救急クイズ:正解

山田さん、70歳男性、若いときから高血圧、糖尿病を指摘されるが放置。10年前に心筋梗塞で入院。その後急性心不全で何回か入院したことがある。あるときは自宅の2階に上がるとき階段の途中で息が切れてしまい、しばらく休むくらい調子が悪くなったことがある。調子が悪いので病院に行くと慢性的な心不全状態で労作時には心不全が急に悪くなると言われ、強心剤を処方された。現在は日常生活は何とか自分でできる。
普段の状態は、顔色は良くない(タバコを吸っていたせいだと思っている)、表情は普通で、息をするときやや口をすぼめる感じ、息の回数は1分間に20回くらい。体を動かすとすぐに「疲れた」「息が上がった」というのが口癖。足の浮腫みはない。
山田さんは町内会の集会に出かけ、久しぶりに同年代のご近所さんたちと出会います。やや遅れて会場に着いた山田さんはいつものように「息が上がっちゃった」といいながら、いつものようにフゥフゥ息をしています。傍で見ていた人が「あの人、調子悪いんじゃない? 顔色も悪いし息も苦しそうにハァハァしているし」「お婆ちゃんが心不全になった時と同じような感じだけど」と会合の世話人に伝えます。
会合の世話人は心配になり山田さんに近づき伝えます。「山田さん、息が上がってくるし動作けど、大丈夫?」
山田さんは「いやー、疲れたね、息も上がって」といつもの口癖を繰り返します。
世話人はさらに心配になり、「疲れて息も上がったの? 大丈夫? 医者にかかったほうがいいんじゃない?」と伝えます。
山田さんは「いやー、いつもこんな感じで。心臓が悪いから」と気に留めない感じです。
さて、今の山田さんの状態はどのような状態でしょうか?この状態を表現するとすればどういえばよいでしょうか?


正解(の例)は・・・。
久しぶりに会ったご近所や、そもそも普段の山田さんを知らない世話人さんは、山田さんの病状の悪化を宣言することはできません。
なぜなら普段の山田さんを知らないから。「悪化」とは「いつもと比べて」悪化したことをいうのでビフォー・アフターの比較が悪化・変化・急変の判断には不可欠です。


山田さん自身、自分の状態をよく理解してるようなので「いやー、いつもこんな感じで。心臓が悪いから」という表現が最も適切だと思います。
山田さんの普段の様子をきちんと記憶している人がいれば、今の状態は普段と比べて明らかな変化(悪化)はない、と言えるかもしれません。
現実には家族であっても、家族の普段の様子を記憶している人はきわめて希です。


記憶するいつもの様子は、呼びかけたときの反応(呼ばれた方をすぐに見るか)、顔色、表情、姿勢、息の仕方、しゃべり方、食べ方、いびきのかき方、歩き方。
これらの項目について見た様子、音などを言語化して頭に記憶しておきます。
多くの急な病気はこれらの項目の急な変化として発見することができます。


ま、ここらあたりにしておきます・・・。

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