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「ごんぎつね」 3の場面の教材研究の一例

教育実習訪問指導の研究授業は、「ごんぎつね」であった。3の場面。

単元の目標は、学習指導要領からとった「場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むことが出来る」である、本時の目標は「三場面を読んで、ごんの行動や気持ちの変化を考えよう」であった。



授業後に本人に確認すると50点弱位の点数を付けていた。ま、本音では70点位付けたいんじゃないかなと思っているようであったが。しかし、私の採点は3〜40点であった。
うーむ。
いかん。
私の指導が届いていないなあと思う。


ま、でも、現場の先生にご指導を頂いて授業を作っているので、その流れで作っているのだろうけど、学生だから仕方が無いのかもしれないけれども、もう少し深みのある授業をして欲しかったなあ。



たとえば、「ごんの行動や気持ちの変化を考えよう」というのであれば、少なくとも、行動と気持ちの二つについて、それぞれ、変化の前と後は何かを本文中から捜すことをさせたい。そして、何がその変化を生み出したのかを確認させたい。

ところが、今日の授業では、変化したあとのごんの事実を指摘するだけで、そこを確認するだけで終わっていた。うーむ。


ごんは、いわしを盗んで兵十の家に届ける。ここの部分を読み取らせることが出来ていなかった。授業後の検討会で指導する。


『ごんは、形式段落11と12を見ると何をしている?』
「兵十のびくからうなぎを取り出しています」
『なんで?』
「いたずらで」
『で、どうなった?』
「うなぎはごんのくびにからまって、ごんは慌てながら逃げて帰っています」
『だよね。で、いわしは?』
「いわしやの籠から盗んでいます」
『なんで?』
「兵十にあげようとおもって」
『で、どうなった?』
「いわしやに兵十は懲らしめられています」
『だよね。同じことは何? 違うことはなに?』
「魚を盗んだことが同じです」
『はい』
「違うのは兵十にいたずらしてやろうと思っていたから、元気づけてやろうになったことです」
『そうだね、いたずらしてやろうってのは本文に書いてある。じゃあ、元気づけてやろうってのはどうしてわかるの? 通常は、行動の変化は心情の変化に繋がることが多いけど、ここのごんは行動の変化はあったけど、心情の変化はあったの?』
「えーっと」
『っていうのを授業でやって欲しいんだよね』


『それから、ごんはいわしだけ贈ったの?』
「山栗もです」
『それから』
「それから、松茸もです」
『贈り物が変化しているよね? 行動が変化しているよね?』
「はい」
『これはなに?』
「いわしは、いわしやに懲らしめられたので、山栗に変えました」
『ごんは、いわしを贈ると兵十が懲らしめられると思っていた?』
「いいえ」
『まずいと思って、いわしから山栗に変えたんだよね?』
「はい」
『じゃあ、なんでそのあと松たけなの?』
「……」


『ここは私の類推だけど、山栗より松茸の方が高価だからじゃないかなあ。一回贈ったのに、そのあと一回目よりも高価なものを贈るっていうときは、どういうとき?』
「うーん、もっと喜んで欲しいときでしょうか?」
『あるでしょうね、それ。または、一回目で思いが届いていないなと思ったときに、二回目高価にするんじゃないの?』
「あ、そうかもしれない」
『つまり、行動の変化は心情の変化だったと思うのですよ』


『で、ごんは、読み手から見るとどんどん「いい子」になっていくのが分かるよね?』
「はい」
『で、そのいい子になっていくごんのことを兵十は理解している?』
「していません」
『そうだよね。そして、それを兵十が理解するのは?』
「最後です。ごんが死ぬときです」
『そうだよね。だとすれば、子どもたちに、ごんがどんどん良い子になっていくことを読み取らせて、兵十はいっこうに気がつかないこと、つまりごんには心情の変化があるのに、兵十には無いことを読み取らせないと、この物語を読ませていないことになりませんか?』
「アーーーーーーー先生、もう一回授業がしたいです!」
『(^^)。』



目標が行動の変化と心情の変化を読み取るであれば、そこをきちんと押さえて欲しいなあと思ったのでした。


この後、情景はどうなっているのかなども確認したりして、指導を終えた。一緒に校長先生と教頭先生もいたので、やや驚いたけど、まあ、驚きながら首肯きながら聞いて下さったので、良かったことにしよう。

写真は、実習校に向かう時に見掛けたコスモス畑。

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