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録音 第2稿

前の「録音」はこちら。
https://note.com/ikedarego/n/n19a55b275cdb
渋谷悠氏の指導の下、以下のモノローグに生まれ変わりました。
以前との違いをぜひご覧ください。

『録音』 

(スーツ姿の女性が、上司に向かって話す)

え?山城課長がクビじゃないんですか?私が?私がクビなんですか?
山城課長がベタベタ触ってこなければ、こんなことになってないと思うんですけど。
スキンシップも何も、私、課長に何度も何度も仕事中にやめてほしいって言いましたよね。
‥‥‥笑顔は我慢してたんです。喜んでないです。喜んでないですよ。
誘惑なんてしてないですよ。スカートが短いからって誘惑してることになるんですか?

慰謝料?部長、それは私が払うんですか?怪我させたから?
確かに私が突き飛ばしたのは認めます。でも、いきなり後ろから抱き着かれたらびっくりしますよね。傷害事件?弁護士が来るんですか?私に反省の色が見えないから?
反省の色も何も、何を反省したらいいかわからないです。じゃあ、私は我慢してずっと触られてればよかったってことですか?

部長、これセクハラですよね。セクハラの結果の事故ですよね。
え?いいセクハラと悪いセクハラって、セクハラは悪いに決まってるじゃないですか!
女の癖に口答えって、女は黙ってろってことですか。
‥‥‥セクハラで女に居場所を与えてやってるって、部長、それ本気で言ってるんですか?セクハラが?じゃあ部長は課長のセクハラだってことは認めるんですね。

(笑顔で)ありがとうございます、部長。
あ、全部録音させてもらいました。録音ですよ、録音。どこからって、部長がわざわざ会議室に女の為にご足労頂いたところからです。そうですね、最初からですね。
弁護士さん来られるんですよね。だったら最初から聞いてもらいましょう。
あ、嘘なんですね。呼んでないんですね。弁護士って言えば女はびびると思ったんですか。

私、呼んでいいですか?弁護士。なんとか言ったらどうですか?部長。
じゃあ、呼びますね。‥‥‥えっと、課長そのパフォーマンスやめてもらえません?
頭なんていくら下げられても困るんですけど。
奥さんがいるのは知ってますよ。夫婦仲は冷めきってるんじゃないんですか?
お子さんがいるのも知ってます。小学校五年生の反抗期真っ只中の娘さんなんですよね。
お母さんの介護が大変なんですか、それは知らなかったです。
でもそれ‥‥‥私に関係あります?

部長、何他人事みたいな顔してるんですか?
言いたい放題言ってましたよね。女の癖に、反省の色の見えない、私が、話させてもらいますけれど、セクハラは女に居場所を与える行為なんですね。知らなかったな、私。
‥‥‥山城課長のクビ?どうぞクビにしたらいいんじゃないですか?どうでもいいです。
正社員?この会社で?それ、本気でおっしゃってます?

‥‥‥課長、男の癖に何泣いてるんですか。女々しいなぁ。
私が課長をクビにしたわけじゃないんで、首にしたのは部長なんで。
もう、泣くのやめてくださいよ。私が泣かしたみたいじゃないですか。
だったら最初からそういうことしなきゃいいのに‥‥‥部長、ちょっと席を外してもらえません?課長と二人で話したいので。

(部長、出ていく)

‥‥‥録音、止めますね。
泣かないでくださいよ、ほら、涙拭いてください。
山城課長、私ね、来週、誕生日なんですよ。知らなかったでしょ?
‥‥‥奥さんと別れるんじゃなかったんですか?
都合のいい女なんていないんですよ、山城さん。


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