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デジタル改革アイデアボックスに参加して見えてきた、日本の大きな課題

相変わらずデジタル改革アイデアボックスに参加しています。

毎日のように顔を出していると、「これ前も見た問題だな」とか「これは別のアイデアと関連しているな」というのが見えてきます。「紙ベースの手続き」みたいに分かりやすいものもありますが、普段は見過ごしがちなものもあります。その中で自分が特に重要だと考えているものを挙げてみます。

途中で挙げているアイデアは自分のもの、あるいは自分が良いと思ったもののみにしています。「晒しあげ」というのは含まれていません。

税制・補助金の問題

まず一番マズいなと思ったのは、日本の税制・補助金の考え方に大きな問題があることです。特に次の2つが目立ちました。

・二重基準
・望ましい行動をすると損になる

二重基準とは、同じ意図を表すにも関わらず、管轄省庁によって違う解釈がされていることです。これによって、二度手間が発生します。

例えば「所得に応じたお金を払う」というのは例えば所得税だけでなく、標準報酬月額も該当します。これが全く別に作られているのはおかしくないですか?

また、「医療費と医療費控除」のように、片方がもう片方を含んでいるべきものが、そうなってないものもあります。具体的には、健康診断で再検査したときの診察は医療費ですが、「予防」のため医療費控除には該当しません。予防医療を推進しているのに変じゃないですか?

望ましい行動を取ると損になる代表例としては、自分が書いた人気アイデア「10万円の壁」があります。「10万円までは経費で落とせるが、それ以上は手続きが面倒なので拒否される」という問題です。

これによって高性能PCを買って生産性を上げようとしても「高いPCを買うのは(値段の差以上に)損なので買わない(買わせない)」という望ましくない行動が生まれます。

また、IoTの補助金はクラウドサービスは対象外となっていますが、クラウド推進の流れと逆行しています。オンプレはもう嫌。

逆に望ましい行動を増やすために、控除を増やした方がいいというアイデアも書いてます。

この問題は探せばもっと出てくると思います。

Shift_JIS問題

次はShift_JIS問題です。EUC-JPや、メールでのISO-2022-JPもありますが、あえて「Shift_JIS問題」と言います。

あえて「Shift_JIS問題」と呼ぶ理由は、Shift_JISを新規で採用するシステムがいまだにあるからです。このアイデアボックスも最初はCSVをShift_JISでダウンロードさせる仕様でした。今はUTF-8が選べるようになってます。

なぜShift_JIS問題が重要なのかというと、使える漢字に違いがあるからです。有名どころでは、髙(はしごだか)、﨑(たつさき)、𠮷(つちよし)とかはShift_JISでは対応していません(前2つはCP932やShift_JIS-2004だとちょっと違いますが)。

これによって、アイデアボックスには「外字をなくして欲しい」「使える文字を制限して欲しい」という投稿が溢れています。それUnicode対応したら普通に使えるから!JIS第二水準までしか使えないのが問題だから!

規格としての「外字」については議論は終わっていて、「戸籍統一文字」もUnicodeの異体字として収録されています。今後「外字」が発生する可能性はゼロではないですが、Unicodeに収録する方針なので、ほぼ問題はありません。

もちろんUnicodeはそれはそれで大変です。JavaはUTF-16なのでサロゲートペアを考慮しないといけないし、異体字セレクタ(Unicode IVS)もあるし、人名に🥟とか使われても困るのでバリデーションは必要です。ちなみにフォント問題はIPAexフォントで解決しているらしい。

Unicodeはそれはそれで大変ですし、どこかは妥協しないといけないとは思いますが、世界が絵文字でコミュニケーションしている時代に未だにShift_JISを前提とした議論なんてレベルが低すぎて恥ずかしいのでやめて欲しい。レガシーエンコーディングのために使う漢字を制限されるなんて本当にありえないわけです。

で、何でShift_JISが使われているのかというと、多分理由のほとんどは「CSVをExcelで扱いたいから」です。でもこの用途にはBOM(Byte Order Mark)を付けるだけでOKです。まあBOMもないに越したことないですが、Shift_JISよりは5000兆倍マシです。

