ダンスチャンプコウジ✨2

いよいよ舞踏部体験練習会当日。
太めの富田先輩の軽自動車に乗せてもらい、女子大に向かった。
コウジの胸は期待でこれ以上ふくらまないくらいにふくらんでいる。



女子大女子大、綺麗な女の子がたくさんたくさん。
頭の中はそれだけ。
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社交ダンス部のメンバーだって、綺麗な人たちに決まっている。
いちばんいいシャツに自分でアイロンを掛けて着てきたのだ。



女子大に到着。
小さな校門から入ると校舎が建て込んでいる。
自分たちの大学と比べるとぐっと小規模のキャンパスのようだった。
時間がもう5時を回っていたせいか、人影が少ない。



緑豊かな中庭にさんざめくかわいく綺麗な女子大生の群れ、はいないようだった。

なんだよ、たくさんの女子大生のお姉さんを期待してたのに。

しかし、数は少なくとも、女子大の女子大生だ、綺麗に決まっている。

野球部のマネージャーなんかとは、比べものにならないほどなんだろうなー。

ダンス部のメンバーへの期待が高まった。
高まるどころか、マックス状態だった。



富田先輩は物慣れた様子で、ある校舎にすたすた入っていく。
コウジはどきどきしながら後をついていった。
廊下のなかほど、ある教室から人の声が聞こえる。
コウジたちが近づくとちょうど中から扉が開いた。


「富田さん、早かったですね」


出てきた女子は、普通よりも地味な顔立ち。
水色のカーディガンがなんとも似合っていなかった。
コウジのボルテージが100から50に下がる。

ちょっと待ってよ。マジか？

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いや、部員は彼女だけではないのだから、と教室内に目を走らせた。



奥のほうに、メガネを掛けた男子学生が一人立っている。
彼のそばに女子部員が三人並んでいたが、目を引く子はいなかった。
おかしいな、なにかがまちがってるぞ。
コウジは腑に落ちないまま、椅子を並べるのを手伝っていた。
頼みにきた女子部員も高校の図書委員みたいな子だったのだ。


「おう、きてたか」


仲村トオル似の先輩は坂本さんという。
彼は部員候補生らしき男子を二人連れてきていた。
細くて背もコウジより小さい。
コウジは180センチあって、野球をやっていたから筋骨たくましい。
この筋肉がダンスのじゃまになると知るのはしばらくあとのことだ。


「いいだろ、女子大」


坂本さんはコウジの脇腹をつついた。


「よくないですよ、話が違うじゃないですか」
「なにが」
「綺麗な子が全然いないですよ」


坂本さんは真顔でこたえる。


「おれ、そんなこといったっけ」
「いいましたよ。女子大の部員は綺麗な子ばっかりだって」
「女子大には女子の部員がいる、とはいったけど」
「そんなこと当たり前でしょう。女子大には女子しかいないんだから」
「まあまあ。こっちもいま新入生を勧誘してるから、
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　綺麗な子に声を掛けるよういっとくな」


調子のいい先輩だ、とコウジは思った。
騙されたとしかいいようがない。
コウジのほかの1年生たちも、所在なげに座っている。


坂本は話を続けた。


「もしここで駄目だったとしても、他にも女子大はあるよ。
　うちは交流が盛んだから合同練習をよくするんだ。
　部長は学生ダンス連盟の中部連盟委員長をやってるから、
　合同練習を増やすようにするよ」



ほんとかなあ、と思いつつ、
なんとなく説き伏せられるコウジだった。



参加予定のメンバーは揃ったらしく、坂本先輩が黒板の前に立った。
教壇の手前は大きくスペースが空けてある。
ここでダンスを踊るんだな。
それくらいはコウジにもわかった。



「きょうは、練習の体験会ということで、簡単なステップをやりましょう。
　すぐ覚えられますよ。パーティダンスですから。
　踊れるようになったらモテます」



教壇に置かれたラジカセから音楽が流れだす。
坂本先輩と富田先輩、
もう一人まだ名前のわからない眼鏡をかけた先輩が
それぞれ女子部員と組んで、踊りはじめた。



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「これがジルバです。
　映画なんかで見たことがあるんじゃないかな。
　簡単でしょう」

そういえば、「サタデーナイトフィーバー」でこんな感じに踊ってたような？

コウジは恥ずかしかったが、
パーティでモテるという先輩の一言でやってみる気になった。
意外と難しくはなく、体を動かすのは楽しくもあった。
組んでくれた女子はやはりかわいくはなかったけれど、、、、

親切にステップを教えてくれたので、
一曲終わるころにはジルバがなんとか飲み込めた。



次にブルース、三つめはボックスルンバ。
これらも覚えやすく、
ぜんぶで1時間半くらいの間にみんな踊れるようになっていた。
この日の体験練習はこれで終わり。
先輩たちから「土曜日もくるよな」といわれて、コウジは断らなかった。



ダンスってけっこう簡単なものなんじゃないか、
新入部員にかわいい子がくるかも知れないし、
別の女子大って手もあるといってたしな、と思ったからだった。



（つづく）



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社交ダンス「ルンバ」の音楽のリンクをお楽しみください。


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