果たして、小指は折れたのか?


先日の、小指ぶつけ事件のつづき。


お昼頃起きたこの失態を甘くみていた。
夕方になってだんだんと痛みが増し、
小指の一部が黒ずんできた。

しかし、夕方には仕事に行かねばと準備をした。
靴を履くと、擦れや圧迫からどんな歩き方をしても痛い。
いくら早く歩きたくても、速度を上げることができない。
職場でキビキビ動いている自分にとってはかなりのどかしい遅さ。


そして、到着するやいなやみんなの視線が一気にこちらを向く。
その度にみんなに説明する。哀れに思ったか、
同僚がみんなカバーしてくれてなんとか穏やかに仕事が始まった。
しばらくすると、オーナーがやってきた。
かくかくしかじか話したところ、意外な言葉が帰ってきた。

「今日か2週間慣お休みにしよう!」

・・・しばらく作業をしながら戸惑った。
帰国したくても航空券は高すぎる上に、この足では何もできない。
ゆっくりしようと思っても行動が限られる。
急な休みが嬉しいような、そうでないような気持ちが入り混じる。


急なヴァカンス到来!?

どう考えてもウェイトレスとして使い物にならない私。
突然休むことになり、同僚に申し訳なく感じる。
という4月末は、イースターや国民の祝日が続く日々。
しかしながらオーナーは、休暇の相談を以前からしよう考えていたらしい。

というのも、一人は妊娠していて夏以降に産休に入る。
親子で働く中国人は、揃って夏に帰国することを決めたばかり。
はたまた、オーナーは急に親御さんの体調不良で帰国をすることになった。

だから、私とあと一人の同僚がどこかのタイミングで
休暇を取らなくてはいけないという状況下にあった。
そこで、この小指の怪我をいいきっかけに休暇へと至った。

数ヶ月前私は、6月上旬に休暇の申請をしていた。
がしかしながら、その希望は叶えてもらえなかった。
実を言うと、他のスタッフが同じ日にパリ旅行の航空券を
購入していたことが発覚し、完全なる重複で忘れ去られていた。
落胆しつつ、足を引きずりながら帰宅した。



ヴァカンスの過ごし方

帰宅すると、夫はイースターのミサからまだ戻っていなかった。
何もすることがない私は、2週間のヴァカンスをどう過ごすか考えた。
パリに行くチャンスかも!と思いつき航空券をみると、
往復で一人頭約6000円というお手頃価格を発見!
来週なら歩けるだろう。これとホテルで安く収まるといいけど、
航空券の都合で6日も滞在することになるから結局高くつくかも…

なら、友だちに会いにいく機会かもしれない!
フランクフルトにいる幼馴染は5月に帰国するんだった。
ミュンヘンに行く友だちならいいかも!その前に連絡しなきゃ。

待てよ。あまり歩かなくていい、車の旅をするのはどうだろう!
いつの日か必ず行きたいと思っていた、
南フランスを巡るコートダジュールの旅!!
モナコやカンヌ、ニース、そしてマルセイユを巡るコース。
モナコでF1のコースやリゾートを満喫したり、ニースで美味しいものや
芸術を堪能したり、マルセイユではル・コルビュジエの建築を見学したり!
想像するだけでワクワクしてきた!
「モナコの観光」で検索し、グーグルマップにどんどん印をつけていった。
もう、明日にでも出発できる勢いで気分が高揚している!
ギラギラしながらパソコンに向かっていると、
夫が帰ってきた。

そして、開口一番
「君はヴァカンスを取る必要はない!」
私は急な休暇になったことをすぐに夫に連絡していた。
一緒に過ごせることを喜んでくれると思っていたのだが…

さっきまでのウキウキ感は一瞬にして散り去った


イタリアの救急病院

夫が言うには、
「休暇は自分の意志で取るもの。君の場合これは、事故扱いになる。
だから、今から救急病院に行ってケガのための休暇になるよう
申請する必要がある。だから、病院へ行こう!」と。

開いた口が塞がらない私を立ち上がらせ、病院へ向かった。
到着したのは、
22:00 緊急病院の受付で事情を説明した。
救急病院は、風邪、ケガ、体調不良、発作、大ケガなど
あらゆる人が時間に関係なくやってくる場所。
なので、私のような緊急を要しない人は後回しとなる。
一応車椅子に乗せられて待機させられた。
待合室には、50人くらいの人がいた。付き添いの人を合わせての数。
周りから聞こえてくるのは、4時間前に入ってやっと終わったという声。

