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アルセーヌ・ルパンの遺産

久しぶりに原作ルパンを纏めてちょっと見返していたんですが…
原作(旧)第60話「ジャリ」の中で、前からボンヤリと気になっていた事が、やっぱりどうにも気になってしまったので、その件について今回ちょっと調べてみたところ…五里霧中になってしまいました(苦笑)

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引っ掛かってるのは「ジャリ」におけるアルセーヌ・ルパンの遺産の問題なんですが…まずこの回は第58話「遺産7200億」とリンクしてるのかしていないのか?ってのがありますよね。まぁ基本的にパラレルな原作ではありますが、「遺産7200億」と「ジャリ」とは基本的にはリンクしていると考えていいだろうと思える訳で…だとすればルパン二世はアルセーヌの遺産を相続していないという事になります。

あるいは仮に「遺産7200億」とはリンクしていない、独立した一遍であると仮定しても…「ジャリ」を普通に読むなら、やはり二世はアルセーヌの遺産を相続していないように読めます。

※ニセムスコ(三世)を殺せば「遺産は全部オレのものになる」という二世の台詞をどう読むか?という問題。『遺産を相続していない二世が、三世が相続した遺産を狙っている』と読むのか、それとも『遺産を相続した二世が、三世が相続した分も狙っている』と読むのか…前後の流れも考慮しつつ普通に読めば、後者はどうしても少し苦しい感じになってしまうように思います(陣凶平が三世について語った「知ってるぜ アルセーヌ・ルパンから数千億の遺産を受け継いだという」という台詞は、二世も遺産を相続しているんだとすれば少し不自然な感じ。陣は『二世も遺産を相続した』という事を知らなかったんだとすれば辻褄は合いますが、三世が相続した事を知っていて、二世が相続したのを知らないというのは、それはそれで不自然な感じ)。

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僕が前から引っ掛かっていたのは『何故二世は遺産を相続出来なかったのか』って事なんです(『相続出来なかった』ではなく『相続しなかった・放棄した』という線は却下。相続出来るけど相続しなかったというんであれば、遺産を狙って三世殺害を謀る筈は無いので。一旦は放棄したけど、やっぱり惜しくなったので…なんてのはかなり苦しい感じ)。多分『服役中だから相続出来なかった』って事なんでしょうけど、果たして服役中だと遺産は相続出来ないのか?というのが疑問で。

で、今回ちょっと調べてみたんですが…
遺産の相続権が失効してしまうのって『尊属殺人(あるいは殺人未遂)で服役中』の場合に限る(尊属殺人ではない殺人の場合は失効しない)ようで。だとすれば、二世が父親アルセーヌの遺産を相続していないんであれば、彼が父親を殺害した(あるいは殺害を謀ったが未遂に終わった)からこそ相続出来なかったんだという可能性も考えられる事になってしまいます。

※本編中では二世の罪名は明らかにされていません。

アルセーヌ殺害なんてのは、どうにも二世のキャラクターにそぐわないだろうと思うんですが…もっと言えば、二世がアルセーヌを殺害したんであれば、三世がその件について一切言及してないってのも不自然なんですよね 。「二世は既に死んだ」とアルセーヌに聞かされていた三世が、二世によるアルセーヌ殺害についても真相を知らなかった…という解釈も出来るには出来ますが、二世によるアルセーヌ殺害といったようなスキャンダラスな事件を、三世に一切知られないようにするというのは極めて困難でしょう。あるいはまた、二世がアルセーヌを殺害したんであれば、三世はアルセーヌの仇討ちを託されていて然るべきだったんじゃないか?とも思えます。

果たして二世は遺産を相続したのかしていないのか…?
相続していないとすれば、果たしてそれは何故なのか…??

