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あなたが今抱きしめたい人は誰ですか?

石井裕也監督の映画
『愛にイナズマ』を鑑賞

アフターコロナを舞台に、
社会の理不尽さ、人の醜さや温かさ、
家族や命といったテーマが
盛り込まれている

感情が刺激されて
凝縮された時間の中で
次々に湧き上がる
様々な感情を味わう

重くなりがちなテーマに
くすりと笑えるユーモアを散りばめていて
思わず、ふふふという笑い声が
口から漏れる

ラストは愛と希望を感じさせる
いい作品だった


そんな中で一番心に残ったのは
佐藤浩市演じる
病気で亡くなった父親の一言

「生きているうちに
子どもたちとハグしたかった。
ハグは自分にとって
存在確認のようなもの」

でも、実は生前に
思いがけず
子どもたちとハグしていたことが
分かる

酔いつぶれた父親を
子どもたちが介抱するという形で


そんなシーンを観ていたら
自分の家族のハグの記憶がふと蘇る

大きくなった子どもたちとは
なかなか肌を触れ合う機会がない

だからこそ、
子どもたちにリクエストされて行なう
アロママッサージは
私にとって
とても大切なスキンシップのひとときだ

でも、やっぱりハグがしたい!
という思いがあって
昨年の9月、
ちょうど誕生日が近かった私は
誕生日のプレゼントに
家族からハグをもらおうと
思い付いた

誕生日当日、
「ハグが欲しい」という私に
「えっ?そんなんでいいの?」
と不思議そうに笑う息子

真っ先に私に飛び付いてきたのは
道を歩いている時にも
腕を組んでくる
社会人の娘だった

何の躊躇もなくまっすぐに
ギュッと私を抱きしめてきた

温かなぬくもりと愛が伝わってくる

つづいて大学生の息子

見上げるほど大きくなった息子は
ちょっと遠慮がちに
優しく私を抱きしめる

最後は夫

毎朝、ハグをしてくれる夫からは
いつもの安心感をもらう

今、思い出しても、
家族からのハグは
今までで一番の
誕生日プレゼントだった


そして、
もう一つ思い出すのは
今年3月のこと

その月の始め、
私たち夫婦は
神奈川から長野に移住してきた

3月も半ばすぎたある日、
一人暮らしの娘が
高熱を発症

フラフラになりながら
何とか病院を受診して
インフルエンザとの診断を受けた

薬を服用しても
回復の兆しが現れず、
居ても立っても居られなくなった私は
看病をするために横浜に向かった

溜まった洗濯物を洗濯し、
せっせとコインランドリーに通っては乾かし、
溜まった食器を洗い、
スーパーに買い出しに行って
消化の良い料理を作る

娘のために家事ができる
喜びを味わう

峠を越えて
少し体が楽になったのを見届けて
私は長野に帰ることに

別れ際、玄関先で
娘をハグしたくなった私が
「ハグさせて」と言うと
「移っちゃうよ」と言いながらも
素直に私に体を預けてきた

娘をギュッと抱きしめたら
愛おしさが内側から
あふれてきて

私はスーツケースを片手に
ポロポロ泣きながら
駅に向かった

引っ越したばかりで
子どもたちと離れて暮らす
淋しさを感じていたけど、
離れたからこそ感じられた
娘への愛情

それをしみじみと味わいつつ、
私は幸せな気持ちで
帰路についた


映画を鑑賞した後、
夫のことを思う

毎日、ハグしてくれるけれど、
照れ屋で恥ずかしがり屋な私は
自分からハグしに行ったことがなかった

そんな話を
毎日夫婦でハグし合っているという
友人にしたら、
「そんなの慣れだから、
ああ寒い!とか言って自分から
ハグしに行ってみて」
と背中を押された

初めてのことは
躊躇が生まれる

意を決して
夫をハグしに行こうとしたら
なんと!
夫は後ずさりし始めた

私に怒られると思ったらしい笑

もー、と言いながら
大笑いしてハグし合う

私にとって夫とのハグは
甘えるという要素が強いから
甘え下手な私には
抵抗があることが分かった


先日、
「人とつながりたい」
と言う友人に
「どんなふうにつながりたいの?」
と聞いたら、友人は
「体温が感じられるつながりがいい」
と答えた

そんなふうに人と人とがつながれたら
愛であふれる世界が創られる

なんて素敵な世界なんだろう


あなたが今、
抱きしめたい人は誰ですか?

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