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「蜂に刺された!」って、誰が診るのか?

このお話、ジョークのようで実話です。

ちなみにタイトルのフォトと以下のお話は直接関係はありません。フォトのムービーは「下校中の蜂刺され」アナフィラキシーショックの学習ムービーです。

この話を聴きながら思い出したのは「生きる」(黒澤明1952年)のワンシーン、役所に陳情にやってきた主婦グループが担当課が違うという理由であちこちたらい回しされ、最期に最初の課に戻ってくる一幕。以下、「生きる」とそのシーンについての説明をブログから引用します。

上記から引用、「ドブを埋めて公園を作ってほしいという市民の陳情が市民課に来ていた。しかし、縦割り行政の組織では、所管の公園課に回し、公園課は衛生課に回し、次々と盥回しにして、しかたなく議員のところへ行くと助役に回り、最初の市民課に巡り巡ってくる。お役所仕事を皮肉っているところが愉快だ。」

で、肝心のストーリーは次のような展開。

ここは120床の救急病院。外来部門の看護師さんが救急外来を回り持ちで担当しています(救急専門の看護師はいない)。常勤医は、昔の臨床研修を受けており、いわゆるストレート研修(医学部卒業と同時に専門科を選択しその科を中心に研修を積む)の時代の医師。内科は循環器内科、腎臓内科、リウマチ内科あたりが常勤、その他、形成外科、整形外科、外科、泌尿器科が常勤していて、その日は皮膚科の非常勤が外来を担当していました。

38歳女性、庭の手入れをしていたら蜂に刺された。痛み、局所の腫れと発赤で受診。受付から救急外来に案内され救急担当の看護師さんが医師に連絡します(そういうルール)。

看護師「内科の◯◯先生ですか? 38歳女性で1時間位前に庭の手入れ中に蜂に刺されました。腫れと発赤があります。診てもらえますか?」

内科の◯◯医師「それは内科じゃないし、内科では診れないよ」

看護師「分かりました」

看護師「形成外科の△△先生ですか? 38歳女性で1時間位前に庭の手入れ中に蜂に刺されました。腫れと発赤があります。診てもらえますか?」

形成外科の△△先生「蜂に刺されたの? 針は残ってるの? 針が残っていれば形成で診るけど、針が残っていないんだったら形成じゃないな」

看護師「針は残っていないようです」

形成外科の△△先生「じゃ、他の科に診てもらって」

看護師「分かりました」・・・今日は皮膚科がやってるし、皮膚の病気だし頼んでみよう・・・。

看護師「皮膚科の□□先生ですか? 38歳女性で1時間位前に庭の手入れ中に蜂に刺されました。皮膚の腫れと発赤があります。診てもらえますか?」

皮膚科の□□先生「!?(やや絶句気味、なぜ僕が診るの?)アナフィラキシーって内科でしょ!?」「内科で診てもらって」

看護師「・・・。」

読者、笑い、やがて深い溜め息・・・。

この話を聞いてこれはジョークだな、って思いました。

医師として卒後研修で救急医療をしっかりトレーニングしないとジョークのようなことになってしまうな、さらに、ここに出てきた医師たちはそのトレーニングができていないので適切に行動できなかったのね、と解釈しました。

医学部の授業ではアナフィラキシーショックは教えられているはずですが、それを学んだかどうかはわかりません。さらに彼らが卒業し指導を受けた先輩医師が救急患者に対してどのような態度を取っていたか(お話のなかの内科医、形成外科医、皮膚科医は、専門じゃなければ診たくていいという行動を先輩から学んでいるのだろうと思われます)、そして、先輩医師にどの程度の救急医療の知識と技能があったのかが問われます。といってももう独り立ちした医師なので、自分で考え、自分で態度を習得し、できなかったことができるようになる学習をするのは自己責任と学習能力、動機付けになります。

このようなお話(怖い話でもあり悲しい話でもあり、ある意味、ジョークとして態度技能学習の動機付けに使えます)はおそらくどこにも転がっているおはなしだと思います。

この状況をどうやって改善するか、が僕たちの関心事でありいろいろなプロジェクトを推進する理由や方向性になっています。



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