まぁ結局のところは『服役中の人間は遺産を相続出来ない』とモンキー・パンチが勘違いしていたが故の矛盾を抱えた回って事に過ぎないでしょうから、『服役中だった為に二世は遺産を相続していない』と解釈するしかないんでしょうが…そういった即物的・結果論的な解釈を捨てて、二世のキャラクターと三世の態度も無視して、『アルセーヌを殺害した為に二世は服役していた』と読むのも、それはそれでドラマチックで面白いかなぁと思ったりもします。

あるいは『二世はアルセーヌ殺害の濡れ衣を着せられて服役していた』とすれば、更にドラマチックかも知らんですね(そう解釈すれば、何故三世はアルセーヌの仇討ちを託されなかったか?の説明もつくような気もしますし)。
勝手な二次創作の種になりそうです。

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※以下、コメント欄よりの抜粋。
※僕の返信コメントのみを再掲しています。
※なので話の流れが通じない部分がありますが、御了承下さい。


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※Mさんへの返信(1)

更にもう一本の二次創作漫画を描く時間なんてのは、流石に僕にはもう残されてないだろうと思うのでアレなんですが…案を練るだけ練って遊ぶ分には楽しいですね。「健在ルパン帝国」のキングの件と、どうにか絡めてみても良いでしょうし、濡れ衣路線を突っ込んでいって「巌窟王」テイストに仕立てるとなかなか面白くなりそうだなぁと我ながら思ったりして。アルセーヌ殺害の濡れ衣を着せられた事を三世にはあくまでも伏せておいて、脱獄した二世は「ジャリ」の一件の後、復讐に向かうのでありますよ。

いやしかし…生前のアルセーヌは何故「父親は死んだ」と三世を騙していたのか、という問題が残ってしまうのが悩みどころではあります(つーかこれに関しては「ジャリ」本編でも何故だったのか、よく判らないんですよねェ。合理的な説明ってどうも出来ないだろうって感じ)。

> アルセーヌ・ルパンの遺産は二世には渡ってないのだと思い込んでました。
> 何の疑問もなしに。 

普通に読むとやっぱり、そう読めますよね。特に何も考えずに素直に読めば「二世は相続していない」と。じゃあ何故相続出来なかったのか?については、「服役中だったからだ」と漠然と考えてた僕と、「二世よりも三世が後継者に相応しかったからだ」と漠然と考えてたMさんとで違いが生じてますが…「二世よりも三世が後継者に相応しかったからだ」とする解釈も、それはそれでそれっぽい感じで「アリだなぁ」と思いました。何か、天才肌のアルセーヌと三世とに挟まれた二世は、努力の人・秀才型…といったような構図を持ち込みたいってのはあるんですよね、何となく何故だか。

「ジャリ」と「健在ルパン帝国」と「さらば愛しきルパン!」の繋がりはどう解釈すべきなんでしょうね。何しろ原作は基本的にパラレルなので、素直にパラレルだと割り切った方が多分座りがいいんでしょうが…敢えて「ジャリ」と「健在」と「さらば」が繋がっているとするなら、どう解釈すべきなんでしょう…?? んーー…。

初出時に『告白シリーズ』と冠されて、ひと繋がりだった「ルパン三世とアルセーヌ・ルパンの対決」「遺産7200億」「怪童」「ジャリ」を纏めて共通世界であるとしても問題は生じませんけど、同シリーズから外れている「健在」と「さらば」を含めようとすると、かなり厄介なんですよねェ。

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掲載順イコール時系列順という考えはまず捨ててしまわないと滅茶苦茶になってしまうので、矛盾を回避しつつ、三つの作品を並び替えるなら…とにかくはルパンの少年時代が描かれている「ジャリ」を先頭にするしかないのでーー

