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「淀川水系から学ぶ生物多様性」を拝聴して

2022年3月19日に、枚方市市民会館会議室で、「自然環境を考える講演会」を拝聴してきた。そのことについて記す。

なぜ、これを聴きに行ったかというと、「淀川水系から学ぶ生物多様性」というテーマに興味をひかれたからだ。講師の先生は、国土交通省 淀川環境委員会委員で環境省 希少野生動植物種保存推進員の河合典彦氏。講演会の主催者は枚方市である。

淀川の環境については、以前から、庭窪ワンド(守口市)保全活動を通して、考える機会を頂いている。

庭窪ワンド保全活動紹介動画


以下、講演会で拝聴した知見を基に、私見、意見を加えて書く。

生物多様性

生物多様性条約の第10回締約国会議、COP10が名古屋で開かれた2010年は、国際生物多様性年と国連で定められた。条約の3つの目的は、①生物の多様性の保全②生物多様性の構成要素の持続可能な利用③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分など。
生態系の多様性を保全するためには、様々な環境が必要で、在来種、固有種を保全するためには外来種の対策が要る。大阪府には生物多様性ホットスポットが55か所あり、淀川ワンド群はAランク。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/21490/00148206/guide%20book%20compact(P18).pdf

過去から現在


淀川は、1874年(明治7年)河川工事が始まり、1974年(昭和49年)が淀川100年記念の年。渡し舟「平太の渡し」は300年以上続いていたが、昭和45年3月に廃止された。
琵琶湖は、世界に約20個しかない、「古代湖」。約440万年前から、三重県伊賀市付近にあり、形と場所を変えながら、現在の位置で40数万年前からある。琵琶湖淀川水系の水は、1700万人に給水されている。滋賀、京都、奈良、三重、大阪、兵庫の人も、この水を飲んでいるんですね。

イタセンパラ

淀川に安定した水量があり、ワンドには、ヨシ原、干潟ができるため、多様な環境が生まれる。琵琶湖、淀川のシンボルフィッシュと呼ばれるイタセンパラは、コイ科のタナゴ属の淡水魚。日本固有種で、絶滅危惧種のレッドリストに載っている。1974年、国の天然記念物に指定。淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク(イタセンネット)が設立され、保全活動が実施されている。イタセンパラが減っている原因はいくつかあるが、ヌートリア(外来種)が二枚貝を食べてしまうことも原因。(イタセンパラは、二枚貝に産卵して貝の中で仔魚が育つ!びっくり!)ヌートリアは、門真市でも、古川でたびたび目撃されていて、農作物の被害がある。
外来植物の繁殖も問題。川面を広く覆いつくしてしまうので生態系が保てなくなる。園芸用に入手した外来種を川に捨てては絶対いけないです。

課題認識と提言


国交省や環境省、また大阪府において、これらの研究、分析がなされており、市民団体などと協力しながらさまざまな保全活動も行っているわけだが、一般的には、あまり知られていないのではないだろうか。

私自身も、庭窪ワンドの清掃活動に参加するまでは、淀川水系の環境課題について全く知らなかった。しかし、一度現地に参加してみると、まあ見渡す限りの無数のゴミ。漂着ゴミ、ポイ捨てゴミ。拾えども拾えども、次に来た時にはまた増えている。この川の水を、みんな飲んでいるのに。

コロナ禍で多人数の活動は制限されているが、コロナ禍前には、定例で活動していただいている。守口、門真に本拠地のあるパナソニックさんの松愛会有志の皆さんも協力されている。

門真市民の方々の中にも、川をきれいにしたい、とおっしゃる人がたくさんおられる。その方々は、昔、子どもの頃、川で遊んだり、川の水を汲んで、暮らしに利用した思い出を語られる。そんなに遠い昔の話ではない。たかだか、70~80年ほど前のこと。川でザリガニを捕ったり、ウナギを釣ったり、川の水でお米を研いだり。今の古川を見ると、信じ難いが、ほんのついこの前まで、そのように川は人と伴にあったのだ。
さまざまな理由があって河川事業が行われ、変遷しているので、一言でくくれるわけではないが、河川の環境保全という大問題は、昔に比べ、多くの人にとって、現実味として感じにくい課題になっていることは否めないだろう。
川で遊ぶ、ということは、もちろんリスクを伴うので、いつでもどこでもOKというわけではない。しかし、全く川で遊んだことがなければ、子ども達は(おとな達も)水辺の生物にふれることもなく、生物多様性保全と言ってもピンとこないだろうし、ゴミも実際に見たことがなければ、川ゴミ問題についても、やはりピンとこないだろう。
幼少時の自然体験の教育的効果の一つとして、「自尊感情を高める」ということが確認されているそうだ。自然の中では、自分の五感をフルに活用するし、身の安全も守りながら行動しなければならない。これらはICTやVRなどでは得られない部分。自然体験学習の必要性を、再認識すべきだと思う。

今回の講演会は、たいへん興味深いテーマで、内容もとても充実していた。参加されている方は、男性の割合が高かった。門真市でこれまで行われた環境講座は、女性の聴講者が多いイメージなので、これには少し驚いた。
今後、門真市においても、環境学習の講座や、啓発について、さらに、充実させてほしいと思う。これは、議会においてたびたび提言してきている。
子ども達への環境学習については、環境水道部だけのことではなく、教育部においても、取り組んでいただかなければならない。そして、市民への啓発ということについては、生涯学習を所管する市民文化部も出番がある。
すなわち、全庁的に、環境政策、啓発、教育に、しっかり取り組んでほしい。これまでも提言してきたが、今回いただいた知見も加えて、さらに提言を続けていく。ハチドリの一滴であるとしても。











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