見出し画像

ラーメンのシミをとらなくちゃ

他拠点ライフと言えば聞こえがいいけど、これはフーテンの寅さんLifeだと思う。知らない街で知らない人に出会う。出会いはコインランドリーからはじまった。あなたの知らない名もなき町がある。ヒトと町のハナシを書き残しておきたくなりました。
#大人はシゴトと恋でしか変われない

池松潤(いけまつ じゅん)
恋愛小説家/ サイボウズ式第2編集部 / アウトプットLAB 情報発信学 SNSコーチング ※登壇・イベントなどは ⇒ コチラ

画像1
画像2

浅草から外国人がすっかり居なくなってホテルも3割は閉館してしまった。僕のお気に入りの温泉付きコワーキング&カフェのあるホテルは倒産してしまった。それでも建設予定をしていたのはコロナ禍前だったのかホテルが新しく建っている。というわけで供給過剰だからだろうか、信じられない値段で素敵なところに泊まれる。

画像9

ネットだけでは分からないのが街の雰囲気だ。人に人相があるように街にも人相がある。浅草寺から西に向かうと古いお寺が並ぶ。お線香の香りがする町だけど、西浅草から稲荷町と入谷に挟まれたあたりは有名な名所旧跡があるわけでもない。だからガイドブックやネットに情報が載っていない。あなたの知らない名もなき町がある。

画像9

通りから入った細い路地を抜けると秋葉神社というのがある。現在の上野駅から秋葉原駅まで鉄道が延長されて「秋葉の原」の土地が払い下げられたからココに移転したらしい。小ぶりの神社で雰囲気がいい。神社らしい空気が流れている。お参りをして手入れされた玉砂利の参道を抜けると下町にまた戻った。ランドリーバックを抱えて歩く。

画像4

小さな公園の近くにコインランドリーがある。綺麗でさっぱりしている。映画「おとこはつらいよ」主人公のフーテン寅さんは洗濯はどうしていたのだろう。時代的にそんなのがあるわけもない。フーテンの池松は割とマメに洗濯をしている。シャツはクリーニング屋でもいいけど下着とかはそうはいかない。手であらっても干して置くのもなんだから結局コインランドリーになる。最近のコインランドリーは洗濯と乾燥が一体になっているから手間が随分と省ける。約1時間のあいだに企画書くらいは書ける。ここにはWi-Fiも電源もある。素晴らしい。僕は隅の椅子に座って薄いノートPCを広げた。

画像5


ポニーテールの女性は靴を洗っていた。彼女は窓際から空を眺めている。紺色のニューヨーク・ヤンキースのキャップが似合っている。お気に入りの靴が汚れたのだろうか。裸足の足を椅子に抱えるように所在なげに座っていた。映画ならココで最悪の出会いからはじまるラブストーリーになる。でも現実ではそんなことは起こらない。しばらくするとスウェット姿の爺さんが入ってきた。「あれぇ?ええ?」いきなり千円札を突っ込もうとしても入りませんよ。こうやってね。このボタンでね。とタッチパネルの使い方を教えてあげる。「ほぉ~。魔法のようじゃ。ありがとうよ」女性がクスっと笑っていた。江戸の下町は人情の町。山の手東京とは違う。僕たちは銭湯の話題で盛り上がった。三人とも銭湯好きだった。尋ねると女性は「よく行く銭湯のコインランドリーには靴のは無いんですよ」と言う。つま先で歩いて乾燥機に入れ直すとちょこんとまた椅子にすわった。そのあと爺さんはどっかへ行ってしまって二人だけになる。僕はPCに向き合った。彼女は白いコンバースが乾くとおススメの銭湯のハナシをしてから行ってしまった。

画像10

コインランドリーのラジオ番組が流れている。乾燥機がまわる微かな音が加わると寂しさが増した。番組で木村石鹸のSOMALIを使っていることを話している。入口のパネルとチラシを眺めた。そういえばイケウチ・オーガニックの阿部社長がセンタク会議で一緒だったひとが木村社長だったのか。阿部さんに今治工場で会ってから2年が経った。時間が経つの早い。振り返るとあの頃から全国でワークショップとか講演で旅している。すでにあの頃から寅さんLifeは始まっていたのかもしれない。

僕はコインランドリーの乾燥機の静電気が嫌いだ。あの静電気は凄い。カラダに悪そうだしTシャツの着心地が台無しになる。低温乾燥にSOMALIを使ったコースは200円ほど高いのだけど使ってみたら静電気のバチバチもなくてフンワリと仕上がった。アドレスホッパーのQOLが少しあがる。洗い終わったTシャツに顔をつけると「何も匂いがしない・いい匂い」がした。すこし小腹が減ってきた。

画像7


コインランドリーを出て古びたラーメン屋に向かった。僕は普段1日に1.5食しか食べない。ハードな運動が減っているし年齢的に新陳代謝しないので食事は絞るようにしている。大病をしてから二度目の人生の自転車ロードレースに出るために17Kg減量してから食事への感覚が変わった。だけど今日はガッツリとラーメンをたべたくなった。ヒトの温もりに触れたかったのかもしれない。壁に書かれた「うま煮そば」が気になって仕方がなかった。

画像7

熱くて火傷しそうな暑さにフーフー言って食べたらシャツに汁が飛んでいた。お店の叔母さんが「あらあら。シミになっちゃうよ。よかったら使ってね」と濡れたタオルをもってきてくれた。困ったときはお互いさまの人情が嬉しい。

お勘定を済まして外にでると、さっきの白いコンバースのポニーテールの彼女とまた逢った。近くの銭湯に行くらしい。知らない街で知らない人に出会う。温かく柔らかな風が僕たちを追い越していった。今日もすこしいい日になる気がした。

画像8


#恋愛小説は町に物語を生み出す
#大人はシゴトと恋でしか変われない



最後まで読んで頂きありがとうございます! また覗きにきてくださいね スキ♡を押していただけると励みになります コメントをいただけると嬉しいです 感想をツイートして頂ければもっと嬉しいです ありがたいなぁ。よい日をお過ごしください。