●「ジャリ」→「健在」→「さらば」
●「ジャリ」→「さらば」→「健在」

という二つの可能性しか無いんですよね。
そして此処で、アルセーヌと二世の生死についてを考え合わせればーー

●「ジャリ」→「健在」→「さらば」
アルセーヌ没/二世存命→アルセーヌ不明/二世没→アルセーヌ存命/二世存命
これだと、死んだ筈の二世やアルセーヌが「さらば」で生きていた事になるという極めて矛盾した流れになってしまうんですよね。普通に読んで、普通に納得し易い順序を考えれば、これしか無いだろうと思うんですが…死んだ人が生き返っちゃうのは不味い(苦笑) だからこれ、無理に「実は生きていた」「死んだと思われたのはフェイクだった」とか言い張らない事には成立しなくって。アルセーヌの生死に関しては、「ジャリ」の時は実は死んでなかった、遺産騒動の件は実は三世を試すテストだった…とか言い張ろうと思えば言い張れなくもないでしょうが、相当に苦しい感じではあります(苦笑)

ただまぁ、アルセーヌについては回避したとしても、「ジャリ」で死んだと思われていて実は生きていた二世が、「健在」で本当に死んだ…と思ったら「さらば」でやっぱり生きていた…ってアンタ一体何回死んだと思われてんだよ!となっちゃうのが難(苦笑) 「二世が死んだ」と三世は何度も騙された、と言い張れなくはないですが、そうするとかなり学習能力が無いシリーズ。

●「ジャリ」→「さらば」→「健在」
アルセーヌ没/二世存命→アルセーヌ存命/二世存命→アルセーヌ不明/二世没
これなら、アルセーヌも二世も『死んだと思われていた』のは一度ずつなので、「さらば」で実は生きていました、となってもまぁ辛うじてセーフな感じ。しかしこれはバッドエンドですね(苦笑)

バッドエンドはちょっと避けたいので、「ジャリ」→「健在」→「さらば」という順なんだとして、此処に『尊属殺人』案をそのまま放り込むのは、ちょっと無理でしょうから、『尊属殺人(濡れ衣)』案を嵌め込めば、大団円になりますね。「ジャリ」の際、二世にアルセーヌ殺害の濡れ衣を着せていたのが「健在」のキングだったとすれば…キングへの復讐に向かった二世が返り討ちされたのが「健在」…で、実は生き延びていた二世と再会するのが「さらば」…といった感じで、結構有機的に結び付くような気がします。「健在」と「さらば」の間が埋められて丁度いいかも知れません。

しかしこれだと二世があまりにも役に立ってないので、「健在」ラストのルパンによるキング暗殺が、実はあの後で失敗、キング達の反撃によって窮地に立たされるルパンと次元…を『実は生きていた(苦笑)』二世が救出、親子が協力してキングを倒すーーなんてのは結構綺麗かなぁと思ったりして。協力して戦闘する中で二世が「三世!」「次元君!」なんて声を掛けたりなんかすると、なかなか乙な感じ。

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それはそうと「母親が存命なのに何故ルパンは自分の誕生日が判らないのか?」ってのは盲点でした。言われてみれば確かにそうですね。んーー…何故なんだ?? 

あるいは母親が継母だったとしたらーー知らなくても不自然じゃあないかも知れないですね。ルパンのあの思い入れようからすれば継母ってのはちょっと不自然ではありますが…帝国はあの調子ですから、抗争に巻き込まれた実母は、幼いルパンを残して死亡。継母に育てられたルパンにとっては継母こそが掛け替えの無い母親である…とか。実母を喪っている経験が、彼の虚無感の一部を形成する原因となった…とか。そうしてみれば、何だかあの「さらば」の母親は、ちょっと若過ぎるような気もするんですよね。…と無理に継母説を補強したりして(笑)

ん。生前のアルセーヌは何故「父親は死んだ」と三世を騙していたのか、について「合理的な説明は出来ないだろう」と言いましたが(※)…尊属殺人濡れ衣案を放り込めば、復讐に燃える二世が、三世を巻き込むまいとして、「自分は死んだと三世には伝えておいてほしい」とアルセーヌに頼んでいた…とすれば何とか辻褄が合うような合わないような…?? ただし、そうなると、脱獄後に何故ノコノコと三世の様子を探りに来たのかが謎だったりするんですが(苦笑) 死を覚悟した復讐へ出発する前に、成長した息子の顔を見ておきたかったーーとでもしますか。

