ゼロから始める自伐型林業の普及
当町では小規模林業の推進と称して、平成29年度より低投資で環境への負荷が小さい自伐型林業の普及を始めました。
町のウェブサイトはこちらから。
令和2年度から3年間、厚生労働省事業である「林業就業支援講習」の舞台として町有林を提供し、モデル林の造成を行う予定です。
また、林業推進員として地域おこし協力隊も2名採用し、自伐型林業の担い手育成を本格的に始めております。
取組を始めてから4年目。一見、順風満帆に見えますが、実際は何度も辞めたいと思う事ばかりでした。
長くなりますが、お時間ある方はご一読頂ければ嬉しいです。
そもそものきっかけは?
平成26年ごろから、当町ではカラマツ人工林の伐採が盛んに行われるようになる一方、ミズナラやイタヤカエデなど木炭の原料となる樹種が生育している広葉樹の天然林では伐採が行われなくなり、道内でも有数の木炭生産量を誇っていた当町も慢性的な原料不足に悩まされる事となりました。
当町では製炭業者へ町有林を立木販売(伐採は製炭業者の責任で行う販売)しておりましたが、製炭業者は伐採作業員を確保できず、伐採出来ない状況でした。
そこで、高知を中心に取組が進んでいた自伐型林業に注目し、当町でも普及すべく、自伐型林業推進協会と事業実施の相談などしておりました。
事業ができない!?
平成26年の夏には町の幹部にも説明し、予算計上と担い手となりうる地域おこし協力隊の採用に向けて、承認を得てました。
ですが、平成27年度の予算査定時、「そんな研修やっても人来るの?それよりも違う所に予算を充てないと」という一言で、あっさり事業凍結。役場として事業が出来なくなりました。
資金の調達に向けて
そこで、役場が事務局を務めている池田町林業グループにお願いして、お金が確保できればという条件付きで事業を行わせてもらう事になりました。
ただ、年間の予算規模が10万円程度だった団体が4回の研修費用(50万円以上)を確保する事は極めて困難だと感じておりました。
しかし、諦めるわけにもいかないので、各種団体の助成金や補助金、果てはクラウドファンディングにまで手を伸ばし、どうにか資金を調達する事ができました。
無事に4回の研修を終え、平成30年度は別の団体から助成金を受ける事となり、技術研修を2年間行う事が出来ました。
資金集めは本当に苦労しました。膨大な申請書類、不採択通知の数々…。もう2度とやりたくありません(笑)
誰が実践するのか??
1年目の研修を終えて迎えた平成30年度。研修については実施できる事になりましたが、
研修だけでは木炭の原料不足は解消されないので、誰かが実践しなければなりませんが、
研修会参加者で山林を所有する方は極めて少なく、すぐに実践に移せる方がいませんでした。そこで、継続して安定的に原料供給を行う仕組みを構築するため、試験的に役場職員が直営で森林管理を行いました。
取組内容はこちらからご覧になれます。
また、造林事業者の雇用が不安定になる冬季に雇用対策として、自伐型林業の考えに即した間伐を実施。材の運搬を町が担い、木炭3トン分程度の丸太を販売しました。
この頃から、「役場がそんなに頑張るなら…」という雰囲気が周りの方々から出てきた気がします。気のせいかもしれませんが(笑)
本格的な普及に向けて
職員が直営で実施するのは新進ともに限界だったので、研修会参加者の技術向上と原木販売量の確保を目的として、希望者に時給1,000円で町有林を間伐してもらうという取組を令和元年度から開始しました。この年からまとまった金額を町の予算として確保する事が出来る様になりました。
この取組には10名程度の参加希望者が集まり、月に2回程のペースで半年間実施しました。
年齢層が比較的高く、丸太の運搬に苦労した事や林道脇に保管していた丸太が何者かに無断で持ち去られる事案があり、様々な苦労がありましたが、参加者の方々の充実した表情を見ると救われる気分になりました。
また、製炭業者さんも自ら機械を購入して伐採作業を開始し、木炭の原料確保に向けて徐々に基盤が整ってきました。
遂に今年…
7月から地域おこし協力隊が仲間として入り、本格的な担い手育成に取り組み始めました。
また、木炭に向かない樹種についても販路が確保され始めるなど、良い流れが出来つつあります。
そして、遂に当町でも自伐型林業推進協会が擁する素晴らしい講師陣による林業就業支援講習が8月に実施されることとなり、
自伐型林業普及の取組は着実に前進しています。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
これはあくまでも北海道の片田舎での一事例に過ぎませんが、役場が予算を持たずにゼロから事業を始めると、長期間掛かりますし、ここには書き切れないほど辛い事や逃げ出したくなる事が数多くありました。
ただ、何かを始めようとしているけれども、周りにいるはずの味方をまだ見つけられていない誰かを少しでも勇気づける事が出来れば、ありがたい限りです。
金や人や物がなくても、物事を始めてから続けていけば、何とかなるはずですよ。