そして、あるイベントで中村さんとご一緒した際に、洗濯に熱い人を集めて、洗濯の知見を結集させたら、面白いことができるんじゃないかと勝手に盛り上がったんです。

実際に、洗濯は語るべき要素が実に多いんですよ。洗濯には「洗濯の4大変数」があって、この4つによって結果が全く変わってしまうんですね。

洗濯の4大変数とは……
水質(洗濯で使用する水。硬水、軟水…など)
素材(洗濯する対象の素材。綿、ウール…など)
資材(洗剤、石鹸、柔軟剤…などの種類)
機材(洗濯機などのハードウェア)

ひとつ話すだけでも、相当な時間がかかります(笑)。でも、話すべき要素がたくさんあるところが、洗濯の面白さだとも思います。センタクカイギを通じて、洗濯の沼にハマる人がひとりでも増えたら嬉しいです!


世界を見ると、洗濯のあり方はひとつじゃないと気づける!

國司さん:
洗濯で面白いのが、洗濯方法が国や地域によってバラバラなんですよね。それは「洗濯の4大変数」が大きく影響しているからです。

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國司有香さん(スペシャルゲスト)。パナソニック株式会社 ランドリークリーナー事業部 商品企画部 商品企画課 課長。 IKEUCHI ORGANICが監修した「タオル専用」コースを搭載した新型ななめドラム洗濯乾燥機の企画開発に携わる。

國司さん:
私はヨーロッパに住んだことがあるんですが、ヨーロッパの水はカルシウムを多く含んだ硬水です。一方、日本は軟水。水質の違いが洗濯機の構造に大きく反映されています。

よく昔話で「おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に」とありますけど、キレイな川でじゃぶじゃぶ洗うのが日本の伝統的な洗濯スタイルです。だから、日本の洗濯機は縦型の桶のようなところに水をたっぷりと入れて、下から水流を起こして洗う「渦巻き式(パルセーター型)」の洗濯機が主流です。

一方、ヨーロッパは硬水なので、そのまま洗うとガビガビになってしまう。それに対処するために、洗濯物を上に持ち上げて落として洗う「たたき洗い」スタイルが生まれ、「ドラム式」の洗濯機が主流になりました。

これが中東やインドになると、また洗濯に対する考え方が変わってきます。例えば、宗教服を洗う際には、服が痛む懸念から、洗濯機はあまり信用されていません。なので、手洗いの考えが、まだまだ残っているんですね。

こんな風に世界を見て回ると、洗濯のあり方ってひとつじゃないと気づかされます。私なんかは、海外に行くと、着ている服の素材や洗濯の仕方が気になって仕方ありません(笑)。


効率化が進んでも、手間暇を楽しむ心は消えない!

木村さん:
日本人の洗濯に対するイメージは、基本的に「めんどくさいもの」「極力やりたくないもの」として捉えていると思います。そのため、洗剤メーカーも、洗濯機メーカーも、労力を解消する方向性でものづくりをしています。

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木村祥一郎さん。 木村石鹸工業株式会社 4代目社長。木村石鹸工業は1924年創業。先代が銭湯に通い詰めて開発した浴場用洗剤、エアポールは洗浄力を維持したままタイルや手肌もいたわることのできる品として銭湯事業者に愛されてきた。近年では安心・安全な家庭用石鹸洗剤「SOMALI」シリーズのヒットや、柔軟な経営方針が評価され、Forbes JAPAN「SMALL GIANTS AWARD 2019」に選出されるなど、多方面から注目を集める。

木村さん:
そもそも歴史を辿ると、洗濯の歴史は、重労働からの解放からの歴史だったんですよね。洗剤も当初は石鹸しかなかったのが、石鹸の使いにくさを解消するために合成洗剤が生まれました。現在は、とりあえず衣類を洗濯機に入れて、洗剤と柔軟剤を挿入し、お任せコースのボタンで押せば、何とかなる状態です。

ただ、ある自動車メーカーの代表の方が言っていた言葉が印象的で、交通手段として自動車が馬に取って代わった後に、馬は消えたかというとそうではないですよね。乗馬や競馬を楽しむ人は残った。それと同じで、車が自動運転に切り替わっても、ドライブを楽しむ人は必ず残るはずだから、その楽しさを広げていきたいと仰っていたんです。

同様に、洗濯も自動化や効率化が進む一方で、洗濯の方法に工夫を凝らし、自分好みの洗濯を楽しむ文化ができるんじゃないかなと思います。マニュアル車が好きな人がいるように、フルマニュアルの洗濯が好きという人がいるはずです。

その筆頭が、中村さんですよね(笑)。


洗濯に対する「選択肢」を生み出していきたい!

中村さん:
僕は、AIによってあらゆることの自動化が進む時代になると、「自分がどう感じるか」の価値が高まってくると思うんですね。だから、洗濯を「もっと楽にする」ではなくて、洗濯に「楽しみ」をたくさん見出したいんですよ。

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洗濯家 中村祐一さん。長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。「洗濯王子」の愛称で各種メディア出演多数。「洗濯からセカイを変える」という信念のもと、2006年から日本中の家庭に洗濯の魅力を伝え続ける。日本初の洗濯専門の教室「センタクスタジオ」、洗濯中心の家「センタクアトリエ」などをプロデュース。同時に、衣服と関わる様々な業界の改革に取り組んでいる。

中村さん:
洗濯というと、乾燥させるまでだと思ってるけど、僕は「アイロンがけ」までが洗濯だと思ってます。アイロンをかけると縮んだものが元に戻ったり、洗いで失敗したところも失敗でなくなったりするんです。よく「ウチに帰るまでが遠足」と言いますけど、洗濯もアイロンがけまでが洗濯です(笑)。

僕なんて、いつも朝一で必ずアイロンをかけるようにしてますね。アイロンをかけて、心を整えるみたいな。まるで瞑想ですよ(笑)。

例えば、料理が好きな人って、料理をしている時間自体が幸せだと感じるじゃないですか。それと一緒で、忙しい日々の中で洗濯している時間そのものが、贅沢な時間だと思います。丁寧に洗濯することで、大切な一着に愛着を持てますしね。

それこそ、料理には色んなレシピがあって、人それぞれで自分の好みを探せるように、洗濯にも自分にフィットするやり方を探す楽しみがある。洗濯に対する「選択肢」を、センタクカイギで生み出していきたいです。


洗濯のプロフェッショナルだから与えられる気づきを届けたい!

