池森 裕毅

メンターしたり、客員教授したり、経済産業省とエコシステム作ったり。 最近では様々な大学…

池森 裕毅

メンターしたり、客員教授したり、経済産業省とエコシステム作ったり。 最近では様々な大学で活用される起業プログラムの監修をしています。あと起業家向けオンラインサロンもやってます。 https://lounge.dmm.com/detail/1034/

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    日暮里で気ままに暮らす僕。 たまの休日には女の子と街を練り歩き、ちょっとしたグルメなんかを味わう日々。

最近の記事

【音声版】ギリシャ料理屋「THE APOLLO」

小説を読み上げていただきました。

    • サロン「月のはなれ」

      その時僕の目の前には彼女が座っていて、そして彼女の目の前には僕が座っていた。 久しぶりの再会ということで、本来ならばもう少し喜びを表現するところなのかもしれないが、仕方ない、僕たちは上手い別れ方ができなかったのだ。 これがもう少し年をとっていたのならば、後腐れなく(少なくとも表面上、体面上は)自然に離れられたのかも知れないが、それをするには当時の僕たちはいささか若すぎた。 結果として僕は彼女を傷つけることになったし、そして彼女もまた僕を傷つけることになった。 そのようなことが

      • 焼肉屋「銀座コバウ」

        男と女の間には、マリアナ海溝よりも深い溝がある。 そして人類は何千年もの間その溝を埋めるよう努力してきた。 遥かな昔には哲学者が語り、そして中世では演劇などの芸術を通しながら人々は解決を試みた。 しかし、それはまだいまだ誰も達成していない。 結局の所、マリアナ海溝を埋めるという行為はおよそ人類には無理な事なのだろう。 銀座コバウにて彼女と話している時に僕が感じたのは、そういう事だった。 「ご馳走したと言っても、それは男性が勝手にしてるだけよ」 すでに不機嫌になっていた彼女は

        • ギリシャ料理屋「THE APOLLO」

          その音が鳴り響いた時、僕は深い眠りについていた。 夢の中では、昨日の夕食のベースパスタが現れ、そこに卵をたっぷりと絡め取って食べている、まあ有り体に言えばすっかり眠っていたわけだ。 そんなわけでその音がスマートフォンの着信だと気づくまでには(というか現実と夢をリンクさせるまでには)すっかり時間がかかり、そしてご丁寧にもその音は僕が起きるまでは鳴り響いていた。 「あなた、今THE APOLLOにいたでしょ。今はどこに向かってるの?」 通話ボタンを押すなり聞こえたその声は、果たし

        【音声版】ギリシャ料理屋「THE APOLLO」

        【音声版】ギリシャ料理屋「THE APOLLO」

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          9本

        記事

          パン屋「ポワン・エ・リーニュ」

          席についてオーダーを伝えると、しばらくしてウェイトレスが籠を持ってきた。 中にはシンプルだが手の凝ったパンが5種類ほど積まれている。 ほんのりと湯気がたっており、それだけで十分すぎるほどの温かさがわかる。 その内の一つ、クルミパンを僕は手にとった。 皮はパリッと焼かれている。 試しに2つに割ったところ、中は対象的にモチモチとしていた。 およそおそらく理想的なパンと言えるだろう。 同時にサーブされたエシレバターの封を開ける。 皿に塩が添えられているのをみると、おそらく無塩バター

          パン屋「ポワン・エ・リーニュ」

          おにぎり屋 「ぼんご」

          その人だかりを見つけたのは、駅へと向かって歩いているところだった。 その日は彼女の知り合いがライブ演奏をするということで大塚にあるライブハウスへと向かい、二人で演奏を聞いてきたのだ。 ただ不幸なことにその演奏はお世辞にも上手とは言い切れず、控えめに言って我々の好みとはかけ離れていたものだった。 それでもなんとか友人のパートまでは聞き終わった我々は、あとは逃げるようにして撤退してきたのだ。 体の疲れを少しでも軽減しようと、まるでインドの街道を我が物のように闊歩する牛のごとくゆっ

          おにぎり屋 「ぼんご」

          蕎麦屋 「港屋」

          蕎麦に甘辛いラー油をかける そもそもその話をした時から彼女の様子は思わしくなかった。 それを少しでも僕が気にかけていたらこんな事にはならなかったかもしれない。 目の前に置かれた器を前にして、僕は泥臭い(そして鈍感な)牛のようにただただ立ち尽くす他なかった。 それはようやく長い長い夏が終わり(南極に流れる永久凍土のように果てしない夏だった)ほんの僅かな期間、暑からず寒からず、ちょうどよい季節(世間で言う秋だ)になった頃、僕がなんのけなしに彼女につぶやいた発言がきっかけだった。

          蕎麦屋 「港屋」

          ドーナツ屋 「HOCUS POCUS」

          「今京都にいるんだけれど、東京は何時頃かしら?」 スマートフォン越しに彼女は僕に言った。 唐突のことですぐには思い浮かばず、僕は壁に視線を移した。 コンクリートの壁にはシンプルな針だけの時計が飾られていた。 幾分見づらいそれを確認すると、どうやら今は2時のようだった。 僕は今永田町にあるHOCUS POCUSにいる。 気の利いたドーナツ屋で、都会らしくオシャレな(嫌味なぐらい手の凝った)ドーナツが沢山売られていた。 僕のお気に入りは「きなこ」のドーナツだ。 下地が黒糖の混

          ドーナツ屋 「HOCUS POCUS」

          すき焼き屋 「車屋別館」

          「誰と、どこで、何を、食べたのかが、重要なのよ」 彼女は僕の方をちらりとも見ずに呟いた。 その言葉はそれからしばらく辺りを漂い続け、やがて力がなくなったのか、店の片隅にと消えていった。 僕らの手元にはすき焼きの鍋があった。 四角い小振りな鍋で、女将が丁寧にそこに肉と野菜を敷き詰めていた。 ここ新宿にある「車屋別館」は僕が起業したての頃にお世話になっていたお店で、女将が一人ひとりについてすき焼きを仕上げてくれるスタイルだ。 昔初めてきた時は、そのような待遇を受けたことがなかっ

          すき焼き屋 「車屋別館」

          願望と爪の相関性について

          「本当は結婚したいと思ってるでしょ」 唐突に、本当に唐突に、彼女は呟いた。 同時にそれは、まるで溶けかけたアイスクリームを温めたスプーンで拭うようになめらかだった。 その時僕はベッドの縁に腰掛けながら、彼女が脱いでそのままにしていた下着を眺めていた。 彼女が身につける下着はいつも黒か赤に限られていて、今回は黒いTバックにフロント部分が赤いレースのものだった。 女性の下着というものは大きく分けて二つしか無い。 女性自身のためにつけるものと、男性のためにつけるものだ。 彼女の場合

          願望と爪の相関性について