あとShift_JIS問題が解決したとしてもCSVをExcelで扱うのは不便なので、CSVエディタを開発したらいいんじゃないのというアイデアも出しています。

Shift_JIS問題って根本的にはExcel、Windowsに慣れ切ってて、そこから離れない、思考停止しているところが問題です。これはいくら言っても新規システムに「IEのみサポート」を止めようとしないのと同じです。思考停止が一番悪い。

レガシーと言えばShift_JIS以外にもXMLも該当します。RSS/Atomのように広く使われていて枯れているものはいいと思いますが。

ガイドラインが間違ってる・古い問題

暗号化した添付ファイルとパスワードを同じ経路で送る、いわゆるPPAP問題がありました。これの「犯人探し」がありましたが、JIPDECは明確に否定しています。まあそもそもPPAPという言葉を作ったのがJIPDECの人みたいですが(少なくとも2017年からは使ってた模様)。

過去の経緯はともかく、「PPAPは無意味」というガイドラインがないため、PPAPが広まっていたのは否定できないと思います。これに限らず、「パスワードの定期更新」のように、ガイドラインが古すぎることによる害は色々あります。根っこを絶たないとダメという提案を一つ。

その他にも例えば、非機能要件に「変更容易性」が書かれていない問題を見つけました。コメントにはユーザビリティが不足しているという指摘もあり、もっともだと思います。

逆に「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」のように優れたドキュメントもあるのですが、これが広まってないよというのも言ってます。

人材の問題

これもよく指摘されています。

・ITを使いこなせる人材が少ない
・ITに理解のない偉い人が邪魔をする
・IT人材の待遇が悪い

自分は前の会社も今の会社もそれなりには評価されているし(上を見たらキリはないけど)、むしろプログラマーが特権階級になるのを危惧している方なんですが、うちの会社でもSIerのSES出身の人から、前は酷かったという話をよく聞きます。自分が最初に投稿したアイデアもこれです。

一つは「ITに無理解な上司」があります。この手の話は愚痴が多いのですが、比較的温厚(?)なアイデアを載せておきます。個人的には資格偏重はそれはそれでどうかと思いますが、少なくとも政府関連のシステムは資格必須でもいいと思います。

あとは知識が古すぎるとか、資格周りの問題。

あとは教育の話題も多いです。

「国産」に期待する問題

みなさん、結構「国産」に期待しているんですね。びっくりしました。「京」「富岳」のようなスーパーコンピュータはすごいですし、ネットワーク分野は期待できると思います。

ただ、ハードウェアは微妙ですし、ソフトウェアは全く信用していません。正確には、ゲーム業界(ガチャゲー除く)やSaaSベンチャー企業、OSSに期待するのは分かりますが、SIerに期待するのは全くもっておかしいです。脱SIerのポジショントークですけど。

安全保障やサプライチェーンを危惧するのならまだ分かりますが、ダメな「国産」を推進するアイデアが多いのは本当に意味が分からないです。そんなものより本物が必要です。なので「国産」に賛成したのはこれ1つだけ。

マイナンバーカードへの期待の高さ

個人的には過去に嫌なことがいろいろあって(ご察しください)マイナンバーカードを取ったのはつい最近、2019年なんですが、結構期待する人は多いです。

マイナンバーカードってセキュリティはしっかりしているんですよ。カードも3回番号を間違えたら物理的に使えなくなるし。ただ使いにくい。APIがIF01, IF02とか、Developer Experienceが低い。

あと、マイナンバー自体の扱いもよくない。よくよく考えるとマイナンバーって「ただのID」なんですよね。最悪変更もできる。でもなぜか「知られたら死ぬ」レベルで腫れ物を触るように扱っていました。

万能扱いはどうかと思いますが、まあいいんじゃないでしょうか。

なんだかんだで楽しんでやってます

最初は11月頭で止める予定だったアイデアボックス、個人的には予定通りに終了するのに賛成だったのですが、なんだかんだで投稿を続けてます。

結局続けているのは「結構楽しいから」です。日本をどうしたいというのはあまりないんですが、日本にいて窮屈さはあまり感じません(一番窮屈さを感じるのはTwitterの「正義主義」です)。

なので他の国に移住したいとは思わないし、そう思わせない国であってほしいとは思います。



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