永松さん:
私も、シミ抜きやアイロンがけを週末の楽しみにしていて、お気に入りの服をどう長持ちさせるかを追求するのが好きなんですよね(笑)。

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永松修平さん。株式会社OKULAB 代表取締役。OKULABは2016年創業。ランドリーサービスを通じて新しいライフスタイルを提案、全国に60店舗以上の「Baluko Laundry Place」を展開している。

永松さん:
ただ、我々がコインランドリーの他に、クリーニングサービスや洗濯代行サービスをやっている意味でもあるんですけど、洗濯を全て自分でやる必要もないじゃないですか。

料理も、話題のレストランに行って、その味に驚いて、それを自宅で再現するために色々と調べだして、より沼にハマっていきますよね。僕らも、洗濯の気づきを与える存在になれたら嬉しいですよね。

先ほど、中村さんが「洗濯はアイロンがけまで」と話しましたが、アイロン技術を学ぶと一気に洗濯の幅は広がるんですよ。ドライクリーニングの一番のメリットは衣服の形を崩さないことですが、アイロン技術が高まると、ほとんどの衣服は家で洗濯をしても問題ないんです。細かいことをいうと、どのハンガーを使うかでも結果は変わるので、道具の選び方や使い方のアップデートの余地もすごくあると思います。

洗濯のプロだからこそ知っていることを、こういう場を通じて伝えて、洗濯の楽しみ方の多様性を生み出していきたいです!


2020年の最後には『センタクサミット』を開催したい!

中村さん:
現在、地球に優しい循環型社会が求められてますが、正しい知識を持っていれば、洗濯は循環そのものだと思うんですよ。洗濯とは、モノを長く愛用するための営みですからね。僕はよく「世の中の多くは洗濯風ですよ」というんですけど、それをちゃんと「洗濯」にしてあげる流れを、センタクカイギから生み出していきたいですね。

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木村さん:
まずは正しい知識を伝えていくのが大切ですよね。例えば、最近、柔軟剤が悪者にされがちですけど、ちゃんと使用量を守って使うにはあまり問題ないんです。でも、香りをもっとつけるために、ついつい入れすぎてしまうから問題が起こるんです。衣服に香りを残したり、繊維を柔らかく滑らかにしたりするには、何かしらの剤を残すということです。素材によっては吸水性を損ねたりすることにも繋がります。決められた範囲内で使う意識を持つことが大事だし、その範囲がどこまでか、どういう効果があるのかをしっかりと伝えていきたいです。

永松さん:
私たちのほとんどの店舗では、洗剤・柔軟剤を選べるコース設定をしています。「ナチュラルコース」というコースでは木村石鹸さんの「SOMALI(ソマリ)」という洗濯用液体石けんを使っていて、人にも環境にも配慮した洗濯ができるようにしているのですが、あんまり難しく考えすぎてもいけないと思うんですね。洗濯に関する様々なヒントを与えて、まずは「洗濯が楽しい」と思えるライフスタイルを届けていきたいです。

國司さん:
実は、洗濯機をご使用いただくなかで、「おまかせ」機能の次に使われることが多いのが、洗い時間やすすぎ回数などを自分好みにセッティングできる「わたし流」機能なんですよ。つまり、自分にフィットした洗い方を見出したい人は少なくないんですよね。洗濯を楽しみたい人が、より洗濯を楽しむヒントを提供したいですね。

阿部:
やっぱり洗濯について語り出すと話題は尽きないですね(笑)。

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阿部:
今後の展望としては、3ヶ月に1回くらいのペースでセンタクカイギを開催し、様々なトピックについての知見を深めていきたいと思ってます。そして、集大成として、2020年の最後には『センタクサミット』を開催する……予定です(笑)。

また、様々な場所で分科会も実施し、そこで参加者の皆さんからいただいた疑問についても、議論しながら深めていきたいです。目指すは、参加型の洗濯の新しい形を考えるプラットフォーム!

是非、これからのセンタクカイギの活動に注目してください!

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▲ 当日のモデレーターは、『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターでも知られる、女優・タレントの宮地眞理子さん。洗濯マニアたちから、奥の深い洗濯の魅力を引き出してくれました!

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▲ 会場は『Baluko Laundry Place』の代々木上原店で開催。当日は、カフェで販売しているドリンクや美味しいパンを片手に、洗濯の魅力について語り合いました!

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【お知らせ】次回の『センタクカイギ』は3月6日(金)に、大阪で開催!

2019年11月29日の「いい服の日」にキックオフしたセンタクカイギですが、この2020年が本格始動の年になります。

早速、1月には福岡で初の分科会を2日連続で開催しました!

また、次回の『センタクカイギ』3月6日(金)大阪で開催することも決定!詳しくは、こちらのPeatixページご覧ください!

奥が深い洗濯の世界をともに学び、洗濯を一緒に楽しんでいきましょう!

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