※敢えて補完するなら…『アルセーヌと二世は衝突して絶縁していたので、アルセーヌは二世が死んだものとしていた』ってところでしょうか。これだと二世が遺産を相続出来なかった理由も出来ますね(アルセーヌが遺言で指示した、と)。あれ?説明ついちゃったなぁ…寂しい結論だけど。しかしまぁこれだと、「さらば」とリンクさせるのは、かなり苦しくなります。
あるいは『アルセーヌと二世が何事かを計画、その計画の為に敢えて二世は死んだ事にしておいて、水面下で行動していた』と補完する事も出来なくはないでしょうが…肝腎の二世が投獄されちゃってたんだから駄目ですね。つーか、水面下も何も「死んだ」と思わされてたのは三世だけだし。
まぁ…死んだ事にして裏で立ち回ってた二世が、罠に嵌められて投獄されてた(此処でもまた尊属殺人濡れ衣案が使えますかね)とすれば一応筋は通るような気もしますが、かなり煩雑な感じ。濡れ衣だとはいえ、三世がアルセーヌ殺害を感知していないのも大きな矛盾点。ん??…何にしろ三世が何故アルセーヌ殺害を感知していないのかが問題になっちゃうのか尊属殺人案は。参っちゃうな。

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※Kさんへの返信

『モンキー・パンチだから』ってのは多分正解で、そもそも辻褄を合わせようというのが不可能な案件に溢れているのが「ルパン」だとは思うんですが…それでもまぁ知的遊戯として「どうにか出来ないだろうか」とあれこれ考えるのは、面白い作業ではあります。

>「偽ムスコ」といっていたのも嘘だったので、
>「遺産は全部オレのものになる」というセリフもただのでまかせ 

まず『モンキー・パンチだから』式の割り切り方をすれば、あの回って確実に前半と後半で割れているんですよね。前半で描いた内容を後半で全部チャラにしてしまってて、あれはホント行き当たりばったりに進めて、途中で気が変わって筋書きを変えたんだろうとしか思えない訳ですが(苦笑)…それはまぁそれとして、敢えて真面目に考察するなら…前半の二世の目的ってのは、Kさんが指摘しているように「嘘だった」んですよね。何でそんな嘘をついたのか?って事を突つき始めると泥沼になってしまうので、そこは黙殺してしまうとして(苦笑)…二世が三世を偽者だと思っていたという事も、彼を殺すつもりだったという事も、全て全くの出鱈目で、実際は彼の成長ぶりを確認しに行ってた訳ですが、だから『遺産を巡ってのあれこれ』全ても嘘であるとは、これは言い切れないだろうと思うんです。「遺産は全部オレのものになる」という台詞(三世が相続した遺産を狙うという目的)は確かに後半でいきなり引っくり返されて、実は出鱈目だったと判るんですが、『三世の遺産を狙っていた訳じゃない』って事と『二世も遺産を相続している』という事とはイコールでは結べないですよね。『二世は遺産を相続していない』し『三世の遺産を狙っていた訳でもない』ってのが妥当な解釈じゃないでしょうか。

※Mさんへの返信(2)

>「三世!」「次元君!」 

我ながら結構気に入ってます。わはは。三世に対しては子供に対する姿勢で、ちょっと厳しめ、やや高圧的と言うか厳格な感じで接するんだけど、息子の友人であるところの次元に対しては、大人同士っぽいような扱いで、多少相手を尊重するといったニュアンスで、紳士的と言うのか丁寧と言うのか、そんなような姿勢で接するってとこがミソなんですよね。

> 自分のサイトに母親関係の妄想を書いた 

早速読み返してみました。僕はこの文章、以前絶対に読んでますから、もしかすると、Mさん説に感化されて、それが潜在意識的に潜んでたのかも知れません。その線がかなり濃厚な気がします。

(※初出 / mixi / 2008年12月13日)