全国共通認識だとは分かっているが、今夜は長期戦だ。

風邪や熱がある子どもたちは次々に呼ばれてゆく。
持病がある人や何らかの体調不良者も声がかけられてゆく。
いまかいまかと待っているが、一向に呼ばれない。
この間にも、救急車で運ばれてくる患者が3人はいた。

私は、スマホのゲームで遊んでいたが、集中できずにいた。
では、ドラマを見れば気が紛れると思い見始めたが、
音が周りの迷惑になるんじゃないかと、今度は気を使いすぎて疲れた。
こう言う時はイヤホンを持って行くべきだと気づいた。
夫はというと、お腹が空いたらしく近所のピザ屋で軽く食事をしに行った。

0:00 を過ぎた頃、徐々に待合室の人数が減ってきた。
そこに、一人の女性がピザの箱や袋を持って入ってきた。
配達ではなく、中にいる人への差し入れだろう。
すぐに出てきた彼女は、さっき夫が食べたピザ屋の店員。
奇遇な状態に驚きつつ挨拶していたら、
「残ったピザを持ってきたけど食べないって言うからあげる」と。
ちょうど何かを食べたいと思っていたので喜んで受け取った。
だが、病院の待合室でピザをがっつくほどの度胸はないのと、
あらゆるところを触った手で食べ物に触れたくなかった。
だから、私の前の席にピザを置いた。

1:00 不思議な光景を目の当たりにした。
一人の赤い髪の女性が病室から出てきた。
トイレへ入ったかと思うと、すぐに出てきて、
さっき私たちがもらったピザの隣に腰をかけた。
この瞬間夫と二人で「!?」となった。
するどい目つきでピザの箱を眺める彼女。
周りの目を気にしつつ、じっと見つめては目を外らし、
今度は、ピザの箱に手をおいた。
目の前で起こる疑問だらけの状況に夫と二人で笑いが出た。
私は夫に「ピザが欲しいみたいだからあげなよ!」と言ったが
夫はNOと即答した。彼女の不振な行動や目つきが気に入らないとか。
そして、勇気を振り絞れなかった彼女はピザを食べることなく中へ入り
その後戻ってくることはなかった。

2:00 みんなしびれを切らし始めた
待合室に残ったのは、救急病院であっても
急を要しない人たちであることが見受けられた。
肩が痛そうな人や足に違和感を覚えている人など。
看護師さんが誰の名前を呼ばなくなり、
診察は終わってしまったのかという不安がよぎる。
苛立ち始めた夫は、受付の人に物申した。
すると、「次に呼ばれるのはあたなの妻よ!」
という応えに、席に戻った。
それでも呼ばれたのはその1時間後だった。


ついに明らかになった、診察結果


受付から5時間経ち、ついに名前が呼ばれた!と思ったら、
待合室のほぼ全員が診察室へ通された。
そう、みんな骨に異常をきたす人たちだった。
瞬く間に次から次へとレントゲンを撮られた。
夜中の3時にそりゃ働きたくないのはわかるが、
レントゲン技師はぶっきらぼうなオバさん。
あれこれ質問してくるが、聞こえなくて聞き返す。
このままでは機嫌を損ねるのではと不安になるが、
これ以上悪化しようもないほど既に態度は最悪だった。
かなり空気を読んでなんとかその場をしのげた。

しばらくして、看護師さんが迎えにきた。
レントゲンを見た女医さんが発した診断結果は、

「あなたの右足小指はヒビが入っています。」


私は、折れていないという痛みを体験した。
骨折ならばあるくこともできないほどだと分かった。

そして最後に、
あなたはこれから10日間の自宅療養期間に入ります。と、
診察結果の紙を渡された。
アレッ、私の二週間の休みは?
半分以上が自宅で過ごすことになるの!?

夫が言っていたことがコレだった。
突発的なケガによる自宅療養。
つまり、この期間に入ると
10時〜12時、17時〜19時の間は自宅にいなければならない。
保健師さんか誰かよく知らないが、見回りにくるらしい。
不在の場合罰金や解雇になることもあるようだ。

4:00 救急病院をあとにした。
ということで、ヴァカンスではなく自宅療養となった今、
専業主婦としての日々を過ごしている。
もちろん、右足には夏を先取らんばかりのサンダルを履いている。


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