終わる日記(2024/10/05)
2024/10/05
旧友が大阪に来ているらしく、これから会おうということになった。いまもうほたるがなんちゃらに向かってると言って、だからほたるがなんちゃらの駅でもいいかと言う。カップヌードルを作ったり水族館に行ったりといろいろ大阪を満喫してきたらしく、今回は、どうやら乳飲み子と一緒に来ているということだ。ちょっと前に、LINEで唐突に乳飲み子の写真が送られてきて、その下に「産んだ」と添えられていた。
ほたるがなんちゃらで落ち合う。改札を出たところにわざわざきてくれていて、ひさしぶりと言った。おー、〇〇ちゃん(〇〇には乳飲み子の名前を短くしたものが入る)、はじめましてだねーと言うので、はじめましてと言う。ヴァーチャルでは会ってたけどほんとうに実在してたんだと言うと、AIではなくと言った。
空港には行ったことがなくて、関空となるとだいぶ南のほうかと言うと伊丹だと言った。Googleマップで経路を調べて、どこにあるんだっけと言った。そんなんお前がわかっとけよってはなしだ。
先頭車両に乗ると、脱線は原理的にありえないけれど、モノレールがいまにも落ちてしまいそうで怖い。大阪の雑踏にやられなかったかと言った。眠そうにしている。飛行機までがんばれと言った。足がぷくぷくしていて、低反発マットみたいにもっちりしていてかわいい。指もぷにぷにしていて、その形がマカロニみたいだと思った。想起したのは、この前見た給食のマカロニスープに入っていたマカロニだ。マカロニ足。髪がさらさらだねと言うと僕に似ていると言う。
北ターミナルから南へと歩いていく。ピザにするかと言うと食べられませんと言った。いまは離乳食の時期らしい。レストランの一覧がででいるデジタル看板があり、どこに行くのと言った。フロアに放ったらかしになっていた放置ベビーカーを彼女がもってきて、そこに乳飲み子を乗せて固定する。側面にはANAと書いてあって、つまりはANAの特性ベビーカー。ベビーカーの骨から飛び出した4本の手足は、バタバタと落ち着かない様子でなにかを掴もうとしているらしい。なんにでも鋭敏に反応できるというのは素晴らしいことだ。その手足は、日々新しい世界に触れている。前に話したときは、1ヶ月後に離乳食がはじまるんだと言っていたっけ。僕もまだ鋭敏になれるだろうか。
エレベーター、どっかにあったっけと言う。いろいろ見渡してみて彷徨いてみて、ないんだろうか外から行くやつなんだろうかと言って仕方なしにベビーカーを返しに行く。日記、あれまだ読めてなくてと言う。長いし、もっと縮小していくつもりだと言った。追って読むねと言った。長さもどうしていくかちょっと考えなくてはいけないと思う。ベビーカー置き場から戻ってみると、デジタル看板がかかっていた壁はエレベーターだった。
カフェに入って、一息つく。彼女と彼女の妹は抹茶パフェとパンケーキを食べていて、僕はおまかせでレモンスカッシュフロートをもらった。パンケーキにメープルシロップをどんくらいかけるのと妹が言うと姉がぜんぶじゃないと言う。ぜんぶかけると、皿の上にメープルシロップの池ができる。アイスクリームがストローで吸えないので、レジに行ってスプーンをひとつだけくださいと目の前のレジ係に言うと、大きなスプーンでよろしいでしょうかと返却口の陰からウェイトレスが飛び出してきた。お願いしますと言うととてつもなくドデカいスプーンをはいどうぞと渡された。とんでもないサイズで、なにようなんだろうと思った。ファーストバイトとかで使うやつなのかな。よく知らないけれど。飛行機の練習だと言って高い高いをすると、坊が満面の笑みで母親の頭をぽんぽんとたたく。恵比寿顔とはまさにこのことをいうのだろう。母になるということはどういうことなんだろうかと思った。
保安検査もあるしとちょっと早めに行って、じゃあ先に入っとくかとなる。疲れたー、と彼女が言う。授乳もあるし、お土産もおそらくなかで買えるだろうし、そうすると言う。日記、あれ何なん? ブログ的な? と言った。このまま一緒に帰らないかと言った。急にごめんねと言うのでいやいやと言った。楽しかったと言った。ばいばいと言った。またねと言った。元気でと言って手を振った。
モノレールへと向かっていく。駅の雑踏の中を歩いていく。スペインの闘牛士みたいな男がストリートピアノを弾いている。瑞々しい爽やかな音色が雑踏を包み込んでいる。いいメロディだと思った。Siriを起動して、タイプ入力で曲名と入れる。